ＳＡⅤＩＯＲ・ＡＧＥＮＴⅡ
「な、何っ？」
私は周囲を見回した。
まるで一昔前の映画の一時停止だ。
他の人達は動かないけど、私は特別に動く事が出来る、本来私は塩田さんの夢が作り出した存在じゃ無いからだ。
でももう１人、私と同じく動いてる人がいた。
「レン？ レン、どうしたの？ レンっ！」
塩田さんはレンの両腕をつかみながら揺すっていた。
しかしレンはウンともスンとも言わなかった。
何だかヤバい予感がした私は塩田さんの側に駆け寄った。
「塩田さん！」
「白金さん？」
「塩田さん、あの…… 信じられないかもしれませんけど、目を覚ましてください！」
「はぁ？ 何言ってるんですか？」
「話せば長くなるんですけど…… 実はここは現実の世界じゃないんです。全部塩田さんが作り出した夢なんです」
「夢って、そんな事……」
塩田さんは顔を曇らせた。
そりゃ夢だと思いたくない気持ちはよく分かる、でもこの状況は信じて貰わざる負えない。
塩田さんも状況を理解しかけたその時、動かなくなったはずのレンが元に戻って口を動かした。
「……恵」
「レ、レンっ？」
塩田さんは顔を明るくする。
だけど私は違和感があった。
何でレンは動いてるのに周りの人は動いてない？ どうしていきなり動けるようになった？ それ以前にここは夢の中、本人は服役してるはずだ。
冷静に考えておかし過ぎる…… それを踏まえて確信する、こいつはレンじゃ無い。
「良かった。何ともないの？」
「愛してるよ、恵」
「えっ？ あ、愛して…… ええっ？」
塩田さんは困惑する。
そりゃ相思相愛だとしても面と合わせて言われればそうなる。
だけど彼女にだって心の準備と言う物がある、顔を真っ赤にしながら慌てふためいた。
「あああっ、あの、そのっ、私達、まだそんな関係じゃ、ええと……」
塩田さんは普段が真面目なだけにパニックに弱い。
まさに頭から湯気が立ち上り、目がグルグル回転しながら言葉にならない言葉で答えた。
だが一方、レンは目を細めるとその瞳が怪しく輝いた。
「恵、愛してる」
「あっ……」
すると塩田さんの方に変化が訪れた。
塩田さんの両眼がレンの両眼と同じく怪しく輝くと塩田さんの瞳から光が失せ、首が項垂れた。
作品名：ＳＡⅤＩＯＲ・ＡＧＥＮＴⅡ 作家名：kazuyuki