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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 2日後。
 私は月刊ハッピネスの会社を訪れた。
 受付で待っていると佐伯さんがやって来た。
「いやぁ良く来てくれたね、早速だけど編集長達と顔を合わせてくれないかな? 実はみんな集まってるんだ」
「は、はい! ぜひっ!」
 塩田さんの目が完全に輝いていた。
 本当に楽しみだったんだな……
 って言うか『顔を合わせてくれないか?』って聞いておきながら『すでに集まってる』って…… 完全に断れない状態に私は苦笑した。
(塩田さん、ちゃんと分かってるのかな?)
 私はため息を零して考えた。
 それはここに来た理由だった。 

 実はここに来たのは里中先生に頼まれたからだった。
 何でもハッピネスの専属モデルの子達が次々に行方不明になってると言う事件が起こっていた。
 仕事が終わっても家に帰っておらず、まして防犯カメラを調べてもビルから出た形跡がまるでなかった。
 まるでビルの中で神隠しにあったかのようなこの事件、手口からして異星人が絡んでるとみてセイヴァー・エージェントに出動要請が下った。
 ただし異星人絡みの事件だったとしても行方不明者達の安否を確かめるまでは戦う事は出来ない。
 最悪な事を考えてしまうけど、彼女達は生きている可能性は極めて高い。
 何故なら人間の死体ほど処理に面倒な物が無い、車を使って移動させて人目の付かない場所に放置したとしても死体遺棄はデメリットの方が大きすぎる。
 ましてここはモデルの事務所、女の子達は女子中学生から私たちみたいな女子高生くらいの若い子達だ。
 ストーカー防止の為に警備は厳重にされていて、許可なく入ろうものならガードマンに拘束されて警察に通報されるようになっている。
 監視カメラも正面玄関や地下駐車場にも取り付けられ、猫の子1匹入れない様になっていた。
 
 私達は佐伯さんに案内されてハッピネス編集部へ案内された。
 胸にゲストのバッジを付けるとエレベーターに乗って地上4階へやって来た。
 そして『ハッピネス編集部』と書かれたプレートの扉を潜ると柄に描いた様なオフィスが目の前に広がった。
 パソコンと電話の乗った机が向かい合わせに繋がれ、1番奥の窓際には大きな机が全体を見回せるように配置されていた。
 スタッフは佐伯さんを入れて男性3人と女性4人、さらに私達と同じくらいの女の子が3人だった。
 私達の目の前に赤い縁取りの眼鏡と後頭部の髪が跳ねた紫のスーツ姿の編集長『楠木冴子』さんが立って私達を交互に見た。
 佐伯さんは横でゴマをするように言って来た。
「どうですか編集長?」
「そうね……」
 冴子さんの鋭い目線に私は固唾を飲んだ。
 さすがにモデルの仕事が出来ると喜んでいた塩田さんの顔から余裕が消えていた。
「確かに2人供悪くないわ…… でも貴女」
「は、はひっ!」
 冴子さんが私に向かって言って来た。
 私の声は思わず裏返って両肩がビク付いた。
 冴子さんはため息を零すと一間置くと私の肩に右手を置いて微笑した。
「もう少しリラックスした方がいいわよ、折角の可愛さが大なしよ」
「ど、どうも、失礼しました!」
 私は深々と頭を下げた。
 その姿を見たスタッフ達のクスクスと笑う声が聞こえる。
(は、恥ずかしい〜)
 私はとても顔を上げられなかった。
 すると佐伯さんがフォローして来た。
「まぁまぁ…… それより紹介するよ、今回君達と仕事をする子達だよ」
 佐伯さんは私達の後ろを見た。
 私と塩田さんも後ろを振り返って専属モデルの子達と顔を合わせた。 
 3人供塩田さんに負けず劣らずの美人さんだった。
 私達より背の低い茶髪で短いポニーテールの川上蛍さん。
 もう1人は黒髪の腰まであるストレートをうなじで分けて肩から掛けた大場園子さん。
 最後は私と同じくらいで色白で赤い髪のショートボブで左に分けた前髪を赤い薔薇の飾り付いたヘアピンで止めた椎名遊美さんだった。
「初めまして」
「よろしく」
「どうも」
 蛍さん、園子さん、遊美さんはそれぞれ挨拶を交わして来た。
「初めまして、塩田・恵です」
「し、白金・舞ですっ!」
 私達も頭を下げて挨拶をした。
 
 自己紹介も終わったと言う事で早速仕事となった。
 私達は別の部屋に移動すると髪を纏め、軽く化粧をしてもらって来年の春に発売予定の新作の洋服に身を包んだ。
 私はカジュアル系…… と言う奴だろうか? スカートに幾つものフリルの様になった膝の丈まであるワンピースの上から桜色のカーディガンを羽織り、下は黒いタイツと脛部分まである皮のブーツ。
 塩田さんは頭には丸い鍔付きの帽子、白と青のチェックのシャツの上からデニム系の長袖のシャツと膝丈まである黒が強い灰色スカートと底上げブーツの格好だった。
 そして佐伯さんやスタッフの待つ撮影部屋へやって来た。
 白い壁と床、背景として大きな桜の木が描かれたポスターがセットされていた。
「うん、僕の見た手に間違いは無かったな…… でも」
 佐伯さんは私達の左腕を見ると右手の人差指を差した。
「それ、どうにかならないかい?」
「えっ?」
 私達は見る。
 左腕にはセイヴァー・ブレスが巻かれていた。
 すると冴子編集長も言って来た。
「確かに、仕事に玩具を持ちこむ訳にもいかないわね、撮影の間だけ外して貰えるかしら?」
「で、でもこれは……」
「何々? もしかして誰かのプレゼントなの?」
「その割にダサくない? おまけに2人供同じのしてるし」
 蛍さんの頬が緩むと園子さんは眉間に皺を寄せながら腰に右手を置いた。
「えっ? ああ、ちょっと事情がありまして……」
 私は左腕を抑える。
 すると佐伯が言って来た。
「どんな事情があるかは知らないけど…… せめて撮影の間だけ、頼むよ」
「はぁ……」
 私は塩田さんと顔を合わせた。
 さすがにこれには迷った。
 このセイヴァー・ブレスはセイヴァー・エージェントの協力者に手渡される物で、喋りはしない者の兄貴達のサポーターと似たような機能が搭載されている。
 その中に私達の脈拍や生体波長から危険を兄貴達に知らせてくれると言うのがあるのだけど、それは勿論手首に巻かれていなければならなかった。
 すると塩田さんが耳元に顔を近づけながら言って来た。
(仕方ありません、撮外しましょう)
(そうですね)
 私は不本意ながら頷いた。
 潜入…… と言うのもおこがましいけど、仕事が出来無ければ潜入の意味が無い、私達はブレスを外した。