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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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紺碧を待つ 続・神末家綺談3

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「そっか、うん!よし」

満足そうに笑う伊吹を見て、瑞も覚悟を決めた。

「・・・伊吹、」
「うん?」
「おまえの質問に、答えられそうだ。今なら」

何をしているとき、楽しい?嬉しい?

「おまえがそうやって笑ってると、俺は楽しい。嬉しいと、思う」

不思議だなと、言葉を紡ぎながら瑞は思う。こんな素直に自分の思いを吐き出せたのは、初めてだ。皮肉もごまかしも必要ない。伊吹は、きっと真摯に受け止めてくれるだろうから。

「だから、伊吹に笑っていてほしい。いつか別れが来て・・・死別よりもつらく悲しい未来を迎えたそのときも・・・笑っていて」

酷なことを、伊吹に強いていると瑞は思う。わかっている。
悲しむ伊吹を見たくない。むせび泣く伊吹を見るのは怖い。
だけど、笑っていてくれるのなら。

こんなに幸福な今のあとに、間違いなくやってくる未来はもう、怖いものではなくなるから。

「・・・頼む、伊吹」

いつか、思い知る日は絶対に来る。伊吹に情を移したことを後悔する日は絶対に来る。
それでも、いい。そのときに伊吹の笑顔を見られたら、悔いなく別れを受け入れられる。そんな気がするから。

「・・・瑞、わかったよ」

別れと聞き、伊吹の表情は一瞬歪んだが、顔を上げた彼は、笑っていた。

「瑞がそれを望んでるなら、俺笑ってるよ。お別れがどんなものなのかなんて、いまはわかんないけどさ・・・大丈夫。約束する」

だから行こう、と伊吹が駆け出す。

「今日は思いっきり遊ぶんだ!」

その背中の眩しさに目をすがめ、瑞は初めて、伊吹のために祈る。
いつか来るその別れが、少しでも遠いものであるようにと。



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