SAⅤIOR・AGENTⅡ
彼は周囲を見回してキュヴァスを探した。
「くっ、何処だ?」
私も辺りを見回すけどキュヴァスの姿はどこにもない。
するとその時、彼の頭上が輝いた。
「上よっ!」
「何っ?」
私が言うと彼も上を見る。
頭上に瞬間移動したキュヴァスは金色のエネルギーを溜めた左手の平を突き出すとバスケットボールサイズの無数の光弾が放たれた。
光弾はまるで隕石の様に降り注いで爆発し、彼は爆煙の中に包まれた。
煙が晴れるとそこには誰もいなかった。
空からキュヴァスが降りて来て彼のいた場所を見ると大きく口を開いて鋭い歯を見せて笑った。
『フン、吹き飛んだか。所詮この世界じゃオレに勝てる訳が無いんだ!』
「……あっ?」
私は左手を口に当てる。
バカ笑いしてるキュヴァスの背後に人影を見た。
彼はまるで獲物を狙う獣の様に姿勢を低くし、武器を持った右手を引くと目をカッと見開いて叫んだ。
「α・モードっ!」
『なっ?』
キュヴァスの顔から余裕が消えて振り向こうとするが時すでに遅し。
彼は叫ぶと同時に爪先に力を入れ、ダッシュと言うよりジャンプに近いだろう、一気に間合いを詰めるとセイヴァー・アームズでキュヴァスの背中を切り裂いた。
『ギャアァァアァァアア―――ッ!』
キュヴァスが断末魔をあげると右手に持っていた剣を落とした。
床にガランと言う音を立てながら転がった剣は黒い煙となって消滅し、キュヴァス本人も切られた個所から光が溢れ、体が粒子化して行った。
だがそれで終わった訳じゃない、負け惜しみと言うべきだろう、キュヴァスは歯を軋ませながら彼を睨みつけた。
そして粒子化して行く右手の人差指の先を彼に向けた。
『な、何て事をしてくれたんだ…… オレは男に悲惨な目に合って傷心だった女を慰めて助けてやってたんだぞ! その女だってつまらない現実にいるより夢の中の方が幸せに決まってる、それを邪魔しやがって……』
「ふざけんな!」
私は叫んだ。
黙らずにいられなかったからだ。
こいつが言う事なんて認めない…… いや、認めちゃいけないからだ。
私は涙を流しながら両肩を震わせてキュヴァスを睨みつけた。
「何が助けてやったよ、大事な人になりすましてその人の心をひっかきまわされて幸せな人なんて無いわよ!」
私は叫んだ。
こいつのやった事は慰めでも助けでも無い、人の弱みに付け込んでお金まで騙し取って人生をひっかきまわした最低な事だ。
それに本人に苦しみが無くとも苦しんでいる人達はいる、例え殺されなくとも残されてる親・兄弟・友達がいたら苦しんで無い訳が無い。
しかもこいつは自分のやる事を認めず開き直り、私はこいつだけは許せない、許しちゃいけないんだ!
言いたい事を私が言ったのでもう言葉はいらないだろう、彼は左手のセイヴァー・アームズを持つ手に力が入った。
上半身を捻るとキュヴァスの右肩から左わき腹までを一気に切り裂いた。
『ウギャァァアアア―――ッ!』
キュヴァスは光の粒子となって消滅した。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki