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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 その翌日。
「ちょ、何ですかそれはっ!」
 保健室で私は今回の任務の事を聞かされた。
 兄貴達は任務で出払い、保健室には私と塩田さんと大神さんと里中先生がいた。
 大神さんを含めた全てのヴォルフ星人は活動禁止、そんな理不尽な命令に腹を立てた塩田さんが両手で机をたたいた。
「塩田さん、気持ちは分かるけど落ちついて!」
「これが落ちついていられますか! いくら何でもあんまりです!」
 塩田さんは言う。
 すると里中先生はため息を零して答えた。
「そんなの私だって分かってるわ、でもね、フィーラ星人はどうなるの?」
 その言葉にさすがの塩田さんも何も言えなくなった。
 私も兄貴を殺した異星人の同族が私をガードしてくれると言っても我慢できるかどうか分からない。
 そんな事を思っていると塩田さんはベットの上で座っている大神さんを見た。
「大神さんはそれで良いんですか?」
 すると大神さんは目閉じてため息を零した。
「別に…… 命令なら致し方ない」
「ですが……」
 塩田さんが言いかけた瞬間、大神さんは立ち上がった。
 そのまま何も言わず、保健室を出て行った。
 里中先生も私に背を向けるとパソコンを弾き始めた。
「貴女達も早く戻りなさい、休み時間が終わるわよ」
「里中先生……」
「ああ、そうそう、バイスに『活動禁止中は何をしようと勝ってだ』って言っておいてくれないかしら、もし気晴らしに散歩に出て偶然異星人犯罪者と出くわして戦闘になったとしても問題は無いって」
「先生っ!」
 塩田さんは分かってないみたいだった。
 でも私には言葉の意味は分かっていた。
「塩田さん、行きましょう」
「え、白金さんっ! そんな事……」
「里中先生、失礼しました!」
 私は塩田さんの腕をつかむと一礼して保健室を出て行った。
 この時里中先生が微笑している事に気づいた。

 私のブレスで大神さんの居場所も調べる事が出来る。
 念じるとそこにこの学校が立体映像で映し出され、大神さんの居場所が赤く点滅した。
 どうやら教室に戻っているらしい、それを確認すると私達は後を追いかけた。
「大神さんっ!」
 4組の教室に入ろうとしていた大神さんを私達は呼び止めた。
 
 私達は誰もいない廊下の踊り場までやって来て里中先生からの言いつけを離した。
「そうか……」
「でしょう、そう言う事なら……」
「だが断る」
「どうしてですか?」
「俺の命令はあくまでも待機だ。戦闘に出る事はできん」
「ですから、任務はあくまでもチンピラ退治で……」
「いくら言い方を変えても駄目だ。命令違反は出来ん」
 大神さんは首を横に振った。
 この人はこの人で面倒すぎる。
 不破さんは子供のワガママみたいなモンだけど、大神さんの場合は固すぎる。
 兄貴は頭の中まで筋肉だっていうけど、本当に脳ミソまでガチガチになってるんじゃないかと思いたいほどだ。
「大神さん、オメガの時はどうなるんですか? 私が殺されそうになった時、御剣さん達と一緒に助けてくれたじゃないですか!」
「………」
 大神さんは私達から目を向けた。
 この人だって本当は駆け付けたいんだ。
 オメガの時は結果的に上手く行っただけに過ぎない、誘拐された塩田さんを助けて戦闘になり、偶然セイヴァー・エージェント達が狙われてる事を知り戦っただけだ。
 今回も人の命がかかってるとは言え、勝った所で何も得る物は無い、フィーラ星人がヴォルフ星人に襲われたのは紛れもない事実だ。
 大神さんが彼女を気にかけているのも個人的な理由だ。決定的な理由にはならない。
 だけど……
「無理…… してませんか?」
 私は尋ねた。
 すると大神さんは鋭い瞳で見て来た。
「何?」
「大神さん、無理してるんじゃないんですか?」
 大神さんはただでさえ顔が恐い、でも私は負けじと見つめ返した。
「それで大神さんは納得できるんですか? 絶対構わないって言うんですか?」
「俺の事等問題じゃない、命令は命令で……」
「そんなの関係ありません!」
 私は叫んだ。
 命令は大事だし、協力者の私が言うのも筋違いだって事は分かってる。
 だけど言わずにはいられなかった。
「私、この数ヶ月色々ありました。でも知ったんです。この世に絶対正しい事なんてのは存在しない…… 1番大事なのは自分が後悔しない様に生きる事だって…… それを教えてくれたのは兄さん達や大神さん達です」
「………」
「大神さん、ここから先をどうするかは大神さん次第です。ですが今のままじゃ大神さん、絶対後悔しますよ、それで良いんですか?」
 私は言い切った。
 もちろんこの言葉にも後悔は無い。
 すると大神さんはため息を零しながら言って来た。
「本当に兄が兄なら妹も妹だな…… お節介な所は同じだ」
「なっ、そ、そんな訳……」
 私が兄貴に似てるなんてマジで嬉しくない。
 そんなんならマウンテン・ゴリラやダンゴ虫と比べられた方がまだマシだ。
「だが、感謝する。おかげで気持ちの整理はついた」
 何と大神さんが口の端を上げた。
 この人が笑う所なんて三葉さんといる時くらいな物だ。
 そして私から預かり物を受け取ると私達に背を向けながら去り、そのまま手を振った。