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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  7話  『魔獣者』

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俺はやれやれと肩をすくませると、ゆっくりとベッドに腰をかける。

-とちょうどそのときだった

「失礼します~」

控えめトーンでやってきたのは我らの『癒しマスコット』まどかちゃんであった。
…何だか顔色が悪いみたいだな。

「よぉ~まどかちゃん」

「え?あ、雛月先輩?!こ、こんにちはですっ!」

俺が急に声をかけたせいか、まどかちゃんは、おどおどしながら挨拶をし、ペコリとお辞儀をする。

「あ、あの、すいませんです。私、先輩がいるなんて思ってなくて、そのびっくりしてしまいまして」

「別に謝らなくていいって。俺もいきなり声かけたから驚かせちまったと思うし。気にすんなって」

「は、はいです。あ、あの、ありがとうです、先輩」

まどかちゃんはホッとしたのか表情を弛ませて胸を撫で下ろしていた。
…ホント見ていて微笑ましいいい娘だな、まどかちゃんは。

「でも、先輩どうしたんですか?あ、もしかして先輩も体調が悪いんですか?」

「まぁな。先輩もってことはやっぱりまどかちゃんも体調悪いのか。道理で顔色が悪いなと思ったぜ」

「あはは…。はいです、朝からちょっと体調が悪くて、でも、何とか大丈夫だったのですが、さっき授業中に悪化してしまったみたいで…」

まどかちゃんは弱々しくそう答え、苦笑いしていた。
ホントまどかちゃんって体弱いんだな。

「お~まどかじゃねぇか~どうしたぁ?また、具合悪くなったのか?」

速水さんは飲んでいたコーヒーを机に置くと、くるっとこっちを振り向いた。

「あ、先生。はい、ちょっと朝から体調が悪くて、それでまたひどくなってしまったみたいで。すいませんが、休ませていただいてもいいですか?」

「…ん??」

何だろう。今何か頭の中で何かが…。まぁ、気のせいか。疲れてるのかもな、俺。
俺は大きく伸びをし、軽く頭を擦る。

「おぉ~好きなだけ休んでいけ~。っとちょっと待ってろ、今、栄養剤を持ってきてやるよ」

「は、はい。ありがとうございます」

そう言うと速水さんはゆっくりと椅子から立ち上がり、奥の部屋に入っていった。
って俺のときとえらい対応が違いますね。まぁ、まどかちゃんは誰が見ても何だか守ってあげたくなるからな。当然の結果だな、うんうん。

「まどかちゃん、速水さん来るまで休んでなよ。立ってるのも辛そうだし、そんなところで立ちっぱなしじゃまた悪化するぞ」

「そうですね。では、そうさせてもらいますです」

まどかちゃんはそう言うと、よたよたとした足取りでベッドのところまで歩いていく。
まどかちゃんホントに辛そうだな。あんな足取りじゃ今にも転びそうだ。
-と俺がそう思っていたとき

「はわぁう!!」

まどかちゃんは、ベッドの手前でコテンと転んでしまった。…って心配した矢先に。
まどかちゃんって本当にドジだな~。ってそんなことはどうでもいいか。

「大丈夫か、まどかちゃん?」

「きゅう~痛いですぅ~」

まどかちゃんは、膝をすりすりしながら目に薄っすらと涙を浮かべていた。

「あはは。まどかちゃんってドジだな。ほら、つかまんな」

俺は、まどかちゃんに手を差し伸べる。

「…あ、ありがとうですぅ」

恥ずかしいのか最初はもじもじとしていたが、頬を赤らめながらも俺の手をつかんでゆっくりと立ち上がる。

「ほら、速水さんが戻ってくるまで横になってゆっくりしてな。これ以上体調悪くなったら大変だからな。速水さんが戻ってきたら俺が教えてやるから」

「わかりましたです。それじゃ、先輩お願いしますです」

「おう、任せろ。ゆっくり休みな」

そう言うとまどかちゃんは、ゆっくりとベッドに腰をかけ、そのまま横になるのだった。



その頃…。

「はぁ…はぁ…はぁ」

私は、学園から外に抜け出し、今、全速力で道路を走っていた。その理由は…。

「はぁ…さっきの反応は…はぁ…きっと…はぁ…そうに違いありません」

そう、学園にいるときわずかだけれども魔力の反応を感知したのだった。それも、これは私たちとは異なる魔力反応…。私は、これを見過ごすわけにはいかない!

そういてもたってもいられなくて学園を飛び出したのだった。
それに、この反応…私の予想が正しければきっとこの反応は…。

「はぁ…はぁ…とにかく…今は急がなくては…」

もし、この予想が本当なら大変なことになってしまいます。それだけは…ッ!!
私は、その反応がしたポイントまでさらにスピードを上げて急ぐのだった。



「はぁ…はぁ…はぁ…」

私は、急いだ甲斐があって、何とかまだ何も起きない内に駆けつけられたようだ。
-そのとき

突如、ここ一帯をすべて覆い尽くすかのように私を含め、結界に取り込まれてしまった。

「結界!?やっぱりこれは…」

私が周りをキョロキョロ見渡していると、そこに…。

「やはり来おったな。フォーリアの魔法使い…そして、フィーアの娘よ」

ギラギラと鋭い眼光を放ち、思わず身体がすくんでしまうくらいの大きな獣が私の前にどんと腕組みをしながら現れた。

「やはりこの魔力は魔獣者のものでしたか」

私は、怯むことなく素早く身構える。

「さすが、フィーアの娘なだけのことはあるな。この姿に少しも動じないとはな…。クッククク」

魔獣者は、何が面白いのか私を見るとクスクスと笑い出した。
でも、怖くないわけじゃない。本当はとても怖い。足がすくみ、身体はビクビクしてしまうだろう。今にも怖くて泣いてしまいそうだ。私もここから逃げ出してしまいたい。

だけど、ここで私が怯えてここから逃げ出してしまっては、この私の大切で大好きな街が大変なことになってしまう。それは絶対いやだ。だから、私はいくら怖くても泣きそうになろうとも、逃げるわけにはいかない。私が守るんだ、この街を。だから、私は逃げない!私は…戦うッ!!

「魔獣者ッ!!一体、ここに現れた目的は何ですか!!答えなさいッ!!」

「目的だと?クッククク…。そんなものは決まっておろう。両国の架け橋になりうる鍵を消しに来たのだ」

ヒ…ヒナちゃんをッ!?何で魔獣者がッ??

「どうしてあなたたち魔獣者がそんなことをするんですかッ!?どちらの国にも属さない、干渉しないあなたたちがッ!!」

フォーリアとシェルリアの重要な鍵となるヒナちゃんを狙って、魔獣者たちに何の得があるというのだろうか。

「クッククク…。だから、ではないか」

突然、魔獣者はニヤリとした眼光で、笑い出した。…だから?どういうことなの??

「どちらにも属さない我らだからこそ、それをする意義があるのではないか。クッククク…」

あ…ッ!…確かにそうだ。
魔獣者はフォーリア、シェルリアには属さない。だから、このようなことを仕出かしてもおかしくない。…でも!!

「でも、そんなことをしてあなたたちはどうするつもりですかッ!?そんなことをして何の得があるというのですか?!」