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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 放課後。
 私は別にどこも悪くないし、保健委員と言う訳でも無い…… でもすっかり保健室の住人となった私はエアコンの効いている保健室でバスを待っていた。
 勿論保健室で時間を潰しているのは私だけじゃ無かった。
「ハ〜〜〜クションッ!」
 宿題をやっていた私の目の前で不破さんが盛大にくしゃみをした。
 登校時に着ているコートを羽織り、首にはマフラーを巻き、さらにその上から夏風邪ひいて着ていたドテラをマンションから持って来て頭からかぶっていた。
 その姿はまるでダルマと言うか座敷童(もしくは雪ん子)にしか見えなかった。
 すると不破さんは情けない声で言った。
「チヅルちゃ〜ん、もっとエアコンの温度上げてよ〜」
「あのね…… 十分効いてるでしょう、サポーターの体温調節機能もあるんだから、少しくらい我慢しなさい」
「ううぅ〜〜」
 不破さんは低く唸った。
 私はそんな彼女に苦笑した。
 するとベットで足を組みながら寝転がってアイパットを見ていた三葉さんが言って来た。
「そうそう、この程度で寒いって言ったらバイスに怒られるぜ」
「何よ、自分だって同じ穴の狢のクセに!」
「別にオレ様は寒いの平気だぜ、ここにいるのは妹と同じで単なる暇つぶしだ。なぁ妹?」
「………」
「おい、妹?」
「えっ? あ、はい!」
 呆っとしていた私は三葉に言われて自分を取り戻した。
「妹さんが呆っとするなんて珍しいわね、考え事?」
「え、ええ…… まぁ」
「って、タクミが来ないからって心配する事じゃねぇだろ、校庭にいるんだから会いに行ってやれば良いだけだって」
「誰が兄さんの事を考えてるんですか!」
 私はテーブルを叩いて立ち上がった。
 すると保健室の中にいた人達が一斉に驚いて私を見た。
 三葉さんは私がこんなに怒るなんて思わなかったんだろう、少々バツが悪そうに両手を前に出して言って来た。
「お、おい…… 冗談だよ、そんなに怒るなって」
「あっ、すみません、こっちこそ興奮して……」
 私は再びパイプ椅子に腰を降ろした。
 ちなみに兄貴と大神さんはここにはいなかった。
 兄貴はサッカー部と一緒にグラウンドを駆け回り、大神さんは柔道部の部員達と一緒に駅までランニングに出かけていた。
 すると里中先生が微笑しながら言って来た。
「ならどうしたの? またお兄さんとケンカでもした?」
「えっ? あ、いえ、そう言う訳じゃないんですけど……」
 確かに兄貴が原因(直接じゃ無いけど)なのは間違いない、でも今は塩田さんの事だった。
 私は塩田さんの事を話す事にした。
 ここ数日元気が無かった事、占い所へ行った事、そして今日はガラリと変わって…… むしろ陽気になり過ぎていた事をだ。
 気の責だと言われればそれまでだけど、少々気になっていた。
 すると不破さんが顔を顰めながら言って来た。
「マイ達、占いなんて行ったの?」
「占いなんてって…… 不破さん信じないの?」
「当たり前だよ、そんなのあてにならないって……」
「そうだな、非科学的過ぎるぜ」
 仲間がいた。
「それに元気になったならそれで良いじゃん」
「そんなに気になるなら聞いてみりゃいいじゃねぇか」
 三葉さんは両手を上げた。
 それが出来れば苦労は無い。
 何で悩んでたか分からないけど。塩田さんは自分で溜めこむタイプの人間だ。
 こう言った人は身近な人に心配かけまいと何も話してはくれない。
 それができないから占い所に行ったんだけど、それにしてもこれで良かったのかと思ってる。
 それに塩田さんだって占い所で『他の人に言ってはいけない』と言われているはず、塩田さんの性格からして一度した約束は破らないだろう。
 でも私には嫌な予感がしてならなかった。