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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  5話  『少女との再会』

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「考えてもみろ。この作戦が成功すれば、お前どうなると思う??人によって個人差はあるもののステージ上でスポットライトに照らされ一際派手に決まり光り輝く漢を見た女子はどう感じると思う??ハーレムとまではいかんが、それでもせいぜい数人の女子の目にはお前の姿が映る」

メガネをくいっと上げて、さらに語る。

「断言しよう!!ステージ上のお前は新入生の女子にインパクトを与えることが出来ようッ!!!光る汗、迸る肉体、冴え渡る女子達の声ッ!!最高に決まってるとは思わんか??イケるとは思わんか??カッコイイとは思わんかッ!?」

ガッシリと暁の肩を掴み、曇りのない真摯な眼差しで顔を近づけていく。
そして、耳元で、

「勝ち組になりたくはないのか、暁よ??」

それ以上、言葉はいらなかった。
なぜなら、ヤツは立ち上がってしまったのだから。

「勝ちに行こうッ!!負けないためにッ!!!」

「激しく辛い長い戦いになるやもしれん。それでも行くか??」

「あぁッ!!行こう、凍弥ッ!!!今度こそ勝利を掴み取るんだッ!!真っ赤に燃えるシャイニングフィンガーで勝利をこの手にッ!!!」

手と手の熱い握手を2人は交わし、

「…帰って来れんかもしれん、だがその時は」

「わかっている。その時は」

意味深に2人はこくりと小さく頷く。
互いに心が共鳴したか、通じ合ってしまったか不敵に笑みを浮かべていた。
これだけ見ると、完全なる変態だな。

「よかろう。じゃ、シスター明日香よ。一言お願いする」

「え?ボク?えと、えーと……。うん。ボクたちで歓迎会はもちろんだけど、新入生の皆も盛り上げるボクたちも楽しんでやろう♪」

「さすが、会長or春斗の妹…素晴らしいぜ!!」

「えへへ♪別にそんなでもないよ~♪」

「謙遜するところも会長にとって重要なことだぜ。次期生徒会にまたとない逸材だ」

「だから勧誘するなって…」

俺は、呆れていつもより弱ツッコミで凍弥を小突く。

「ねぇ?凍弥って生徒会だといつもこんな感じなの?クラスにいるときと全然違うじゃん」

「まぁな。あいつは元々こういう場で本領が発揮されるからな」

「ん~いやな本領発揮だネ…」

かえでは、微妙な表情で苦笑いしていた。

「じゃ、作戦を開始するぜ!各人の奮闘を期待する!…作戦開始だ!」

その合図で俺たちは講堂のステージの裏に素早く移動し、所定の位置についた。
そして、見つからないように息を潜めて時を待つ。

「ありがとうございました。軽音部のみなさんでした」

どうやら部活動の紹介をしているようだ。
会場は…盛り上がっているとは言えないな。
何とか楽しめてるヤツと楽しめてなく暇そうにしてるヤツが半々といったところか。

そりゃそうだよな。強制参加のうえに一応学校の行事みたいなもんだからなこれ。更に、中等部でも似たようなもんだったし、固定化されるパーフォーマンスにこれは誰でも厭きるだろう。俺だって厭きて凍弥や暁ととんずらしたくらいだからな。

しょうがねぇ。ここは、新入生の気持ちがよくわかる俺たちでいっちょ盛り上げてやるぜッ!!…って今頃気になったが明日香はこれに参加させて本当にいいのか?高等部の入学の妨げとかにならなければいいが。

「では、続いての部活動は…」

司会が次の部活を読みあがると同時に凍弥が手で合図をする。
お、ゴーサイン。やっと出番か。んじゃ、いっちょ派手に盛り上げてやるか。
俺はステージのカーテンの所まで移動し、準備にかかる。

そして、その時はきた。
暗闇の中でそいつは語る。

「新入生の女子のみんな入学おめでとうッ!!ここに立てることを嬉しく思うッ!!テメェらの熱いビートが俺の熱いソウルを燃え滾らせてきやがったぜッ!!」

-ボンッ!!!パシャァアアアアアアッ!!!!

花火の演出と共にステージ全体が火薬の火花で包まれ、ドライアイスと火薬による煙幕が組み合わさりステージは火花と煙に覆われる。

その間に俺たちは次の準備をする。

「な…なんだ?」

会場全体もざわめく。
そこでバンっと暁に向けてスポットライトが照らされる。

「お前らが来るのを待っていたッ!!!聞こえるぞ、俺を呼ぶ声が…ッ!!ありがとう、聴いてくれ、曲は『ダイヤモンド・バージン』」

ステージにいる俺らにもライトが照らされ、状況が露になる。
ボーカル兼ギターは暁。

(何やら凍弥から渡された配線っぽいのが縫い付けられた謎のジャケット装備)
ギターは俺。(自前のギターを引っ提げて登場)
ベースは凍弥。(軽音部から拝借したベースをあたかも自分の物のように弾く)
ドラムはかえで。(ドラムマニアの賢者降臨☆)
ちなみに明日香は照明だ。

凍弥の人払いで照明を完全にジャックし、明日香だけは安全圏を確保。
俺らはいいとして、明日香が教師なんかに見つかったら事だからな。
激しい曲調で俺と暁がガンガンとギター捌きを見せ付ける。
ギターは我流で覚えたし、大体は読めるし弾ける。

暁のは完璧だけどな。モテたいがために練習を重ね、今じゃプロレベル。
なんていうか、まぁ暁はやれば出来る子なんだ。
ただほんのちょっとその才能の使い方がわからないだけなんだ。
凍弥も我流。ベースの他にギターも弾ける。
かえでのドラムはゲームで鍛えられ、アグレッシブなドラム捌きを可能にした。

「「うおおおおぉおおおおおおおッ!!!!!」」

俺たちの演奏で一気にヒートアップ。かなりの盛り上がりを見せる。
暁の歌声も中々のもんで、初見であればかなりイケてる男子にランクインするであろう。
暁の心の声が聞こえてくる。

『俺って、今の俺って最高にイケてね??』

まるでそう言ってるかのように、ニカっと微笑む。
だが、それは起こった。

何の前触れもなく起きてしまった。(暁を除いてな)
曲も終わりにさしかかった時、凍弥が『今だッ!!!』と合図。
実はあの後、凍弥は暁を除き、俺たちだけを再集合させ、あるモノを渡された。

そして、それを凍弥の合図したときに暁に向かって放つように言い渡されたのだった。
そのあるものとは、凍弥改造の『花火クラッカー』だ。

時は満ちた。
暁に照準を合わせ、一斉に紐を引いた。
途端にもの凄い勢いでパァッと火花が放出された。
暁に変化が起きた。というかジャケットにだけどな。
火花がジャケットに当たると配線みたいのに火がついたのだ。
それはバチバチと音を立てる。まさかアレは導火線だったのか。
ということはだ。当然この後の展開は……言わずもがな。

-ボンッ!!!!ヒュゥウウウウウウッ!!!

「あーべーしいいいいぃいいいいッ!?!?」

打ち上げ花火のような爆音が鳴り響いたかと思ったら、一瞬で暁の姿は消えていた。
煙のあとを辿ると真上に、体育館の天井がスッポリと穴があいていた。
あぁ、暁はやはり空に呼ばれているんだな…。

あいつはまた旅立ってしまった。俺たちにはない大きな翼で…。

「サンキューッ!!!!」

マイクスタンドをかっさらい、暁の代わりに凍弥が叫んだ。
会場も状況がわからないが、俺らの演出だと思い込んだのか大盛り上がりを見せる。