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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  6話   『フォーリア国とシェルリア国との紛争』

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思い出そうとすると靄がかかっちまったように真っ白になるし、頭もズキズキ痛くなってきやがる。

いつしか俺は、そんなことを考えるのを止めてしまった。
だが、ようやくその答えがわかった……ような気がした。気がしたというのもまた曖昧だが、それでも、今まで平穏に過ごしてきた俺からして、こいつの言う非現実的なことは未だに信じ難いことだし、それでいてそれが真実であると確信させる何かがある思う俺もいる。

まぁ、結局のトコ今は五分五分って感じだ。だが、無駄じゃない。成果はあった。
少なくとも『わからない』から『わかったような気がする』まで進展したのだから…。
それが真実であれ、偽りであってもな。

「ん??急に黙りこんでどうかしたのか??」

「いや、何でもないさ」

俺は軽く笑みを浮かべながらそう言う。

「何だその笑みは??わけがわからんぞ」

むすっとしたヒカリは、じとっとした目で俺に言う。
ん…あれ??…でも、ちょっと待てよ。

俺は、ちょっと疑問に思ったので訊いてみることにした。

「なぁ、なら俺はどういうことだ?この際、俺にも一応、神の種…だっけ??フォーリアとシェルリアの力あるのは仮にわかったことにする。記憶もないことも取り敢えずは仕方ないことだってな」

「そういうことだ」

「まぁ、なるようになるさ」

まぁ、取り敢えずあいつみたいに『成長』は止まらずに済んだことに喜んでおこう。
俺は、チラリとヒカリの方を見る。…あれだけはごめんだからな。
すると、俺の視線の意図に気づいたのかヒカリはすぐにむっとした表情で俺を睨みつける。

「殺るぞ?…ここで」

「何で解った?!俺の考えてることが!!エスパーかお前はッ??」

俺の顔はさっと青ざめてわなわなと震えだす。

「フン。貴様の顔を見ればどんなことを考えてるかすぐに解るわッ!!愚か者ッ!!次にまたそのような無礼なことを考えたら命はないと思えッ!!わかったかぁッ!!」

「…わかった。ちゃんと肝に銘じておくぜ」

…殺されるのはごめんだからな。

「フン!…しかし、まぁいいか。そんなわけで貴様は、私たちにとってもフォーリアのやつらにとっても喉から手が出るくらいに欲する重要な鍵であり、必要な人材なのだ」

「待て待て。急に話しを再開するな。俺にはお前が何を言っているのか、さっぱり解らない」

「フ…。貧相な脳だな。では、解りやすく説明してやろう」

ヒカリは、にやりと不敵に微笑んで、俺を小馬鹿にするような目で見つめる。
反論する気力ないって言ったが……くそッ!殴りてぇ!このガキッ!

「今、私は貴様は、重要な鍵と言ったな。これは、貴様…つまり、フォーリアとシェルリアの力を持つ者は選ばれた人間だけが手に入れることができる力なのだ。…いや、恰好よく言うと『選ばれし魔術師』とでも言うのかな」

全然、恰好よくねぇよ。…むしろ、怪しいぞ。

「これは昔、フォーリアとシェルリアとが争って敵対していたとさっき話したが、実はそもそもに互いのお偉いジジババ共に非を認めさせた決定的な人物が存在するのだ。それが…」

「フォーリアとシェルリアの二つの力を持つ者…か」

「そうだ。フォーリアの反乱とシェルリアの反乱を強大な力で鎮め、互いの長に話し合いの場を与え、そして、この争いを終結へと導いた。天使の宝具を持つ最強の魔法使い。私たちはこの者のことを『鍵』と呼んでいる。この『鍵』に対して私たちシェルリアの魔法使いにも特殊な力を持つ者がいる。これを持つ魔法使いは、能力が様々だ。破壊的な力だけを持つ者もいれば、治癒能力を持つ者、武器を変化させる能力を持つ者など。簡単に言うと、この力を持つ個人に秘められた能力を最大限引き出す力でもあるのだ。それを私たちは『剣』と呼んでいる。お前のような『鍵』の存在とは違って、『剣』の力を持つ魔法使いは、数多くいる。本当はシェルリアの人間の誰もが秘めている力であるから、全ての人間が『剣』だと言っても過言ではないのだが、この力は滅多に引き出されるものではない。さっきも言ったが、各々の能力は異なるものだ。故に『剣』という力を引き出すための定められた条件もまた異なってくるのだ。その引き金は様々ある」

ここでヒカリは一息いれ、ニヤリと微笑む。

「例えば、そうだな……憎悪や怒りがわかりやすいか??例えば、大事な人を何者かに殺められたとしよう。そいつは大事な人を奪ったヤツのことを殺したいほど憎むだろう。愛すべき者を奪われた怒りに奮えるだろう。もう貴様にもわかったと思うがこれが条件。これを満たすことで『剣』の力は引き出される。今回はひどい例を挙げたが、これだって十分にありゆることだ。まぁそれだけが条件ではないのだがな…。まぁ、これが『剣』の力だ。『鍵』という力が光だとすれば、『剣』という力は闇というわけだ。『鍵』という力が真に目覚めるとそれは、どんな強力な『剣』の力を持つ能力者でも軽く超えるとも言われている。それが貴様だ。まぁ…今の貴様はその力には目覚めてはいないし、昨日の力も瞬間的なものであろう。だが、それでも貴様には『鍵』の力がその身に秘められているのだ。ちなみに私にはすでに『剣』の力がこの身体に秘められているから今の貴様など一瞬で塵と化してしまうことも容易いことだがな♪♪アーッハハハ!!!」

どこまでも小生意気な高笑いをするヒカリ。
さぁて、そろそろ賢者タイムが恋しくなる今日この頃。
わけもわからず現実逃避に突っ走りたくなる衝動に駆られてしまいそうだ。
何かまたワケのワカラン単語が俺の耳から入り込んで、脳裏に飛び交っている。

俺は『鍵』で、ヒカリは『剣』???
ホワッツ?!何だそりゃ。何を言おうとしてんのかサッパリわからん。
というか、もう何が何だか理解に苦しむ。

俺の思考回路がぶっちぎりで崩壊開始。その回路も情報でパンパンで脳までたどり着けずめっさ渋滞だ。コレは何か??ドッキリか!?どっかにカメラでも仕込んでんじゃないだろうか??って、そんなもん探すのも億劫だ。そう、既に俺はその気力すらなくなっちまうくらい
心身ともに疲れ果てちまった。

きっとそのせいだろう。そうに違いない。俺がこんなことを口走っちまうなんてな。

「だから…俺は、重要な鍵…というわけか」

…アホか。
俺はこめかみを押さえて、腹の底から盛大にため息をする。ついでに肩もすくめる。
いきなりんなこと言われて、全てを『はい、そうですか』と答えられる程、俺の心はオーラルでもグローバルでもない。

「その通りだ。だが、貴様はまだ未完成だ。能力に気づいてそう時間も経ってないだろう。だから、力もろくに制御できんのだ」

「まぁ…確かにな」

実際に公園、思い切り吹き飛ばしちまったしな。
でも、おかしいぞ。確か数年前からまた敵対してるって言ってよな。
ミナみたいなフォーリアの魔法使いが争いを鎮めるために力を貸してほしいと言うなら納得するし、今みたいな腑に落ちないってことにはならないだろう。

だが、ヒカリのようなシェルリアの魔法使いはどうだ。
理由はどうあれ魔力干渉とやらでシェルリアの力を身につけさせる連中だぜ。