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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 週が明けてから数日経った。
 兄貴は今日も来なかった。
 あの後直ぐセイヴァー・ベースにいる私達に『林太郎を守らなきゃいけなくなった』と言ったまま戻って来なかった。
 それからしばらく経って班長会議から戻って来た里中先生に事情を話した。
 里中先生は直ぐに探索派のセイヴァー・エージェントに連絡し、容疑者である早川さんのお兄さんの行方の調査と早川さん一家の護衛を依頼した。
 しかし兄貴は戻って来なかった。
「本当に面倒ね、貴女のお兄さん」
「……すみません」
 苦笑する里中先生に私は頭を下げた。
 兄貴は探索派のセイヴァー・エージェントが早川さん達を護衛すると決まった途端、林太郎君だけは自分が守りたいと里中先生に願い出たらしい。
 何で私があのバカの為に謝らなきゃいけないのか分からなかった。
 帰って来たら絶対ぶっ飛ばしてやる。
「落ち付いてマイ、タクミは子供が好きなだけなんだから」
 不破さんは私の心の内を悟ったのか、席を立ちながら言って来た。
 今日は午後から教師達の勉強会(保険医である里中先生は関係無いので参加しなくても良い)と言う事もあり、授業は午前で終了した。
 私も最初は帰ろうとしたのだが、不破さん達が保健室に入っているのを見かけたので、事件に何か進展があったのではないかと思って保健室を訪れた。
「一応戦闘派も尾行術や隠密行動の訓練は受けている、ヘマをする事は無いだろう」
「ま、何かあればオレ様達も駆け付けるから問題はねぇよ」
 問題があったら困るでしょうに……
 出来ればこのまま何も起こらないで欲しいのが正直な意見だ。
「さっき探索派から連絡があって、早川さんのお兄さん、グリズ・べシルの行方はまだ分かって無いそうよ」
「まだなの? 随分遅いね」
「地球に来ているならすでに居場所が割れても良いはずだが……」
「探索派の連中、サボって遊んでんじゃねぇのか?」
「普段授業サボってるお前が言うか?」
 大神さんは三葉さんに向かって眉間に皺を寄せた。
 三葉さんはそんな皮肉など何とも思わない様に両手を上げた。
 しかし私はどうも腑に落ちない事があった。
「……でも本当にただの脅迫なのかしら?」
「どう言う事?」
「いや、脅迫が目的なら人を使って誘拐するなんて回りくどい真似するのかなって……」
 ずっと引っかかっていた。
 大体グリズ・べシルはお金に困っていた。そんな人間がどうやって人を雇える?
 それを話すと皆顔を強張らせた。
「つまり早川氏の兄が犯人じゃないと言いたいのか? シロガネ・マイ」
「そ、そうとは言ってないですよ、タダの私の勘ですよ」
 私は両手を振った。
「だけど言われてみればその通りね、少しグリズの経歴を探る必要があるわ」
 里中先生はそう言いながらスマホを手に取ろうとした瞬間だった。
 突然パソコンの隣に置いてあったスマホが鳴り響いた。
「丁度良かったわ、探索派からの連絡よ」
 里中先生は電話に出る。
「ご苦労様です私です、実はこの前頼んでおいたグリズ・べシルの件ですが…… え? 何ですって?」
 里中先生の顔が強張った。
 タダごとじゃ無いと思ったのだろう、不破さん達も立ち上がった。
 やがて連絡を終えた里中先生は息を吐いて一間置くと私を見た。
「妹さん、貴女の勘は当たってたわ」
「えっ? どう言う事ですか?」
「説明は後でするわ…… エンゼル、タクミ君を呼びもどして」
『了解!』
 里中先生は右耳を掻きあげると自分のサポーターであるエンゼルに命令した。
 この時の私はまだ気づいていなかった。
 この事件は単純な事件じゃ無かったと言う事、そして犯罪を犯すと言う事がどれだけ重大な事なのかを……