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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 佐伯さんは邪悪な笑みを浮かべながら引き金に指を当てるとあざ笑うかのように言って来た。
「はい、チーズ……」
(もう、ダメ……)
 私は諦めて目を強く閉じた。
 だがその時だった。
「うおらぁああっ!」
 聞きなれた叫び声に私は目を開いた。
 すると佐伯さんのすぐ横に兄貴が現れた。
「なっ?」
 突然現れた兄貴に佐伯さんの形相が変わった。
 振り向こうとした瞬間、兄貴の強く握った右拳が佐伯さんの左頬に炸裂した。
「うげぇ!」
 佐伯さんは思い切り吹っ飛ばされるとカメラが音を立てて倒れた。
 佐伯さんの方は積み重なっていたダンボールや立て掛けてあった機材が頭から落ちて来た。
「舞っ!」
 兄貴は振り向いて私の口のガムテープを取った。
 すると同時に扉が空いて不破さん達が入って来た。
 不破さん達は部屋の中を見回すと身を震わせながら兄貴に言っ来た。
「ちょ、タクミ! アンタ何してんのよ?」
「はぁ?」
 兄貴は訳が分からないという顔をした。
 大神さんは呆れたと言うか、こうなる事を分かってた様な顔をしながら目を吊り上げてセイヴァー・ギアを召喚した。
「全くだ。そこまで堕ちたか、この外道!」
「ちょっと待て! 一体何の事だ? オレが何したってんだよ?」
「自分の胸に聞いてみろぉ―――っ!」
 不破さんもセイヴァー・アームズを召喚して飛びかかった。
 兄貴も慌ててセイヴァー・アームズを取り出して2人と乱闘になった。
「うおおっ? 何しやがんだ。バカたれ供っ!」
「うっさい! このシスコンっ! 変態っ! 強姦魔ぁ―――っ!」
「大人しく罪を認めて自首しろ! 今なら骨の2〜3本で許してやるっ!」
 まるで一昔前の漫画みたいなやり取りだった。
 埃の中でボカスカ殴り合うみたいなやつだ。
 って言うか2人供凄い誤解してた。
 すると三葉さんが私に近付いて両手を拘束してるロープに手を伸ばした。
「で、何があったんだ。妹?」
 三葉さんはロープをほどきながら尋ねて来た。
 どうやらこの人だけは分かってるみたいだ。
「あ、実は……」
 私は全てを三葉さんに話した。
 
 それから三葉さんが兄貴達を駐在すると私の代わりに代弁してくれた。
『このシスコンは妹にセクハラはするが傷つけたり酷ぇ事は絶対しねぇよ』
 すごく微妙なフォローだった。
 でも不破さん達にはそれで十分だったようで、武器を収めると不破さん等はケラケラと笑いだした。
「な〜んだ。そうだったんだぁ〜、あっははははっ!」
「テメェ等……」
 兄貴は怒りに震えていた。
 しかし2人は反省して無かった。
 特に大神さんは腕を組みながら口をへの字に曲げた。
「普段が普段だ。疑われて当たり前だ」
「言いてぇ事はそれだけか? 犬っころ!」
 兄貴もブチ切れ寸前だった。
 右下目蓋がヒクついて両手を鳴らした。
「ちょっと待って、兄さん!」
 私は兄貴を止める。
 そりゃ大神さんの言う事は最もだし、兄貴が信用できないのも分かる…… でも今はそんな事を言ってる場合じゃなかった。
 ここで起こった事を里中先生に報告すると三葉さんは佐伯さんのパソコンを調べた。
 画面の中の女の子達は皆三葉さんに向かって助けを求めていた。
「なるほどな、データ化してパソコンの中に電送して立って訳か…… どうりでサポーターのサーチ能力に引っ掛からない訳だ」
「三葉さん、皆を助けられませんか?」
