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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  8話  『春斗覚醒』

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もはやもう止めることはできない。なぜなら、私は弱いからだ。強くなんかないのだから。
私は誰かに支えられなければ何一つ出来ない。
だから、私はヒナちゃんを守れなかったんだ。だから…だから…。

「うっうっ…ぐす…うぅ…えぐっ…ぅぅうう…」

「ケッケケケ。やっとくたばりおったか。これで、鍵も今このとき消え去った。これで我らを主とする新たなる世界への幕が開けたのだ。ケッケケケ」

魔獣者は鍵であるヒナちゃんを倒したことで、そして、それによって自分たちの新しい世界を創造できることで大きく高笑いしていた。

「さて、次は貴様だ。フォーリアのウィザード…そして、フィーアの娘よ。脅威である鍵はもう消えた。これでもう恐れるものは何もない。ケッケケケ」

カッと魔獣者の手が輝きだし、それは魔力となって解き放たれる。

「きゃあっ!!」

私は防ぐことも出来ず、吹き飛ばされてしまう。

「うぅ…ぐすっ…えぅ…ヒナちゃん…うぅ」

私は動けない。悲しみを抑えきれずもはや戦う気力も失せてしまい、立ち上がることも魔法を使うこともできずにいた。

「どうしたのだ??フィーアの娘よ。これで終わりか??ケッケケケ」

ニタニタとした醜悪な笑みで私を見下ろす。

「ケッケケケ。ふざけおって。フィーアの娘がこのような無様な欠陥品の下等魔法使いであったとはな」

「…ぅう」

その表情に私は目をそらしてしまう。怖いからじゃない。それどころか魔獣者のその顔を見ていると沸々と怒りが込み上げてくるくらいだ。

だって、こいつがヒナちゃんを…。

自然と視線がヒナちゃんの方へ向く。しかし、そこには魔獣者の攻撃を受け、倒れて惨い死を遂げ、動かないヒナちゃんがいるだけだった。

「あぁああああああああああああああぁぁぁあああああああああッ!!」

フラフラしながらも歯をぐっと食いしばって、力を振り絞って私は立ち上がる。
もうどうすることも、どうしたらいいかも私にはわからない。
だけど、許せなかった。だから、私は-

涙を拭うことなく、激しい怒りに身を任せ、無我夢中に、魔獣者目掛けて向かっていく。

「ケッケケケ。そうでなくては面白くない。我を楽しませておくれよ??」

再び構えると、その手から凝縮された光の弾が私に向かって放たれる。
私は手に魔力を籠め、魔力を纏った手でバッとそれを弾き飛ばす。
すぐさま反撃に出る。
私の攻撃術式≪光≫を形成、そして呪文を詠唱し、魔獣者へ向かって解き放つ。

鋭い刃物のような光の結晶が無数、かまいたちのように切り裂かんと魔獣者を襲う。

「ぬぅ…ッ!!!や、やるではないか」

切り刻まれてダメージを与えられたが、致命傷には至らなかった。
なぜなら、あいつはあの一瞬で、魔力を身体全体に覆い、攻撃を防いだのだ。
おかしい。こんなのおかしい。私が戦ってきたあいつらとは格が違いすぎる。
魔獣者がこんなに強いはずがない。魔術をこれほど使いこなせるわけがないんだ。
何が起こっているというのだろう。あの組織は何をしようとしているのだろうか。

「ケッケケケ。どうした??もう、終わりなのか??では次は我の番であるな。これはどうだッ!!」

妖しげな笑みを浮かべると、魔獣者は、さっきと同じように手から光の弾を放つ。
しかし、今度のは1つじゃない。無数の光の弾が弾けレーザーのように照射され、私目掛けてまるでもうスピードで向かってくる。

く…っ!!さすがにこれだけの数は相手出来ませんね。ならば…!!
もの凄い速さであらゆる方向から飛んでくる光の弾を私は紙一重でかわす。

次は右。そして、左。その次は、上に。

かわしきれず、所々かすり傷を負ってしまったが、私は、どうにか魔獣者の攻撃を全てかわすことができた。

「…今だっ!!」

魔獣者は次の攻撃をするにはもう一度、魔力を溜めなければならない。
この一瞬の隙が攻撃のチャンス。これを逃したら次は耐え切れる自信はない。
だから…!!

