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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  5話  『少女との再会』

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謎の掛け声を繰り返すファン連中。
…って怖いからッ!

「ま、待てッ!!今は取り敢えず落ち着こう。…話し合えばわかるッ!!」

「問答無用ッ!!」

「ひぃッ!!」

バーサーカーと化したファン連中は俺に向かって迫ってきた。
くそッ!!こんな人数じゃいくら俺でも無理だぜッ!!
…くッ!!ここは逃げるしかないッ!!

そう思うと俺は、回れ右してそのままダッシュで廊下を走り出した。

「「まあああぁぁぁあああぁてぇええええぇぇえええぇいッッ!!」」

後ろを振り返ると何百人もの姉さんのファンが俺を捕獲せんと迫ってきていた。

「はぁ…はぁ。くそッ!だから嫌だったんだ~ッ!!こうなるから~ッ!!」

…ちなみにこれで7回目だ。
俺は、悲痛な叫びを上げながら廊下を走り、そして、北館3階の階段を駆け下りようとしていた。

ふと窓の向こうをちらりと見ると、姉さんがとても面白さそうにお腹を抱えて笑っているではないか。…って笑い事じゃないですよッ!!

と律儀にも心の中でツッコミを入れておく俺。
…全く、ひでぇ姉さんだ。助けてくれてもいいじゃないですか。
今回……、……生きて、……帰れるかな?……俺。

取り敢えず俺は、無事に生きて帰れることを祈りながら一気に階段を駆け下りた。
生徒会への暇潰しのはずが、とんだサバイバルになっちまったぜ。…やれやれ。
怒り狂うファンからしばらく逃げながら、安息の地を求めて駆けていくのだった。



「ふぅー、何とか逃げ切れたみたいだ。さて、屋上でも行って涼みに行くか」

天気もいいし、たまには屋上でゆっくり寛いでみるのもいいかもな。
どうせ他に暇潰し出来そうなトコに心当たりもないしな。…っていうかないだろ。
そうと決まると俺は、屋上まで足を運ぶのだった。

「う~ん」

俺はあまりの暖かさと気持ちよい風に思わず大きく伸びをする。

「もうすっかり春だよな」

屋上に着くと、春の陽気とうららかなそよ風が俺を出迎える。
そして、辺りを見渡してみると屋上には俺以外他には誰もいないようだった。

まぁこの時間は大抵は部活とかで忙しいヤツばかりだからな。
…暇してるのは俺ぐらいだろう。
俺は、ゆっくりと足を歩みだし、屋上のフェンスまで移動する。

そして、フェンスまで辿り着いた俺は、そのまま前屈みにフェンスに身体を預け、フェンス越しに屋上からの景色を眺める。グラウンドでは、運動部組が熱心に部活に励んでいた。…おお頑張るねぇ、俺には真似できんよ。せいぜい学園のために尽力を尽くしてくれ。

まぁそれはさておいてだ。

「それにしても、今年もいい具合に桜がきれいに咲いたな」

街全体を見渡してもぽつぽつと至るところに咲き誇り、この学園の周りにも春をより思わせるように立ちそびえていた。今にも桜の花びらがそよ風に乗ってひらひらと舞ってきそうなくらいだ。

