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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 レンは微笑しながら塩田さんに向かって右手を差し出した。
「さぁ、恵」
「……はい」
 塩田さんは首をあげると右手を差し出した。
「ダメ! 塩田さんっ!」
 私は叫ぶけど塩田さんは聞く耳を持たない。
 私は2人の間に割って入ると塩田さんを止めた。
「止めてっ!」
「なっ?」
「塩田さん! 目を覚まして!」
 私は塩田さんの肩をつかんで揺すり動かした。
 でも塩田さんの目はまだ朦朧としていた。
 私は諦めずにさらに叫び続ける。
「そいつはレンじゃ無い、偽物よ!」
「おいおい、何を言ってるんだ? 大体他人のお前が口を出す筋合いはないんじゃないのか?」
「うるさい! アンタ、一体何者よ!」
「何者って…… まぁ、一度会ったきりだし仕方ないが、オレは元オメガの工作員、だが刑期を終えて帰って来ただけだ」
 目の前のレンはわざとらしく言った。
 だけどこいつは間違った事は言ってない。
 レンがオメガの元工作員と言う事を知っているのは限られている。
 でも明らかに矛盾してる事がある。
「私は騙されない、本物のレンなら洗脳する訳が無い、いい加減に本性現しなさいよ!」
 私は食ってかかる。
 すると相手はこれ以上騙すのが不可能と思ったんだろう、目を細めると口をへの字に曲げた。
 そしてしばらく間が空くとため息を零した。
「やれやれ、時間が無いってのに仕方ない、邪魔をするなら…… 消えて貰おうか!」
 レンは一度閉じた目を思い切り見開いて不気味な光を放った。
 途端レンの体が墨でもかけたかの様に真っ黒に染まり上がるとゴキゴキと言う音を立てながら姿形が変わって行った。
 黒い皮膚、黄土色の2本の角と中央には後ろ髪が長いモヒカンの山羊の様な頭、白いズボンと爪先が尖った紫色の靴を穿き、その上から肩と5本の指の両手が出ている大きな袖口が金色のラインになった上下と繋がった丈の長い服を着て、腰には金色の帯が巻かれ結び目を右腰にずらしていた。
 ナトメイア星人がどんな姿形をしてるのか分からない、でも夢の中に現れるって事はこいつは間違いなくナトメイア星人だ。
 やっぱりこいつは本物じゃ無かった。
「塩田さん!」
 私はここから逃げようと塩田さんの手を引いた。
 だけどキュヴァスが手をかざすと私の足がまるで石になったように動かなくなった。
「なっ、どうして?」
『無駄だ。この世界でオレに逆らう事はできない』
「くっ!」
 私は慌てて何とかしようとするけどどうにもならなかった。
 キュヴァスは右手をかざすと黒く長い刀身に羊の頭を模した鍔の両刃剣が現れた。
 それを強く握りしめると切っ先を私に向けるとジリジリと近付きながら言って来た。
『オレはな、美しい心を持つ娘が好きなんだ。お前みたいなじゃじゃ馬に用は無いんだよ、だから大人しくくたばりな!』
 キュヴァスは私に向かって剣を振り上げた。
 その刀身が振り下ろされた瞬間、私はもう駄目だと目を閉じた。
 だけど……