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霧雨堂の女中(ウェイトレス)

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両手で包んだ白いカップの中を見つめるようにして、身を切るような言葉を紡ぎながら、なのにどこか穏やかな視線のままその紳士はそう語った。
私は静かに頷いた。
私の言葉をそこに挟むことは出来なかった。
合いの手ですら、そこに添えることは出来なかった。
彼の言葉は深く重く、『完全な真実』をそこに纏っていることが分かったからだ。

年代を超えてヒトが意志を繋ぐ時、言葉はそれに堪えないことがある。
だってそのヒトが持つ言葉はその人の内側からあふれ出るモノだから、相手に『自分のスケール』が及ばないのなら重ねることに意味はないし、むしろ失礼ですらあるかも知れないためだ。

私は自分という存在と、その中の含まれる言葉がこの老紳士に及ばないと悟った。
だから言葉は紡がれるに任せた。
もしも言葉が途切れていたとしても、私は紡ぐことを催促しなかっただろう。
彼は芳醇なコスタリカの恵みをもう一度口に運び、一口を音もなく啜ると、昔を懐かしむような口調で続けた。