紺碧を待つ 神末家綺談3
床下の目
広い座敷に、四人で布団を敷いて眠る。開け放たれた縁側からは、涼しい風が吹き込んでおり、冷房も扇風機も必要ないくらいだ。開放的な空間だが、内側と外側、新館と母屋、座敷と廊下など、すべての境界には結界を張ってある。その事実が、少しだけ伊吹を安心させていた。
伊吹はふと目を覚ます。ひんやりとした夜気が身体を包んでいた。
右隣では、穂積が静かに眠っていた。左隣に紫暮。
「・・・瑞?」
夏布団を這いで縁側に向かう。瑞は縁側に座って外の雑木林のほうを見ていた。
「どうした」
「瑞は何してるの?寝ないの?」
瑞が眠っているところを、伊吹は見たことがない。だらしなく寝そべっていることはあっても、目を閉じて無防備に眠っている姿は見せない。睡眠は必要ないのかもしれないと、伊吹は思う。食べたり、飲んだり、本を読んだり、お風呂に入ったり。彼は人間のように振舞うけれど、それは必ずしも生存していくために必要なことではないのかもしれなかった。
作品名:紺碧を待つ 神末家綺談3 作家名:ひなた眞白