SAⅤIOR・AGENTⅡ
キュヴァスの能力は脳波を一定状態にする事で眠ている女性達の心と繋がる事が出来る。
つまり事件を起こした後、夢から夢へと移動する事で逃げ回っているのだけど、裏を返せば1人でも眠りから目覚めればそこから連鎖反応で他の人も目覚めるしい。
ただそれをやるには内側から目覚めさせる必要があるらしい、その方法とは夢の中に入り込んで目を覚まさせる事だった。
「ちょ、待てよ、舞にサイコ・ダイブさせんのか?」
「そんなにまずいの?」
「そうだよ! マイは知らないだろうけど、精神世界は危険なんだよ」
不破さんも目を吊り上げた。
兄貴の様子からしてヤバそうなのは理解できる。
何でも精神世界…… すなわちサイコ・ワールドとも言うべき世界は現実世界や電脳世界と違って不安定でとても脆いらしい。
夢の核である夢の中の本人に何かあれば精神崩壊は免れないし、まして私自身が夢の中から出て来れない可能性もあると言う。
だけどこの方法は親しい人間が適切だと言う…… それはそうだ。他人が夢の中に入ってくれば塩田さんに何があるか分からない。
「そんな危険な事を舞にさせる訳にはいかなぇえ! サイモン、お前がやれ! お前なら塩田ちゃんの事知ってんだろ!」
「そう言えば以前ありましたね」
私は思い出す。
以前異星人と知り合った子供の夢の中に入り込んだ事があった。
あの時は何も起こらなかった。三葉さんじゃダメなんだろうか?
『無茶言うな、あの時は相手がガキだし、異星人に化けてたからだ。それにオレ様が言って妹のダチと口喧嘩になったらどうするつもりだ?』
自分のキャラクター良く分かってるなぁ…… 私だって上手に説得できるかどうか不安だけど。
以前塩田さんと揉めた事もあったし、不破さんの時だって迫力負けで何も言え無かった。
でもそれしか無いのも事実だった。
あの時より時間も経ってるし、大分親しくなってるはずだ。
私は決意を固めて言った。
「はい、分かりました」
「おい、舞!」
「良いのよ、私は別に構わないわ」
「だけどな!」
「兄さんお願い、私を信じて」
私が言うと兄貴は口を紡いだ。
迷ってる暇は無い。
刹那の時間が流れると兄貴はため息を零した。
「わーったよ、行かせりゃ良いんだろ」
『ええ、妹さんは私達と合流しましょう』
「分かりました」
私は頷いた。
その時、私は心に決めた。
絶対に塩田さんを助け出すって……
私はタクシーで塩田さんが配送された桜星総合病院へ向かった。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki