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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 1日清掃は昼頃に終了する。
 私は昼食に誘われて兄貴達のマンションにやって来た。
 このマンションの地下には三葉さんが(無許可で)作った自分達だけの基地、セイヴァー・ベースがある。
 その一角であるサロンで私達は兄貴から林太郎君が誘拐されそうになった事を聞かされた。
「林太郎君が?」
「何でまた?」
「さぁな……」
 兄貴は首を傾げながら生姜焼き弁当を頬張った。
 でも穏やかじゃ無い、頼まれた事が本当ならば林太郎君には狙われた理由がある。
「オレも聞いたよ、そうしたら早川さんは何も知らないってな…… あ、だが何か怯えてたみたいだったな」
「怯えてた?」
 不破さん達は顔を見合わせた。
「班長に聞けば分かるんだがな、生憎と留守だ」
「肝心な時にいないんだよね」
「サイモンに聞いたらどうだ? あいつなら個人の情報を調べるのに一分も掛らんだろう」
 大神さんは言って来る。
 このセイヴァ―・ベースには三葉さん用のラボがあり、三葉さんは中断していた発明を再開したと言う、何を作ってるのか分からないけど……
 兄貴達が言うには三葉さんは凄いのだがセンスが悪いらしく、前回オメガと戦った時に使用した巨大ロボもとても地球を守る側が使うようなデザインでは無かったと言う。
 すると不破さんが苦笑しながら言って来た。
「また妖しいモン作ってたりしてね」
「あいつ、凄いけどセンス悪いからな」
 兄貴が呆れながら紙コップに入った麦茶を口に含んだ瞬間、サロンの扉が開いた。
「誰がセンス悪いだよ」
 狙っていたかのように三葉さんが現れた。
 突然の事に兄貴は飲んでいた麦茶を思い切り吹き出した。
「ぶふっ!」
「汚ないっ!」
 不破さんは顔をしかめながら吹き出した麦茶が入らないように唐揚げ焼きそば弁当をどけた。
 器官にでも入ったのか、兄貴は咳をしながら三葉さんを見た。
「サイモ…… おま……」
「陰口ならもっと聞こえないように言いな…… それより調べておいたぜ」
 三葉は持っていた書類をテーブルの上に乗せた。
 それは早川悟朗さんに関する資料だった。
「早川悟朗っておっさん、以前強盗殺人で宇宙警備団に送検されてるぜ」
「ええ?」
 不破さんをはじめ皆の顔色が変わる。
 早川悟朗さんの本名はグーマ星人、ボウラ・べシル、実の兄であるグリズ・べシルと供に数多の星で宝石強盗や金庫破りなどをしていたらしい。
 その後、宇宙警備団にお縄になり200年の懲役を得た後、あちこちの惑星を転々とし、地球にやって来たという。
「何故捕まったかって言うと、あのおっさんが自首したかららしい、何でも逃走中に車で事故って民間人を死なせちまったのが原因みたいだぜ」
「罪の重さに耐えきれなくなっての自首と言った所か……」
「物を盗むのと命を奪うのとじゃ罪の重さが違うしね」
 不破さんは言う。
 確かに宝石やお金は大事だし、盗まれた側にとっては迷惑以外の何物でもない、しかし命を奪うと言う行為はどんな理由があろうとも許される事じゃ無い。
「ここからが面白いぜ、おっさんは真面目に働いて堅気になったみたいだが…… 兄貴の方は何度も傷害事件や盗みを働いてムショ送りになってる」 
 ちっとも面白くないと思うのは私だけだろうか?
 だけどその言葉を聞いた時、私は頭の中に犯人像が浮かんだ。
「大方、金でもせびりに来たんじゃないのか? この手の人間はまともに働く気が無い、人の弱みに付け込んで金を巻き上げようってタイプだ」
 大神さんは推理する。
 言われてみれば自分が以前強盗だったなんて言えるはずが無い、人質に取って無理やり言う事を聞かせようとしたんだろう。
 すると俯いていた兄貴は両手をテーブルに叩きつけながら立ち上がった。
「兄さん?」
「ちょっと行って来る、早川さんの所にな……」
「タクミ!」
 不破さんが止めるのも聞かず、兄貴は表に出て行った。