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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  8話  『春斗覚醒』

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いや、言い方が悪かったか。
ええい、この際、土下座でも何でもして助けを乞ったっていい。
お願いします。助けてください。…これでどうだ??

俺は試しにそれを実行してみる。
もしかして、これが夢から覚める呪文ではないかと勝手ながらにも心のどっかで願っていた俺だったがそれは脆くも叶わなかった。…あぁ、ダメだ。まったくもって状況は変わらんようだ。

「貴様があの部屋に入ってきたとき我の仲間が最初の幻術に失敗したようでな。なんせ貴様は仮にも鍵だからな。秘めた力はそれは強力だったわけだ。それで、しょうがなく我の出番が回ってきたというわけだ」

「お前の…仲間って…。…まさかッ!!」

さっきいなくなった速水さんは…もしかして…こいつの…ッ!

「ケッケケケ。そうだ、今、貴様の想像している通りだ。もう一人の我の仲間はおそらくフォーリアのウィザードと接触しているころだろう」

フォーリアのって…もしかして、ミナのことか。

「あやつが失敗したものだから、罰として我が全力で足止めするよう命令してある。だから、助けは期待しないほうがいい。ケッケケケ」

マジかよ…。それは何かの冗談だろ?…嘘だろ?
助け来ない=ヤヴァイ→俺、絶体絶命のピンチ!!
冗談じゃない。こんなワケがわからんままで、こんな謎のバケモノにやられてたまるか。
この前みたくあの力で、こんなふざけたバケモノなんかぶっ飛ばしてやるぜ。

俺は手に意識を集中させてみる。しかし、この前のように力は出せず、それどころか光ってもいなかった。…やっぱ、ダメか。

「無駄だ。今の貴様にはその力を引き出すことも、それどころかその力を使うこともできん。諦めるんだな」

「確かにそうだな。今の俺にはどうやらあの力は引き出せないようだ。あの力に頼るのは諦めるしかないな」

俺は不敵ににやりと微笑んで、やれやれと肩をすくめる。

「そうだ、人生諦めも肝心だ。いい心がけだ。それだけは褒めてやろう」

「あぁ?何を言ってやがるんだお前は。誰が大人しく諦めるって言った?ちゃんと聞いていたか?俺は、あの力に頼るの『は』諦めるって言ったんだ。別にはいそうですかと諦めたわけじゃねぇんだよ」

俺はバケモノに向かって挑発的な視線で見つめてやった。

「な、何だと?!秘めた力が使えない今の貴様に何ができるというのだ?強がりも大概にするんだな」

「強がりでも何でも可能性がある限り俺は諦めないのがモットーなんでね。こんなとこでお前みたいな謎のバケモノなんかに消されてたまるか」

再びバケモノに不敵ににやりと微笑んでやる。
…っと強がってみたが、結局のところこれは何の解決にもなっていない。
さて、どうしたものか?

「まぁいいだろう。どうせ、貴様はここで消える運命にあるのだからな。…ケッケケケ。…では、早速消えてもらう!ケッケケケッ!」

「ってうわぁッ!!」

俺は打開の策を考える暇もなく、バケモノが俺に向かって攻撃をしかけてくる。
バケモノの鋭い爪が一閃、俺の目の前を薙いだ。

俺は咄嗟に後ろに跳びすさり、その一撃をかわすことに成功する。
危ねぇ…。ホントにヤヴァかった。これをかわせなかったら俺はこのバケモノに真っ二つにされていただろう。これをかわせなかったらって思うと…考えただけで恐ろしい。

「ほぅ、よくかわせたな。だが、次ははずさないぞ。ケッケケケ」

バケモノは手に意識を集中させると、その手が光り始めた。…ってまさか!魔法?!

「何を驚いた顔をしているのだ?言わなかったか?フォーリアとシェルリアに属さないでも我らとてこれぐらいの魔法は容易いわ」

「お前は何者なんだ?なぜ、俺を狙う?」

「それを知る必要もないだろう。貴様は今から消えるのだからな。ケッケケケ」

魔力が籠められた手を俺に向かってかざす。
待て待て!そんなもんぶっ放したら俺でもかわしきれんじゃないか。って向こうは俺を消そうとしてるわけだからそれは当然か。

ってそうじゃなくて…あぁ!もうわけがわからん!

「ケッケケケ。これで終わりだ。消えろ!!」

その瞬間、バケモノの手から凝縮された光が放たれる。
くそッ!このまま何も出来ず俺は死んじまうのか。こんな何がなんだかワケもわからんまま。しかも、こんな謎のバケモノなんかに。

こんなんが俺の運命だっていうのか?…んな馬鹿な話あるか。俺の運命がこんなふざけたことで終わってたまるかよ。その間に、バケモノから放たれた光が俺に向かって一直線にすぐそこまで迫ってきていた。

「くっそぉぉおおおおおッ!!」

俺は、どうすることもできなく、ただ身構えたまま目を閉じる。
-すると、その時

「早くあの光に向けて手をかざしてください!!」

な…何だ?誰だ?俺に語りかけているのは?
突然、俺の心の中か頭の中かわからないが、俺に語りかけてきた。例えるなら…
そう、テレパシーみたいな感じだ。
でも、この声…どこかで…。前にも、同じようなことがあったような気が…。

「早くしてください!!早く手をかざすんですのッ!!」

俺が考えに耽っていると再び俺にその謎な声が語りかけてくる。…何なんだ一体。
だが、考えてる暇はなさそうだな。どうせ、もう打つ手もないんだ。

「何だが知らんが、やってやらぁぁあああッ!!」

俺は素早くバッとバケモノが放った光に向かって手をかざす。

「ヒナちゃんッ!!」

アミーナが駆けつけた瞬間バケモノの放った光が爆破した。
それは今目の前で、春斗がいたと思われる場所で。煙に包まれ、地は爆破のためか大きく裂けていた。

「ケッケケケ。終わりだ。ケッケケケ」

バケモノは大きく口をあけて高笑いしていた。




数分前の事…。

「くぅ…急がないと!」

魔獣者を倒した私は、危機が迫ってるヒナちゃんのいる学園に急いで向かっていた。
迂闊でした。私は、邪悪な魔力を感知し、それだけに集中し頭が一杯なっていて、まんまと魔獣者の策略にはまってしまった。

二つの魔力を持ち、フォーリアとシェルリアの重要な鍵であるヒナちゃんのことを忘れて…。私は、馬鹿だ。何でこんなワナにまんまと引っ掛かってしまったんだ。
冷静によく考えればわかることじゃないか。ヒナちゃんには大きな力が秘められている。
それを狙う者はフォーリアやシェルリア、そして、さっきの魔獣者だって例外じゃない。
現に昨日ヒーちゃんがヒナちゃんに協力をするよう要請しに接触したじゃないか。

昨日それで、私は、ヒナちゃんに危険が及ばないようもう少し警戒しようと決意したじゃないか。その矢先、今はこんなザマだ。我ながら本当に情けないですね。力が思うように使えないのに、それなのにヒナちゃんは、自分のことよりも私の心配をしてくれた。…それなのに、…私は。

「うぅ…うっ」

私は、こんな自分に情けなくて悔しくて、気がつくと涙を流していた。

「くっ…!!」

でも、私は泣かない。なぜなら、泣いてもどうにもならないからだ。だから、私は、その涙をバッと手で拭う。今は、泣かないんだ。今は、とにかくヒナちゃんを助けることだけ、学園に一刻も早く戻ることだけを考えよう。