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エピソード6,聖夜の爆弾魔



 12月後半。
 巷ではもうクリスマスムードになっていた。
 桜星高校でも5日後の12月24日にはクリスマス・パーティが開かれるので、私達はその準備に追われていた。
 テストが終わってるので授業は午前で終わり、でも私はまだ帰る訳にはいかなかった。
 私は兄貴達の手を借りて学校の入口に立てられたツリーに飾りつけをしていた。
 1年間倉庫にバラバラで仕舞われていた蜘蛛の巣だらけのクリスマスツリーを引っ張り出し、丸一日がかりで掃除すると手分けして飾りつけを行った。 
「いやぁ、久しぶりだな、2年ぶりのクリスマスだぜ」
 梯子に乗りながら兄貴は嬉しそうに言った。
 そんな兄貴に私は言い返した。
「今更喜ぶようなイベントじゃないでしょう、ホントいつまで経っても子供何だから……」
「おいおい、お前将来の夢『サンタさんになる』じゃなかったのかよ」
「い、いつの話ししてんのよ! 昔の話でしょうっ!」
「別にいいじゃねぇか、『私、皆の夢を配るサンタさんになる』ってビニール袋肩にかけて真似してただろ…… 舞ならミニスカサンタでオレの夢と希望を運んでくれる立派なサンタに……」
「バ、バカ兄貴〜〜っ!」
 私は梯子の足元を蹴り倒した。
 すると兄貴はバランスを崩して地面に転がり落ちた。
「痛って〜〜」
 兄貴は頭を抑えながら転がりまわった。
 すると不破さんが不機嫌そうに言って来た。
「でも何で寒い日にやんのかね? もっと暖かい日にやれば良いじゃん」
 不破さんが口を尖らせた。
 それはイエス・キリストがその日に生まれたのだから仕方が無い。
 南半球は季節が逆だから夏に行われるのだが生憎こっちは北半球、寒いのが苦手な不破さんにとっては憂鬱なんだろう。
 すると飾りつけをしていた大神さんが言って来た。
「地球にも似たようなイベントがあるんだな、ちっとも知らなかった」
「ヴォルフ星にもあるんですか?」
 ちょっと意外だった。
 ヴォルフ星は雪と氷に閉ざされた惑星で、大神さん達は戦闘民族だからこう言ったイベントは無縁だと思ってた。
 すると大神さんが説明して来た。
「ヴォルフ星ではこの時期になると各部族の戦士達が己の力の限りを尽くして戦い合う、血が吹き出ようが骨が砕けようが最後の1人になるまで……」
「地球じゃそんな事しません!」
 聖夜にスプラッタなんて見たくない。
 ある意味祭りではあるけど、そんな祭りは御免被る。
 すると兄貴が上半身を起こしながら頭を掻いた。
「んにしても…… サイモンは今日もサボりか? ツリーの飾りつけ手伝えって言ってあったのによ」
「って言うか部屋にもいないよ、ずっとラボに引きこもりみたいだし」
「何してるのかしら?」
 私は首を傾げた。
 すると大神さんが言って来た。
「サイモンは自分用のセイヴァー・アームズを作っているらしい、だが思い通りに行かないみたいだ」
「スランプかよ、珍しい」
「ハッ、どうせ自分に都合の良いように作ってんだよ」
 まだ根に持ってたのかこの人……
 不破さんは両手を上げながら吐き捨てた。
 何せこの人は以前セイヴァー・ギアで酷い目にあったからな……

 翌日。
 パーティまで後4日、今日は兄貴と買い物に来た。
 ケーキやジュースなどは商店街に注文してあるので当日に持って来て貰う事になっている、ただパーティに使うクラッカーやキャンドルは駅前のデパートに注文してあったのでそれを受け取りに来た。
「おいおい、こう言ったのって教師がやるんじゃねぇのか?」
「先生方も忙しいのよ、来年受験があるじゃない」
 私は言う。
 考えて見るとあと2ヶ月しかない。
 先生方も受験の準備に全力を出したいんだろう。
「だから私達が任されてるのよ、それに私もみんなの役に立てるならそれで良いわよ」
「へぇ……」
「何よ?」
 突然目を細めた兄貴に私は聞いた。
「お前変わったな、少し前まで他人ごとに興味なかっただろ」
「……誰の責よ」
「え、何か言ったか?」
「別に…… それより行くわよ」
 私は口ごもりながら歩き出した。

 デパートを出た瞬間だった。
「なぁ、まだ早いんだし、折角だから茶ぁして行こうぜ」
「ダメよ、早く帰らないと」
「別に良いじゃねぇか、寒いんだし…… 久々に2人きりになれたんだしさぁ、お兄ちゃんとデートを……」
「アンタね、いい加減に……」
 私はまたぶん殴ってやろうかと思った。
 だけどその瞬間だった。
 突然何かが爆発する音が聞こえた。
「きゃあっ?」
 鼓膜が痺れるほどの巨大な轟音に私達は思わず身を強張らせた。
 周囲の人達も騒ぎ始めて周囲を見回した。
「な、何だぁ?」
「兄さん、あそこっ!」
 私は空に黒雲が舞っていた。
 
 駆け付けてみるとそこは駐車場で、1台の乗用車が炎上していた。
 幸い敷地は広く、他の車やオートバイは距離を置いて停まっていた為に引火する事がなかった。
「事故…… いや、違うみたいだな」
 兄貴は車を見ながら言った。
 車はきちんと区切られた白線の中で停止していて動いた形跡は無い、ましてここは駐車場、車に引火するような火器なんかどこにもない。
 仮にあったとしてもガソリン漏れでも無い限り車が爆発するなんて相当な火力が必要になる、つまり……
「爆弾?」
 そうとしか考えられなかった。
 こんな町のど真ん中で爆弾なんて穏やかじゃ無かった。
 しかもそれだけじゃ無かった。
『タクミ、火薬の反応が地球の物じゃ無い』
「ああ、確かにな」
 兄貴は顔を顰めた。
 改造人間の兄貴の鼻は火薬と毒薬の臭いに敏感で、地球製の火薬じゃない事を嗅ぎつけていた。