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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 私達はそこに行ってみる。
 何とそこではタンクローリーが横転していた。
 でもそれだけじゃ無かった。
 目の前には1人の男が立っていた。
 40代半ば、2メートルは軽く超える黒い髪のオールバックでがっちりした体格の、黒いシャツとジャケットとパンツと膝まであるブーツの大男はタンクローリーに近付いた。
 男は車の上に飛び乗ると這い出て来た運転手の胸倉を右手でつかむと信じられない力で男を持ち上げ、空に向かって放り投げた。
「うわあああっ!」
 悲鳴を上げながら空を飛ぶ運転手。
 不破さんが跳びあがると彼を抱きかかえ着地、気を失った彼をアスファルトに寝かせると車の方を見た。
「ちょっとアンタ、何してんのよ?」
 不破さんが男を見る。
 すると男は不破さんを見すと言って来た。
「何だテメェは? 邪魔だ。引っ込んでな」
「そうもいかないわよ、こんなひどい事をしてタダで済むと思ってんの?」
 不破さんはビシッと右手の人差し指を向ける。
 すると男はクスクスと笑いながら車から降りるとゴキゴキと首を回して不破さんを睨みつけた。
「聞き訳のねぇガキは嫌いだぜ、お仕置きが必要だな」
 男が大きく目を見開いた。
 途端全身の皮膚の色が赤黒く変色すると亀裂が入って鱗の肌となり、口が耳元まで裂け、両腕と両足が肥大化してきている衣服の肩と膝から下の部分が千切れ飛び、履いているブーツの爪先を突き破って鋭い爪が飛び出した。
『ガアアアアっ!』
 異星人は巨大な足でアスファルトに足跡を残しながら不破さんに向かって突進し、握った拳を振り下ろした。
 不破さんはこれを後ろに跳んで交わすが、不破さんのいた場所は大きく砕けた。
「何よ、それくらい!」
 不破さんは身構えると部分開放をする。
 鬼灯色の瞳が爬虫類のようになると両手足が肥大化し、皮膚が深緑色の鱗の肌になった。
 不破さんと異星人は互いに間合いを詰めると互いの両手を合わせて力押しを始めた。 
『グゥウ?』
 異星人は顔を顰める。
 相手の腕力は凄い、でも不破さんの方が上だった。
 ジリジリと異星人の足が後ろに下がと不破さんは渾身の力を込めて異星人を付き離すと腹部に即刀蹴りを放った。
「はああっ!」
『があああっ!』
 異星人は腹部を抑えながらよろけた。
 するとロンが不破さんに言って来た。
『お嬢、こいつはザウル星人、ディラン・ダイスト…… 連続強盗殺人で指名手配されているわ』
「分かった!」
 不破さんはロンからセイヴァ―・アームズを転送してもらう。
 一方ディランは不破さんを睨みつけながら歯を食いしばった。
『クソっ!』
 ディランは不破さんに背を向けるとタンクローリーまでやって来た。
 そして右手でタンク部分を貫くと空いた穴からガソリンがもれ出した。
 するとディランは大きく口を開けると事もあろうにガソリンを飲み始めた。
 相手は異星人何だし、何を飲もうと食べようと驚きはしない、だがその後起こった事に私は驚いた。
『グオオオオっ!』
 ディランは大きく咆えた。
 途端元々大きかったディランの体がさらに膨れ上がった。
「なっ?」
 私達は驚いた。
 するとディランの姿が一瞬消えたかと思うと次の瞬間、不破さんの前に現れた。
 そして不破さんの顔面を拳で殴り飛ばした。
「うああっ!」
 不破さんはまるでゴム毬のように飛ばされると電柱に激突した。
 電柱は砕かれ、電線が千切れて火花を散らしながら不破さんと供に地面に落ちる、攻撃はそれだけじゃ終わらなかった。
 ディランは不破さんの細い首をつかんで持ち上げるとアスファルトに叩きつけた。
「かはあっ!」
 不破さんは口から血を吹きだした。
 部分開放した不破さんがまるで赤子扱いだった。
 私はブレスで兄貴達を呼んだ。
「兄さん! 不破さんが大変なの、今すぐ来て!」
 私は不破さんを見た。
 不破さんはまるでサンドバック状態だった。
 殴られて蹴られて投げ飛ばされる、見てるこっちが痛かった。
 しかも最悪な事はまだ続く、タンクローリーから流れ出したガソリンに電線の火花に引火しようとしていた。
「不破さんっ!」
 私は叫んだが時すでに遅し、ガソリンに火が点くとタンクローリーは爆発した。
 爆音とどろく中、不破さんが私の方に吹き飛んで来た。
「しっかりして、不破さんっ!」
 私は不破さんの体を揺する。
 幸い意識はあり、両手に力を入れて立ち上がろうとする。
 一方ディランも爆煙の中から立ち上がるとギラついた目を私達に向けた。
「ひっ?」
 蛇に睨まれた蛙…… いや、この場合は恐竜に睨まれたと言った方が正しいだろう。
 私は震えてその場から動く事が出来なかった。
 一歩、また一歩と近づいて来るディラン、すると天の助けと言うべきだろう、ディランの頭上に兄貴が現れた。
「はっ!」
 テレポートで突然目の前に現れた兄貴はそのままディランの頭部を蹴り飛ばした。
『グゥ?』
 ディランは顔を顰める。
 さすがにパワーアップしても生物にとって頭は最大の弱点だ。
 ただ不破さんほどの威力は無く、痛みはあってもそれほどのダメージは与えられなかった。
 邪魔されたディランは兄貴を睨みつけた。
『何だ。テメェは?』
 しかしやって来たのは兄貴だけじゃ無かった。
 足元に火花が飛ぶとディランは後ろにたじろいだ。
 見るとそこにいたのはセイヴァ―・アームズを構えた三葉さんと大神さんだった。
「何とか間に合ったな」
「大丈夫か?」
 2人は私達に近付いた。
 気が削がれたディランは舌打ちをすると大きく息を吸うと裂けた口から紅蓮の火球を足元に放った。
 とっさに兄貴はテレポートで後ろに下がって無事だったが、そこにはディランの姿は無かった。
 どうやら逃走したようだった。
 だけど……