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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 オレ達はマンバの別荘へやって来た。
 長期の休日には友人呼んでパーティが開けるくらい敷地が広く、庭の芝は綺麗に整理され噴水もあった。
 それを横切り、敷地内で1番目立つ白塗りで2階建ての建物のドアを蹴破ると別荘内に突入した。
 だが別荘内は物毛の空だった。
 リビングにもバスルームにも、まして晩酌が出来るように作られた2階のベランダにもどこにもいなかった。
「ここじゃねぇってのか?」
「いや、オレ達以外の人間の匂いがする、つい最近まで誰かがここにいた」
「でもいないじゃん、一体どこ行ったのよ?」
 ファーランが悔しがりながら地団太を踏んだ。
 ここじゃないとすると全地球上を探さなきゃいけない、一体奴はどこに消えちまったんだ?
 
 頭を抱えているタクミ達の姿を視ている物がいた。
 まるでホテルのVIPルームのような作りの部屋に天井にはシャンデリア、床には赤いカーテンが敷かれ、四隅には観葉植物、壁際には高い洋酒の飾られた棚、中央には軽く数十万は下らないソファーにその男は座っていた。
 目の前にある光沢を放つテーブルの上に置かれたグラスに酒が注がれ、壁一面に設置された大型モニターに映る自分の別荘に侵入して来た者達に嘲笑した。
『フン、そろそろ気付く頃だと思った。だが遅すぎたようだな』
 マンバは酒を煽った。
 ここは別荘の地下に作られたマンバの隠しシェルターだった。
 マンバは会社の経営権を人手に譲るとずっと数人の部下と供にこのシェルター内に潜んでいた。
 その部下の1人で隣にいる秘書で同じボムズ星人ハン・キョウジャが手を擂りながら言って来た。
『いやぁ、一時はどうなる事かと思いましたが、上手く行きましたね』
『当たり前だ。上に立つ者は全ての事を想定しなければならん、多少のアクシデントはあったが…… それも想定内だ』
『さすがは社長、考え方が違いますねぇ』
『フン、事が収まるのを待って宇宙に飛ぶ…… 完璧な計画だ』
「上手く行けば良いがな」
『心配無い、全ては私の…… 何っ?』
 マンバは後ろを見た。
 そこにいたのはサイモンだった。
 サイモンは手を組みながら壁に背を当てていた。
『き、貴様! どこから入った?』
「おいおい、入口閉じてても回線開いてりゃ意味ねぇだろ」
 サイモンは棚の上に置いてあるパソコンを指差した。
 シェルター内は完全な自家発電で、外からの電気や地球のネット回線は完全に遮断されている。
 しかしいつか宇宙に高飛びする為に外の情報を知らずにいる訳にも行かず、ネビュラ・ネットは繋げたままだった。
 サイモンはパルスからセイヴァー・ギアを転送してもらうと銃口をマンバに向けた。
「フリーズ、かくれんぼはお終いだぜ」
『くっ! おい!』
『ハッ!』
 ハンは頷くとポケットから小型の筒状のスイッチを取り出してボタンを押した。
 途端シェルター内に警報が響き、白光の左右両開きの扉が開くと武装した異星人達が入って来てサイモンに銃口を向けた。
『1人で乗り込んで来るとはバカな奴だ。秘密を知って生きて帰れると思うなよ…… こっちはこう言う事も想定してあるんだ!』
「お〜お〜、言ってくれるねぇ…… 実はこっちも想定してあるんでな!」
『何っ?』
「あれ見てみな!」
 サイモンは壁のモニターを見た。
 マンバや手下達もモニターを見るとそこにはシェルターの入口を見つけたタクミ達が映っていた。
 1階にある書斎にある仕掛け、本棚に収められている分厚い本に似せて作ったスイッチを入れると本棚の1つが床に沈み、その向こうに下に降りる階段と金属製の扉があった。
 するとバイスがファングに向かって言った。
『サイモン、見つけたぞ!』
「ああ、こっちも敵の大将を確認した」
 サイモンは口の端を上げた。
 マンバは顔をしかめながらサイモンを見た。
『貴様っ!』
「敵陣に何も考えずに飛びこむバカがいる訳ねぇだろ、ちゃんとダチにここの入口教えといたんだよ! そんな事も見抜けなかったのか? 3流経営者」
 サイモンは挑発する。
 今の言葉にマンバは我を失い、眉間に皺を寄せて歯を軋ませた。
『殺せっ!』
 マンバは叫んだ。
 途端部下達の銃口が一斉に火を噴いた。
 たちまち轟音と供に硝煙でサイモンの姿が見えなくなった。
『フッ、命を粗末にしやがって……』
 マンバは鼻で笑いながら懐から葉巻を取り出して咥えた。
 それを見たハンが懐からライターを取り出して火をつけようとした瞬間だった。
『ギャアアア―――ッ!』
 突然マンバの部下達が断末魔を上げながら肩や腕から血を噴き出して倒れた。
 煙が晴れるとそこにいたのは確かにサイモンだった。
 しかしいつものサイモンではなく、セイヴァー・ギアを装着したサイモンだった。
 全身を覆う黄金のラインが入った白い装甲、背中には大きな、両肩と小さな円柱型のパーツが取り付けられ、オレンジの単眼のゴーグルのヘルメットに大型の籠手と具足の、匠達とは違い機械的特徴が大幅に強調されたデザインとなっていた。
「命を粗末に? そうでもねぇさ」
 サイモンは微笑した。
 サイモンはセイヴァー・アームズの引き金を引いた。
「α・モードっ!」
 サイモンの銃撃が放たれると倒れた部下達を一掃した。
 たちまち粒子化されるとゼルベリオスに強制転送された。
『お、おのれぇ!』
「次はテメェだぜ!」
 サイモンはマンバに向かって引き金を引いた。
 しかしマンバはハンの服の襟と腕をつかむと強引に引っ張り出すと自分の盾にしてしまった。
『ぐあああああっ?』
「テ、テメェ、自分の部下を……」
 サイモンは顔を顰めた。
『フン!』
 しかしマンバは鼻で笑うと粒子化してゆくハンを蹴り飛ばすと部屋のドアを出て行った。
 サイモンは消えて行くハンを見下ろす。
 ハンは顔を顰め、泣きそうになりながらマンバの出て行った扉に手を伸ばした。
『ひ、酷い…… あれだけ協力したのに……』
 そう言い残しながら消滅、ゼルベリオスに転送された。
「チッ!」
 サイモンは舌打ちしながらマンバの後を追った。