「ああ、簡単だ。このカメラを使えば皆元通りだ」
 そう言いながらカメラを起こす三葉さんの言葉に私は1つ安心した。
 だけどまだ問題は残っている、それはカメラを提供した異星人とその異星人が塩田さんを狙ってると言う事だ。
 さっきの佐伯さんの言葉からすると塩田さんも狙われている。
 その異星人はカメラを提供したのだから別のカメラを所持してると言っても良い、もし塩田さんまで同じ目にあっていたら……
 私は兄貴からスマホを借りて電話をかけてみる。
 私のスマホは生憎撮影部屋に置いて来てしまった。
 塩田さんのスマホにも兄貴の番号も入ってるから通話する事は出来る、でも何度かけても返事は無かった。
「ダメ、繋がらない……」
 私はスマホを持った手を降ろして首を横に振った。
 やっぱりすでに拉致されていると見て間違いない。
「だったらこいつに聞けば良い!」
 するとガラクタの下敷きになった佐伯さんを兄貴が引っ張り出した。
 兄貴のパンチで気を失った佐伯さんに大神さんが後ろに回ると両手を前で交差させ、自分の腕をさらにその上から回して喝を入れた。
「うっ…… ん?」
 佐伯さんは目を覚ました。
 すると目を細めながら見下ろす兄貴達を見て叫んだ。
「な、何だお前等? 一体どうやって入り込んだ?」
「んな事ぁどうでも良いんだよ!」
 兄貴は薄ら笑いを浮かべながら指の関節をボキボキと鳴らした。
 その背後からはどす黒いオーラが炎の様に揺らめいているように見えた。
「ひいっ?」
「ちょ、タクミ!」
「後で記憶消しゃいいだろ、その前に半殺しにしてやるけどな」
 兄貴の目は本気だった。
「吐け、あのカメラは誰から貰った?」
「………」
 佐伯さんは兄貴から顔を反らした。
 すると兄貴は左手を伸ばして胸倉をつかむと右手を強く握りしめて振り上げた。
「テメェ、今すぐぶち殺されてぇかっ?」
「だから落ちつきなよ!」
 不破さんが兄貴の腕をつかんで止めるが、今の兄貴の耳には届いて無かった。
 尋問下手すぎる…… もし兄貴が刑事だったら絶対訴えられるだろうな。
 でも佐伯さんはあくまで地球人、となると異星のカメラを手に入れられる訳が無い…… だけど彼は異星人と繋がりがあると言うのは分かってる。
 だけどそれが誰かが分からなかった。
「むっ? 誰だっ!」
 大神さんが扉を開けるとそこには1人の女の子がいた。
 それは遊美さんだった。
「ゆ、遊美さん?」
 遊美さんは慌てふためきながら私達から目を反らした。
「あっ、ああ…… あの」
 遊美さんはガタガタと震え出した。
 すると千載一遇のチャンスと言わんばかりに叫んだ。
「遊美君! 助けてくれ! こいつらは変質者だ! 今すぐ警察に……」
「テメェ……」
「通報したけりゃそうしろ…… ただし、テメェも豚箱行きだけどな」
 三葉さんは懐からスマホを取り出して佐伯さんに見せた。
 佐伯さんは顔を青くしながら震えだした。
 何しろ画面には佐伯さんの事がぎっしり書かれていた。
「未成年への恐喝、強要、暴行…… 警察に持って行かれるとヤバいんじゃないのか?」
「ま、通報されなくてもこれから持って行くけどね」
 不破さんは両手を上げた。
 確かにこれを持って行けば佐伯さんは破滅だ。
 記憶だって消せば全ては済む…… だけどその前に聞きたい事がある。
「遊美さん、もしかして…… 貴女も脅されてたんじゃないですか?」
「っ!」
 遊美さんは目を見開いた。
 どうやら図星のようだ。
 撮影所で様子がおかしかった事にずっと引っ掛かっていた。
 園子さんのUMAの話で顔が青くなり、佐伯さんと話す度にオドオドしていた。