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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 この後ギルに里中先生からの通信が入り、私達は学校に戻った。
 どうやらすでにセイヴァー・エージェント全てに知らされていたらしく、不破さんと大神さんも集まっていた。
「妹さん、巻き込まれて災難だったわね」
 里中先生が私に言って来た。
「あ、いえ、私が巻き込まれた訳じゃないので……」
 私は手を横に振る。
 すると大神さんが腕を組んで言って来た。
「しかし、一体誰が爆弾なんかしかけたんだ?」
「さぁな、それ以前に地球製じゃねぇ火薬が存在する事自体がおかしいだろ」
「そうね、調べたらデータを見る限りじゃこれと同じ事件が数件起きてるわ」
 里中先生は壁のモニターに映像を映した。
 最初に映し出されたのは緑色の液体の入った瓶だった。
「これはバーンと呼ばれる液体火薬で、一定時間酸素に触れるか、あるいは僅かな刺激でも大爆発する為に宇宙でも製造が制限されている危険な代物よ」
「ニトログリセリンみたいな物ですか?」
「ええ、ただし威力の方は比べ物にならないけどね」
 私の問いに里中先生は答えてくれた。
 バーンは銃弾の中に僅か1滴入れるだけで軽トラを木っ端微塵にし、5〜6滴使用すれば戦車を粉砕する事も可能らしい。
 つまり誰かがあの現場にバーンを振りまいた事になる、背筋がゾッとなる話だ。
「このバーンを使った事件が桜星町外でも数件起きている事が分かったわ」
 そう言いながら画面を切り替えた。
 最初の被害は1週間前の深夜、駅を3つ超えた先にある町の廃工場の広場に停めてあった放置車両が爆発した。
 その翌日、製薬工場の運送トラックが運送中に荷台が爆発した。
 それから2時間後、今度は有料乗用車に停めてあった乗用車が爆発。
 さらにその翌日にそこから数キロ離れた駐車場でも爆発が起こった。
 それからさらに2日後、それが今回デパート近くの青空駐車場で起こった。
「こんなに起こってたのか……」
「けどアタシ達、何も言われて無いよ?」
「警察はパニックを防ぐ為に事故として処理してたのよ…… それにバーンは一度燃焼してしばらく経つと構成されている成分が気化するから現場検証でも引っ掛からなかったって訳、何の反応も無ければどうしようも無いでしょう?」
 里中先生は両手を上げる。
 兄貴達戦闘派が出動するには警察や企業などに潜伏している探索派に事件を調べる必要がある。
 だけど爆破はいずれも発見されてから時間が経ち過ぎている為に駆け付けた時にはバーンの反応が無くなっていた。 
 でも幸か不幸か、私達が見つけた時は爆破直後の為にまだバーンの反応が残っていた為にやっと兄貴達に声がかかった。
「バーンの入手先はまだ調査の途中だけど、恐らく車に恨みのある者の犯行、もしくは爆弾テロを並行して考えた方が良さそうね」
「車を狙った犯行なら、車のある場所じゃねぇか?」
「安直だ。爆弾テロなら今度は大きな被害の出る事を予測しなければならん」
「そうね、事件の事が分かるまで貴方達は待機していて、探索派の調査が分かり次第出動よ」
「「「了解っ!」」」
 兄貴達は立ち上がり敬礼をした。 

 それから3日後、クリスマス・パーティ当日となった。
 同時に二学期も終わりを告げ、同時に冬休みが始まった。
 でも爆破事件の糸口は何にもつかめなかった。
「はぁ、一体何がどうなってるやら……」
 保健室では里中先生が珍しく頬杖をついて悩んでいた。
 保健室内は重い空気に包まれていた。
 あれから爆破事件が起こらない、たった
 3日しか過ぎて無いけど、今までで1番日を開け過ぎていた。
 兄貴達もこの不可解な事件に頭を抱えていた。
「そりゃこのまま何も起こらないでくれる方がありがてぇけどな」
「そうも行くか、犯人を逮捕しない限りは安心できん」
「でもどこにいるんだろ……」
 不破さんが机の上に上半身を伸ばした時だった。
「うぃ〜っす」
 扉が開くと三葉さんが入って来た。
「三葉さん?」
「よう妹、久しぶり」
 私が立ち上がると三葉さんは右手を上げた。
 すると里中先生が眉間に皺を寄せながら言って来た。
「サイモン、貴方今何時だと思ってるの? 完全に遅刻よ」
「ああっ? ガッコ来いっつったのチヅルちゃんだぜ、別に何時に来いとか言われて無かったぜ」
「そう言う問題じゃないでしょう……」
「そ〜だよ、せめて終業式くらい来なさいよ」
 里中先生は頭を抱え、不破さんは目を細めた。
 三葉さんは私達の横を通り過ぎながらパイプ椅子に座って足を組んで両手を頭の後ろに回した。
「ま、気分転換にはなったかな、久しぶりに教室行ってクラスの奴らの顔見れたしな」
 三葉さんは鼻で笑った。
 きっと3組に残っていた人達は機能停止した核爆弾が再起動した様な顔をしているだろう、可哀想に……
「それよりシャバが面白い事になってるみてぇだな、爆弾騒ぎなんて誰がやってんだ?」
「お前、この一大事に……」
「そう言うなって、冗談だよ冗談」
「冗談も程々にしておいた方がいいですよ……」
 私は苦笑した。
 この人の冗談はマジでシャレにならない。
 すると三葉さんは机の上に置いてあった爆破写真を手に取った。
「こいつか、その問題の事件ってのは」
「でも全然手がかりがねぇんだよ」
「ああ? なんだそりゃ?」
「言った通りの意味よ、有料駐車場から無料駐車場、さらにはアパートやマンションの駐車場までくまなくマークしてるけど、それらしい人物が来た形跡が無いわ」
「車屋とか個人の車庫が狙われる可能性もあるだろ?」
「それも視野に入れてるわ、人工衛星で24時間監視してるけど、怪しい影は見当たらなかったわ…… そもそも一般人の車を襲った所でメリットがあるとは思えないし、まして脅迫状すらないのよ」
「テロならそんなの必要ねぇだろ、単に楽しいからやってんだよ」
「テロリストと愉快犯は別物だろ、テロリストならテロリストなりの考えってものがある」
「んな事ぁどうでも良いんだよ、テロリストなんざ自分達が気に入らない事に理由付けて暴れてるだけなんだよ、暴れてぇなら暴れてぇって言や良いんだよ」
 三葉さんの言っているのは正解と言えば正論だ。
 良くテロリストとか『正義』とか『世界の為』だとか言って人を苦しめたり命を奪って『多少の犠牲』とか言ってるけど、所詮それは自分達がやって来た事を無責任に正当化してるだけに過ぎない。
 三葉さんの言う通り『暴れたい』なんて言ったら自分達の言い訳が成り立たない、本当に正義とか世界の為なら誰も苦しめないし犠牲はでないはずだ。
 私は尋ねて見る。
「車に恨みを持つ犯行って言うのはどうなったんですか?」
「その線もダメだったわ。確かに桜星町には自動車事故で家族や知人を失ったって人はけど、みんな堅気の人間よ」
「分かった。犯人は透明人間なんだよ!」
「漫画の見過ぎだ。お前は……」
 不破さんの推理に大神さんがため息を零した。
 でも私も不破さんの言う通りとしか言え無かった。
 姿なき爆弾魔…… 本当にどこかの推理漫画に出てきそうだけど、残念ながらこれは現実だ。
 私も写真を手に取った。
 トラックや軽自動車など車種、色やナンバーにだって何の接点も無い、同じだとすれば車だって事だけだ。