「これで終わりですっ!!くらいなさいっ!!」

光の攻撃術式を形成、イメージを具現化、魔力圧縮。
魔獣者を浄化の光で貫く力。それは矢のように刃先が鋭く、固い決意のように決して捻じ曲がることのなく真っ直ぐ立ち向かう聖なる力。私はあいつを倒したい。

ヒナちゃんを殺した魔獣者を許せない。だから私があいつを雑音に、無に帰してやるんだ。

「貫けぇええええええええええええぇえええええっ!!!」

聖なる光の矢が魔獣者に向かって一直線に飛んでいく。
この距離なら避けようがないし、この加速なら防ぎようもない。
これなら-

「ケッケケケ。無駄だ」

ニヤリと怪しく表情を歪ませると、私の放った矢を怯むことなく、その鋭い爪が一閃薙いだ。その瞬間、矢は消滅、かき消してしまうのだった。

「そ…そんな…っ!?…私の力では歯が立たないっていうの??」

私の魔法はこの魔獣者に通用しないというのか。それでは打つ手が…。
さらに、次の攻撃を考える隙を与えんとばかりに、反撃してくる。
ハッと我に返ったときには、すぐ近くまで魔獣者の放った光弾が迫ってきていた。

「く…っ!!!」

着弾する前に何とかそれを弾き飛ばした。だが、その反動で体勢を崩してしまう。
それを狙っていたかのように、無防備の私に向かって何発もの光弾を魔力の消費も惜しまずに放ってくる。私の肩にその光弾がかすめた。
瞬間、ひどい火傷のような熱を帯びた痛みが走る。
光弾の魔力はそう高くはない。

が、全弾まともに受ければ致命傷は覚悟しなければならない。
再び無数の光弾が放出された。
このままいけば確実に被弾してしまう。この体勢では…避けられない。
でも、避けられないのであれば-

「防ぐまでですっ!!」

魔力を瞬間的に高め、マジカルリングを通して、両手へと供給し、目標に向かってかざす。
素早く呪文を詠唱すると、そこに光の壁が現れる。これならば…。
だが、魔獣者はニィと不敵に微笑んだ。なぜ??

その瞬間、光弾の軌道が変わった。
それも、私を避けるようにして後方へと…。まさか!!!

バッと振り返ると、やはりそこにはヒナちゃんが横たわっていた。

「ダメぇぇええええええええっ!!!!!!!」

障壁を解いて、ヒナちゃんのもとへ駆け出す。
ヒナちゃんに迫り来る無数の光弾。辺りに光弾が着弾し、爆発を起こす。
その中で私は、必死にその儚い大切な光を掴もうとする。
だって、そうしなければ本当に今にも消えてしまいそうだから。

だから、私は駆ける。例え、戻らない光でも二度と灯ることのない光でも…私の大切な光は絶対消させないっ!!!!

そして、私はヒナちゃんのそばまで来ると、がっしりと離れないよう身体に覆いかぶさる。

「ケッケケケ!!!馬鹿めッ!!!!」

遠くで魔獣者の笑い声が微かに聞こえると、一斉に私の身体に光弾が打ち付けた。
何発受けたのかわからないくらいに無数の光弾がヒナちゃん目掛けて降り注ぐ。
だが、私はそうはさせんと必死でヒナちゃんを守る。
ヒナちゃんに1発も当ててなるものか。

しばらくして、ようやく攻撃が止んだ。

ゆっくりと目を見開くとそこにはヒナちゃんがいた。守れた…守れたんだ。