SAⅤIOR・AGENTⅡ
だがそんなのは想定内、隙を狙ってファーランが飛び出してジャンプ、オレの肩を蹴って二段ジャンプ、弧を描きながら両肩からエネルギーを噴きだしたファーランがトンファーを構えて突っ込んだ。
「りゃああっ!」
『ぐはぁ!』
とっさに籠手付きの両手で防いだつもりだがこいつのパワーは防いだぐらいじゃどうにもならない。
着地の瞬間を攻撃されたモンだから足の踏ん張りがあまり効かず、両手の得物が破壊されて勢いよく吹き飛ばされて地面に転がった。
『ぐっ!』
こいつには弱点があった。
それはパワーだけならこちらが上と言う事だった。
身動きが取れない空中では奴がいくら早く動けても意味が無い、そこを狙って1番攻撃力のあるファーランの一撃を食らわせればアウトだと言う事だった。
勿論これはオレがやっても構わなかったんだが、作戦の成功を考えるとファーランが適任だった。
だがそれでも骨折は免れたらしい。
両手で体を起こして立ち上がろうとする。
だがそんな事を許すオレ達じゃ無い、ザックに近付いて切っ先を向けた。
「ここまでだな」
オレがα・モードにして振り上げた瞬間だった。
『ま、待ってくれ!』
「ああっ?」
オレの手が止まった。
ザックはオレ達に手を付いて頭を下げた。
『俺が悪かった。自首するから許してくれ』
あっけなかった。
しかし見事な土下座としか言いようが無かった。オレが舞にするより綺麗だ。
オレは切っ先を向けて尋ねた。
「本当だな? 自首するんだな?」
『ああ、だからもう良いだろ? だからその物騒なモン仕舞ってくれよ、なぁ?』
上目づかいでオレ達に言って来る。
オレ達はセイヴァー・ギアを解除、ファーランも部分開放を解除した後だった。
だがその瞬間だった。
『バカめ!』
「何っ?」
気づいた時にはもう遅かった。
奴は目を吊り上げると懐から小さなナイフを取り出してオレの腹に突き立てた。
「ぐっ!」
オレの腹部に鈍い痛みが走った。
鈍い光を放つ小さな刃がオレの腹に深々とめり込んだ。
それを引き抜くと真っ赤な血が噴水みたいに吹き出るとオレはその場に膝を付いた。
「タクミっ!」
「っの野郎っ!」
サイモンはザックに向かって銃口を向けた。
しかし刹那の間に背後に回ってナイフを振り下ろした。
サイモンは振り向いた際に左肩から下を切り裂かれた。
「がああっ!」
こいつはダメージを追っても血は出無い、ただし斬られた箇所が破損して、切り口がまるでテレビ画面をまじかで見たような感じになった。
そして最後に狙いを定めたのがファーランだった。
「こいつっ!」
ファーランが部分開放しようとした時だった。
ザックはファーランの周りをグルグル回り始めた。
「えっ? ええっ?」
戦いのセンスはバイス並みだった。
部分開放して戦う事を知った周囲をグルグル回って撹乱させた。
そして大地を一気に蹴りだしてまるで分身の中から飛び出したようにファーランを攻撃した。
「きゃあっ!」
背後を攻撃されたファーランはよろめいた。
だが足を踏ん張り倒れるのを耐え、振り向き様に右手のセイヴァ―・アームズでザックを払うがすでにそこにザックはいなかった。
再び分身の中に飛び出すとまた背後に回って攻撃、それが終わると再び分身の中に飛び込んだ。
戦いのセンスはバイス並みだった。
部分開放時のファーランならナパームを食らったって火傷1つ負いやしない。
だが部分開放前なら話しは別、普通の人間より頑丈ってだけで全く効いて無い訳じゃない。
部分開放や回復させる隙を与えず攻撃を
与え続ければダメージは蓄積されて行く。
「かはっ!」
ファーランはついに倒れた。
ここまで痛めつけられればさすがにちょっ
とやそっとじゃ回復できない。
『そこで大人しくしてな!』
打って変わってザックはオレ達を見下しながら吐き捨てた。
まだ2分も経ってねぇってのに……
スタスタとオレの近くまでやって来た。
『形勢逆転だな!』
ザックは数秒前と打って変わってオレを見下しながら蹴り倒した。
オレは地面に転がった。
「……き、汚たねぇぞ!」
『ハッ、こちとら何人も殺して来てるんだ。今更汚たねぇも何もねぇんだよ!』
正直参った。
こいつはバイスと違い卑怯な戦いに何の未練も無かった。
相手が弱ければ一方的、少しでも勝ちの見込みが薄くなれば白旗を上げるふりをして攻撃、見下げ果てた野郎だ。
オレの傷は結構深い、このくらいの傷なら2〜3分で治る、ファーランやバイスも似たようなモンだった。
『さてと!』
ザックは本命を睨みつけた。
「ひっ!」
花梨さんは両肩をビク付かせる。
「先生恐いっ!」
「うぇえええん!」
園児達まで泣きだした。
ザックはゆっくりと花梨さんの方へ向かった。
『大人しくしてなぁ、ガキ共々をバラバラにしてやっても良いんだぜぇ』
ザックは舌舐めずりに言いよって来る。
花梨さんは最早これまでと観念したんだろう、身を寄せる園児達を払うと前に出た。
「……分かりました。私はどうなっても構いません、ですがこの子達だけは助けてください」
『ハン、良い覚悟だな!』
ザックは口の端を上げて右手の爪を上げた。
その爪が振り下ろされようとした瞬間、何かが風を切って2人の間の地面に突き刺さった。
それはバイスのセイヴァー・アームズだった。
「これは……」
オレ達は振り返る。
そこにいたのは間違いなくバイスだった。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki