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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 バイスはゆっくりと歩きながらオレ達を横切り、ザックの数メートル前で止まった。
『何だお前か、何しに気やがった?』
 ザックは忌々しそうにバイスの方に振り返った。
 するとバイスは言った。
「決まっている、貴様を倒す」
『おいおい、勘違いしてねぇか? こいつは自分から進んで命を差し出そうとしたんだぜ、お前の出る幕じゃねぇ、とっとと帰りな!』
「……殆ど脅迫じゃねぇか」
 胸糞悪い野郎だ。
 バイスが見ると花梨さんは一瞬目を背けるが言って来た。
「そうです、私が言ったんです、貴方だってヴォルフ星人でしょう? なら守って貰う筋合いは……」
「構いませんよ」
「えっ?」
 バイスが言うと数秒の間が空いた。
 するとバイスは誰にも見せた事の無い顔になって言って来た。
「オレは言い訳はしない、フィーラ星人がヴォルフ星人に虐殺された。それは紛れもない事実…… だがオレはオレです。オレはオレらしく、貴女やその子達を守ります」
 バイスが笑った。
 正直これはオレ達も驚いた。
 こいつが笑う所なんてサイモンと一緒にいる時くらいだった。
 オレ達が呆気にとられているとザックが大声を立てて笑いやがった。
『ギャハハハっ! 笑わせてくれるぜ、やっぱバカは死ななきゃ分からねぇみてぇだな!』
 ザックは臨戦態勢に入った。
 だがバイスは鋭い眼光をザックにぶつけながら叫んだ。
「二度と彼女には…… 触れさせん!」
 バイスは本当の姿になった。
 全身青い毛むくじゃらの狼男、それがバイスだった。
 その姿を見て花梨さんは怯え、子供達も泣きだした。
「お、お兄ちゃんがぁ……」
「うぇええんっ!」
 子供とは言え正直腹が立った。
 バイスは敵じゃ無い。
 状況が状況だけに仕方ないとは言えやるせなかった。
『まずはテメェから血祭りだ!』
「黙れっ!」
 2人のヴォルフ星人が視界から消えた。
 途端草むらや土手が爆弾でも爆発したかのように弾け飛んだ。
 これは目で見えないほどの超高速移動で攻防を繰り返した後だった。

 超高速世界でバイスはザックと戦っていた。
 その為に周囲の声も音も聞こえず、ゆっくり動いているように見えていた。
 バイスの拳がザックを捕えるとザックは首を曲げて回避、代わりに膝を上げて攻撃するがバイスも身を翻して交わし、左手の裏拳を放つがこれも読まれていてザックに防がれた。
『くっ!』
 最早バイスに迷いは無かった。
 迷いは決断力を鈍らせ、やがては戦いの妨げとなる、前回バイスが負けた理由はそれだった。
 しかし今のバイスはまるで別人だった。
 バイスの右正拳を払った瞬間、自分の右手が震えた。
『バ、バカな…… オレがっ?』
 それは怯えだった。
 バイスの変貌ぶりに自らの本能が危険と判断したからだった。

 2人両足を蹴りながらジャンプ、拳や蹴りが激しく交差する空中戦の最中、ザックはバイスに言って来た。
『ま、待てバイス! 良い話がある!』
「良い話っ?」
 2人は戦いながら話した。
『ああ、そうだ。どうせお前もヴォルフ星人だ。お前が守っている連中はお前を嫌ってる…… そこでどうだ? オレと手を組まねぇか? 分け前はお前の方が多くて……』
「ふざけるなっ!」
 今の言葉がバイスの怒りに火を点けた。
 鋭い目をさらに吊り上げると渾身の正拳を突き放った。
『グハっ!』
 ザックは地面に落ちた。
 河原を激しく砕くと口から血を吐きながら自分の数メートル前に着地したバイスを睨みつけた。
『テ、テメェ……』
「俺は誰に嫌われようと構わん、俺は仲間の為に…… いや、守りたい者の為に戦う、それだけだ!」
『バカな! それで一体何の得がある?』
「得などいらんっ! 俺は自分のやりたいようにやる、それだけだ!」
 バイスは左腕のファングをかざして叫んだ。
「セイヴァー・ギア、オンッ!」
 バイスの叫びと供にファングが光を放った。
 そして装着されたのは緑に輝くセイヴァー・ギアだった。
 どちらかと言えばファーランと同じ機動力重視だろうが、こっちの方がかなり軽装だった。
 鼻から下はがら空きだが、緑のゴーグルの付いた耳まで覆うヘルメット、ガッチリと胸部を覆う菱形の水晶体が取り付けられたショルダー付きのプロテクター、両手には甲と肘に緑の水晶体が取り付けられたガンレット、セイヴァー・エージェントの紋章が入ったバックルのベルトの左右の腿には緑の縁取りのプレートが幾つも重なったパーツが取り付けられ、膝に緑の水晶が取り付けられた白いブーツが装着された。
「ありがたく使わせてもらうぞ、親友っ!」
「ああっ、やってやれ親友っ!」
 サイモンは痛みに変えながら立ち上がり苦笑した。
 バイスも口の端を上げて鼻で笑うとザックを睨みつけた。
 ザックは懐に手を伸ばした。
『クソっ!』
 取り出したのはレーザー銃だった。
 両手で構えてバイス目がけて引き金を引くと圧縮されたレーザーが放たれた。
 しかしバイスのゴーグルにはレーザーの起動が瞬時に計算され、瞬時にバイスの全身の緑の水晶体が光り輝くと周囲に小さな八角形の緑のバリアが現れて攻撃を防いだ。
『な、何っ?』
 ザックは目を見開いた。
 バイスはそのまま顎を引くと大地を蹴って走りだした。
『このっ! このぉおっ!』
 ザックはさらに引き金を引き続ける。
 無数のレーザーがバイスに放たれる。
 しかしバイスへの攻撃は全てバリアが防いでいた。
 バイスの弱点は打たれ弱い所だった。
 地球のハンドガン程度なら大丈夫らしいが、ファーランみたいにナパーム食らっても無事って訳じゃ無い。
 だが異星人の持つ武器は地球より強力だ。あのレーザー銃だってまともに当たればバイスの体を貫通するだろうが、その心配はきれいさっぱり無くなった。