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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 里中先生が兄貴に連絡を入れてから数分後。
 保健室の扉を開いて兄貴が入って来た。
「チヅルちゃん、さっき言った事ホントなの?」
『ええ、しかも遺体の発見された場所は第18銀河のフォルドン星、しかも死後2ヶ月は経過しているそうよ』
「それは班長、地球に来てすらいなかったという事ですか?」
「じゃあ何か? 幽霊が誘拐頼んだってのか?」
 三葉さんは言う、そんなバカな。
 幽霊が頼みごと何て出来る訳が無い、考えられる理由があるとすれば林太郎君を攫うように頼んだ人間は別にいるって事になる。
「兄の方は出所後も悪事を働いていた。となるとそれがらみの連中か?」
「そりゃ無いだろ、バカ兄貴のやった事件の殆どが酒に酔った上での暴力かカツアゲだぜ、その程度で一々地球まで来るか?」
 三葉さんは首を傾げる。
 確かに動機としては弱すぎる。
 復讐って言うのは強い憎しみから来る物だ。
 酔った勢いで怪我をさせて一生消えない傷を付けられたのなら加害者を殺す理由になるが、それで遺族の方にまで仕返しに来るとは思えない。
「くそ、何が何だか……」
 兄貴は頭を抑えた。
 私も分からなかった。
 考えてみれば今までの事件が単純すぎたのかもしれない。
 強盗や誘拐や逃亡、はたまた地球壊滅を狙う色々な異星人犯罪者はいたけど、今回はどうも。
「もしかして早川さんが強盗してた頃とか? それなら可能性あるんじゃない?」
「強盗っても…… あっ!」
 不破さんの言葉に兄貴は目を見開くと里中先生を見た。
「千鶴ちゃん、確か早川さんは最後の事件で事故が起こったよな?」
「ええ、資料にはそう書いてあるわね、車で逃走中に反対側から来た車と事故を起こしたって……」
「その事件で乗っていた家族の内両親は死亡、子供は助かったが昏睡状態。もしかしてその子供が目覚めたとしたら?」
「あっ!」
「調べてみましょう、皆はいつでも出撃できるように基地で待機してて」
「「「「了解!」」」」
 里中先生はスマホを手に取ると兄貴達は立ち上がった。

 私達は教室を出た。
 昇降口の下駄箱の所で靴を履き替えてる時だった。
「兄さん」
「何だ?」
「……罪って、やっぱり消えないのかな?」
「何だよ、突然?」
 兄貴は首を傾げた。
 私は考えた。
 犯罪は許されない事だ。
 しかし罪を償った者は被害者達から永遠に恨まれ憎み続けられる、自業自得とは言え悲し過ぎる。
「仕方ねぇよ、早川さんはそれだけの事をやったって事だ。罪を犯した者が後ろ指差されるなんてよくある事だ」
「だけど……」
「勿論だからって何をしても良い訳じゃない、勿論林太郎が憎まれるなんて筋違いだ」
「そうだよ、いくら恨んでても復讐して良い権利なんて誰にもないよ」
 自分のクラスの下駄箱から靴を履き替えた不破さん達が私達の前に姿を見せた。
「殺したから殺し返したなど、良い訳にもならん、新たな憎しみを生み出すだけだ」
「もしそうなったらオレ様が直接ぶっ殺してやるよ、あのおっさんの受けた苦しみの数百倍の苦しみを味あわせた上でな」
「勝手に殺してんじゃねぇよ! オレ達が守んだろ」
 縁起でもない事を言う三葉さんに兄貴は叫んだ。
 そして昇降口を潜って校庭を横切り、校門に差しかかった辺りだった。
「ん?」
 突然大神さんが足を止めた。
「どうした?」
「非常サイレンの音が聞こえる」
「えっ? そう? アタシは聞こえないよ」
「いや、こっちからだ」
「えっ、こっちって……」
 兄貴は顔を顰める。
 大神さんが指を差した方向、そっちは小学校がある方角だった。
 大神さんも不破さん達同様に地球人の身体能力を合わせて変身しているが、それでも聴力と視力、特に嗅覚は常人の数倍を誇っているらしい。
「……まさか!」
 兄貴は大神さんの示した方向に向かって走って行った。

 私達も後を追いかけた。
 だけど皆足早すぎ、あっという間に見えなくなった。
 きっと皆は私が足遅すぎだって言うだろうけど、生憎私は普通の人間だ。改造人間の兄貴や異星人の不破さん達とは違う。
「はぁ…… はぁ……」
 私は息を切らしながら兄貴達に追いついた。
 案の定そこは林太郎君の小学校で、近所の人達が集まっていた。
 校庭では全校生徒である子供達が座り、教師達が点呼を取っている。
「何かあったの?」
 私は兄貴に尋ねる。
「ああ、悪戯みたいだぜ」
「悪戯?」
 私は首を傾げる。
 何でも授業の最中に突然非常ベルが鳴りだしたらしく、全校生徒はグラウンドに避難したと言う。
 幸い教師達が校内を調べたが何の異常は見られず、消防車は呼ばれないらしい。
「ったく、人騒がせな…… どうなってんのかねぇ、地球の学校のセキュリティは?」
 三葉さんは舌打ちしながら愚痴る。
 だけど悪戯ならそれで良い、誰も怪我をしないに越した事は無いからだ。
(でも誰が?)
 そんな事を考えていると、校庭の方では林太郎君の名前が呼ばれた。
「早川林太郎君」
「はい」
 林太郎君は元気良く立ち上がった。
 するとその時だった。
「ムッ?」
 大神さんは何かに反応すると自分の荷物を放り投げた。
 すると大神さんの荷物に穴が空いてアスファルトに落ちた。
 普通バックなら落ちても音などしないだろう、しかし何が入っているのか分からないがアスファルトに落ちるなりズシンと言う音が耳に入った。
「何だ何だ?」
 突然の音に周囲の人達が騒ぎ始めた。
(お前、何入てんだよ?)
(戦闘派たるもの常に鍛えておかねばならん、50センチの鉄板を……)
(そんな事より今のは!)
 明らかに狙撃だった。
 点呼で起立した瞬間を狙って林太郎君を殺すつもりだった。
 多分非常ベルもこれを狙っての事だ。
「こっちだ!」
 大神さんが走り出すと兄貴達も後を追った。