「あぁ~こん中で花見とかやったら最高だろうな」

いい花見席、舞い散る桜の花びら、美味い弁当、気持ちよい春の陽気。
…う~ん、最高だッ!風流だッ!春の醍醐味だッ!
想像するだけで今にもその情景が浮かんでくるぜ。

…あぁ、ここが屋上かどうかも怪しくなってきたぜ。
俺は、だんだんここが屋上だということを忘れて、想像の中の花見してる風景と重ね合わせ錯覚に陥りそうであった。

「あぁ~花見はいい♪花見バンザーイッ!!」

「何をやっているんだ?春斗」

「んあ?」

突然背後から呼びかけられ、急に現実に戻らされる。

「何だ、凍弥か。お前も暇なヤツか?」

振り返ると凍弥が何やら難しい顔をして立っていた。

「あはは。まぁそういうことだな。そういうお前は何をしてるんだよ?」

「俺か?俺は………、うーん………、………ワイルドにここから黄昏てた?」

「さっきの表情がワイルドだったのかが怪しいけどな…まぁいいか。おい、春斗、ところでお前は暇かい?」

「まぁ、暇かって聞かれればどっちかっていうと暇だな」

「そうか!!それは好都合だぜ!」

凍弥はいかにも、お前のその答えを待っていた!と言わんばかりに微笑ましい顔になった。っていうか好都合って何のだ?…いやな予感がしてきた。
そして、その俺の予感が的中するのだった。

「今な、東館の2階の大講堂でな新入生歓迎会のセレモニーやっているの知ってるか?」

「あぁ、そういやそんなのがあるってHRで言ってたな。でも、それと俺の暇かどうかが関係あるんだ?」

すると、凍弥はにやりと不敵に微笑んだ。
…ヤヴァイ、この顔はヤヴァイこと考えてる顔だ。
そして、凍弥はいつもの如くこう言い放った。

「簡単だよ。俺たちの手でそのぬるい歓迎会セレモニーを大いに盛り上げてやるに決まっているじゃないか!」

はぁ?冗談だろ?
…は通じないッ!なぜなら、こいつは本気で言ってるのだからな。
こいつがやると言ったら絶対やるッ!そういうヤツだ。…だから回避出来んのだ。
こいつに会ったら最後、素直に諦めるしかない。…世の中諦めも肝心だ。

「それで俺たちでって、もしかして俺とお前だけか?それはちょっと人員が足りないんじゃないのか?ってか暁もいねぇし」

「心配しなさんな。その辺は俺とて抜かりない。既に、次の手は打ってあるさ」

「…さすが凍弥。そういうことに関してはスペシャリストだな」

生まれてくる時代と土地が違っていたら、ヤヴァイ組織とかの頭とかだったに違いない。
…リアル感ありすぎて、急に恐怖を覚えるぜ。
などと俺が思ってると凍弥は俺の心を見透かしたように不敵ににやりと微笑む。

「その時はお前は俺の右腕にしてやろうか。どうだ?いい提案だと思うが」

「パス。俺はそういうことには無縁で普通に過ごしたいもんでね」

ってか、何で俺が今考えたことが正確にトレースさせてるんだ!?
…こいつはぜってー敵には回したくはねぇな。回したが最後、死が待っている。

「そうか、それは残念だな」

そう言いながらもなぜか嬉しそうに見えるのは、俺の気のせいだろうか。
…まぁいい。

「んで、具体的にはどうなってるんだ?」

「そうだな。人員の方は会長が立候補してくれたので十分足りるはずだよ」

「は?姉さんが?また、何で…って聞くまでもなかったな」

「そういうことだ」

三度の飯より悪戯好きの姉さんが参加しないわけがない。
…いいんすか生徒会。

「それじゃ、具体的にどのように盛り上げるかだけどな…」

こうして、屋上で暇を潰すつもりが、ひょんなことから俺、凍弥、姉さんの生徒会メンバーによる新入生歓迎会セレモニーのゲリラ乱入を決行すことに…。

改めて俺は思った。俺はとことん巻き込まれることに縁があるようだ。
…いやな縁だな。

凍弥の一通りの説明が終わると、俺は凍弥と共に姉さんが待つ約束の場所まで移動するのだった。…セレモニーを盛り上げるために(悪戯するために)。



「…ここだ」

そして、俺たちは姉さんが待つ大講堂の控え室の前までやって来ていた。

「んじゃ、入ろうぜ」

と俺がドアノブを捻ろうとすると、凍弥が素早くその手を弾いた。

「って何だよ!」

「馬鹿モノ!いきなりドアを開けるヤツがあるかよ!もう少しで命を落とすとこだぞ!」