SAⅤIOR・AGENTⅡ
『なっ?』
「……えっ?」
私はゆっくり目を開けるとその場の光景に驚いた。
いつの間にか私とキュヴァスの間に1人の男が現れて両手に持った武器でキュヴァスの剣を防いでいた。
男は上半身はネズミ色のパーカーのフードで頭を隠し、下半身は黒いジーンズと黒い皮のブーツ、そしてその両手に握られているのは……
「セ、セイヴァー・アームズ? セイヴァ―・エージェント?」
私は叫んだ。
逆手に持った二丁の剣型のセイヴァー・アームズでキュヴァスの剣を防ぎながら彼は首を曲げるとこちらを見た。
ゴーグルで良く見えないけど兄貴と同じくらいだった。
彼は右足を振るいあげるとキュヴァスに即刀蹴りを放った。
『グガァ!』
キュヴァスは体をくの字に曲げながら顔を歪め、大きく裂けた口から唾液を発散させた。
地面に転がるキュヴァスを前に彼は私達ノ方を振り向くと左手に持っていたセイヴァー・アームズを右手に持ち替え、がら空きになった左手を私達にかざした。
すると手の平から光が発せられ、その光を浴びた私は足が動くようになった。
それだけじゃ無い、塩田さんも洗脳が解けると目を閉じてその場に倒れた。
私は慌てて塩田さんの側へ寄ると両手で塩田さんを抱き上げた。
彼はそれを確認すると顔を背けながらこう言った。
「彼女を頼む」
「貴方、まさか……」
私は彼の正体が頭に浮かんだ。
夢の中の世界に入り込む『サイコ・ダイブ』が出来るのは三葉さんみたいに実体の無いエネルギー系の異星人を除けば超能力者くらいだ。
それを可能とし、なお且つキュヴァスの動けなくした私の足を動かせるようにすると言う事は彼はすなわち超能力者と言う事になる。
しかも塩田さんを知っている、と言う事はこいつは……
彼の名前を言おうとした瞬間、彼は再び左手用のセイヴァー・アームズを持ち直し、キュヴァス目がけて走り出した。
一方キュヴァスは蹴られた腹を抱えながら立ち上がると鼻の頭に皺をよせ、怒りに身を震わせながら彼に向かって突進した。
『ウオオッ!』
キュヴァスの大きく振るいあげた剣と彼の左手のセイヴァー・アームズが激突する。
バチバチと火花を上げながら2つの刃が交差し、互いに肘を曲げて顔を近付けるとキュヴァスは彼に尋ねた。
『貴様っ、一体何者だっ?』
「……貴様に名乗る、名等無いっ!」
彼はゴーグル越しの目を吊り上げると左手でキュヴァスの刀身を受け流すと上半身を捻って右手のセイヴァー・アームズで切りかかった。
だけどそう簡単には行かなかった。
『チッ!』
キュヴァスは舌打ちしながら身を仰け反らせて斬撃を回避する。
だが彼はこれを読んでいたようで、身を翻すとその状態から左足を振るいあげてハイ・キックを繰り出した。
だがキュヴァスもこれを悟っていて、そのまましゃがんで斬撃を回避すると右手の剣を思い切り突き出した。
『シャアアッ!』
「くっ!」
彼は右手のセイヴァー・アームズを振るった。
赤い光の刀身がキュヴァスの黒い刀身を火花を散らしながら弾いて起動をずらすと左手のセイヴァー・アームズを振るった。
凄い勝負、全くの互角だ。
さすが兄貴達と互角に戦っただけの事はある、あれだけの組織だからそこにいた彼が弱い訳無いし、さらに変身するみたいだけど使わなくても十分に強かった。
でもキュヴァスはただ夢の中に入り込んで心を盗むだけの盗っ人じゃ無い、大分場数を踏んで戦い慣れてる。
これだけの強さだと僅かの迷いが敗北になる、勝負はホンの一瞬だ。
『チッ!』
キュヴァスは舌打ちすると煙の様に姿を消した。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki