SAⅤIOR・AGENTⅡ
周囲に人の気配がいなくなるのを確認すると部分開放したファーランが空を飛び、バイスも民家の屋根に飛び移り、サイモンはデータ化して電線に入り込んだ。
残念ながらオレは空を飛ぶ事もデータ化する事も出来ない、気に食わないがバイスと同じフリーランニングで現場へ急いだ。
現場は数メートル離れた場所にあるビルの屋上だった。
現場に到着がすでに物気の空だった。そりゃ狙撃者がいつまでも同じ場所にいる訳が無い、失敗したなら逃げるのが得策だ。
「こざかしい」
バイスは吐き捨てながら周囲を見渡した。
幸い大して時間は経っていない、この前のブタ野郎かテレポートでも使えない限りバイスから逃げる事が出来ない。
「車だ!」
バイスは目を見開いた。
オレ達も白い乗用車が走って行くのが見えた。
ただ走るだけなら良い、だがバイスの嗅覚はこの場所にいた者と狙撃に使った火薬の匂いを捕えた。
地球製の火薬ではない匂いが車からしているらしい。
オレ達は標的を車に変えて再び移動した。ファーランが車の前に止まって怪力で車を止める。
車の後部が一旦浮き上がると地面に叩きつけられて動かなくなる。
「出ろ!」
オレはフロントガラスを覗きこむ。
そこにいたのは黒いコートとニット帽を被った30過ぎのおっさんだった。
オレはギルを突きだすと一筋の光線が放たれておっさんの全身を包み込む、これはギルの能力の1つで、一言で言うなら異星人か地球人かを調べる事が出来ると言う物だった。
結果こいつは異星人だ。後部座席には大きなトランクケースがあった。恐らく狙撃につかった武器が締まってあるんだろう。
「殺人の現行犯で逮捕だ!」
相手が異星人なら遠慮はいらねぇ。
オレは力づくで扉をこじ開けて犯人を引きずり出す。
するとその時だ。千鶴ちゃんから連絡が入った。
「あ、チヅルちゃん? 今犯人捕まえたぜ、こいつだ!」
オレはギルを通して映像を千鶴ちゃんに送った。
これで終わった。後はこの野郎をゼルベリオスに転送すれば終わりだった。
だが……
『タクミ君、残念だけどそいつもハズレよ、誘拐犯同様に雇われた殺し屋だわ』
「えっ?」
「どう言う事、チヅルちゃん?」
『タクミ君の推理は当たってたわ、そしてそいつは地球に来ている』
千鶴ちゃんは言って来た。
オレ達が保健室から出た後、チヅルちゃんは宇宙警備団体に連絡を入れて調査をしてくれた。
犯人はヴィア星人ベイジャー・リー、早川さん兄弟が起こした事故に巻き込まれて生き残った子供だった。
そいつは50年前に意識を取り戻して病院を退院している、恐らくその後事件の真相を調べ上げて早川さん達の存在を知ったんだろう。
その後は復讐の為に生きて金を稼ぎ、人を雇って地球に送り込んだ。そんなところだろう。
「そいつのいる場所は分かるのか?」
『いえ、それはまだ…… だけど奴は地球に潜り込んでいるわ、恐らく近くにいるはずよ』
「近くって言ったって……」
オレは舌打ちをする。
そんなの分かる訳がねぇ、桜星町に何人異星人が住んでると思ってんだ?
『ヴィア星人は自らの姿を変える能力は持っていないわ、つい最近になって地球滞在名簿を本部から転送してもらったから確認して』
無線が切れると千鶴ちゃんが送ってくれた地球人に変身した異星人達の名簿が映し出された。
今月だけで桜星町に移り住んだ異星人は20人以上、地球に来たのも入れれば1000人以上もいる、だけど1人1人調べて行く時間なんて無い。
「多すぎだよ!」
「この中に犯人が……」
「くっそ…… 何とかならねぇのか?」
オレは頭を掻いた。
すると自分のセイヴァ―・アームズで殺し屋を転送したサイモンが言って来た。
「方法ならあるぜ」
「マジか?」
「ああ、とっておきの…… な!」
サイモンは不敵に笑った。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki