SAⅤIOR・AGENTⅡ
エピソード3,罪と家族
それから半月後。
皆が楽しみにしていた文化祭も無事に終了して直ぐの事だった。
後は期末とクリスマスと冬休みを待つだけとなったある日の事だった。
今日は月に一度の桜星町1日清掃の日だった。
私は桜星町で暮らしてる訳じゃないけど、地域住民との和を大事にしている桜星高校の生徒会として毎月参加していた。勿論兄貴達もだ。
私達はジャージに着替えて公園の前に集まっていた。
「みなさん、今日も1日お願いします」
水城先輩が礼儀正しく頭を下げる。
「こちらこそよろしくお願いします」
大神さんが代表して頭を下げる。
すると後ろで不破さんが大きく欠伸をした。
「ふあぁあ〜、眠い〜」
「お前はゲームのやり過ぎだ」
「ま、今日1日我慢すんだな、オレ様も仕事を中断して来たんだからよ」
「チヅルちゃんは良いよね、こんな時に会議何だからさ」
不破さんは両手をポケットに突っ込みながら口を尖らせた。
何でも里中先生は班長クラスの人間が参加する定例会議に出席する為に富士山麓にある宇宙密偵団体・地球支部本部に行っているらしい。
すると水城先輩が言って来た。
「それでは班分けはいつもと同じ割り振りで……」
「お兄ちゃ〜ん!」
すると1人の男の子がこちらに向かって手を振っていた。
その後ろにはその子の両親だろう、1人の中年の男性と綺麗な女性が立っていた。
「早川さん、おはようございます」
兄貴は挨拶をする。
彼らは先月兄貴のマンションの上の階に越して来た一家で、彼らにとって初めての1日清掃だった。
息子である早川林太郎君は兄貴に近付いて来た。
「お兄ちゃん、一緒にやろう」
「ああ、良いぜ、約束してたしな…… そんな訳ですいません会長、オレ約束ありますんでこっち行きます」
兄貴は苦笑する。
実は昨日、引っ越して来たばかりでこの辺りの事を知らない早川さん達に地理を教えるがてら、林太郎君と一緒に掃除をする約束をしたらしい。
「そうなんですか? 分かりました。班分けは新しくしておきますので行って来てください」
「すいません」
そう言いながら兄貴は林太郎君達と一緒に去って行った。
それからすぐに清掃が始まった。
私達が担当しているのは公園周辺だった。
不破さん達が集めて来た空き缶をスチール缶とアルミ缶に分けている時だった。
「そういえば、あの早川さんって人どんな人なんですか?」
私は不破さん達に訪ねた。
あのマンションは大半が異星人用に建てられた物、つまり彼らも異星人と言う事になる。
「ああ、そうだよ、チヅルちゃんが言ってたぜ」
「仕事の都合で越して来たみたいだが…… 実際は良くは分からん」
「だね、アタシ達関係無いし」
不破さんは両手を上げる。
こう言ったのは探索派である里中先生の管轄で、兄貴を含めた戦闘派のセイヴァー・エージェントには関係が無い事だ。
兄貴達は悪い異星人達と戦うだけで、他の異星人の暮らしには関与しない。
「でも、良い人だよね、アタシにお菓子持ってきてくれたんだし」
この人の場合は餌づけだな……
嬉しそうに頬を緩める不破さんを見て私はそう思った。
すると大神さんが言って来た。
「だがもし問題を起こせば俺達が討伐しかねない、それは事実だ」
「心配ねぇよ親友、オレ様達のシマで悪さするようなバカな真似はしねぇだろ」
三葉さんは言う。
確かに警察の前で犯罪に走るような人間はいない。
そんな事を考えながら私達は作業を続けた。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki