SAⅤIOR・AGENTⅡ
夢の中に入る方法は分かった。
でももう1つの疑問が残ってる、それはどうして夢の中に入るのが私かだった。
夢の中に入って塩田さんの目を覚まさせるなら里中先生も良いはず…… って言うかむしろ保健医の里中先生の方がうってつけのはずだ。
私がそれを言うと里中先生はバツが悪そうな顔をしながら目を反らした。
「どうかしたんですか?」
「……妹さん、今回塩田さんがこうなったの、私の責かもしれないの」
「えっ?」
私は息を呑んだ。
三葉さんも驚いて里中先生を見た。
塩田さんがこんな風になったのが里中先生の責? 訳が分からなかった。
「……実は数週間前だったわ。塩田さんが私に『彼』の事を聞いて来たの」
里中先生が言う彼の事を私は思い出した。
彼はかつて銀河規模の死の商人『オメガ』の下級工作員で、地球を自分達の兵器の実験場にする為にやって来た。
でも塩田さんと出会い、兄貴達と戦って自分の過ちを改め、今はセイヴァー・エージェント本星のゼルベリオスで服役している。
そして自分が知っている情報を全部教えれば近い内に釈放され、地球で暮らして良いとゼルベリオスから取引を持ちかけられ、それを承諾した。
塩田さんも彼が地球に来るのを待っているつもりだったけど、やっぱり不安になったんだろう、里中先生に尋ねて来たと言う。
「その時に『気長に待ったら』って言ったのよ…… でも少し無責任過ぎたわ、彼女の事を考えるならもう少し配慮の仕方を考えるべきだったわ」
里中先生は目を細めて眉間に皺を寄せた。
人間は皆『体感時間』と言う物が存在する、何かを待ってる間は時間の流れが遅く感じる物で、塩田さんにとってはもう何年も待ってるのと同じはずだ。
私は兄貴が死んだと思って諦めてたから虚無感はあっても苦しまずに済んだ。
でも塩田さんの場合は違う、彼がまだ生きてる分、待つ事は彼女にとって苦しみ同然だ。
「妹さん、貴女を呼んだのはこの為でもあるの…… 改めてお願い、塩田さんを助けて」
里中先生の目は本気だった。
でも私にできるかどうかだった。
夢の中に入ると言う事はさっきの兄貴達の会話にあった通り、下手すれば塩田さんの心を破壊してしまう可能性がある、そうなったら責任がとれない。
でも方法はこれしか無い、里中先生は私に言ってる、この人がこれほど頼み込んで来るのは余程の事だ。
私は右手を強く握りしめると決意を固めて頷いた。
「分かりました」
私だって塩田さんを救いたい、その気持ちは本当だ。
隣に用意された簡易ベットに横になると両手の指を組んだ。
「妹さん、頼んでおいて言うのも何だけど…… 危なくなったら引き返して来て」
「はい」
「じゃあ、サイモン、お願い」
「了〜解」
三葉さんはアイパットの起動アプリを押した。
「……うっ」
私の意識は朦朧とし始め、私の瞼が重くなって行った。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki