SAⅤIOR・AGENTⅡ
オレが叫ぶとセイヴァー・マシンその物が粒子化され、青いボディのセイヴァー・ギアの上からミクロ化して一体化した。
2つのタイヤが足首に装着され、ヘッド部分が頭部部分と一体化、タンク部分が左右に別れて左右に開くとエンジン部分がミクロ化されて胸のパーツとなり、ハンドル部分が左右に別れてグリップ部分が収納されると膝に装着、マフラーパーツが両腕に装着され、胴体と座席部分となっていたパーツが両足のパーツとなった。
アームズではなく、マシンその物が武器となる……、それが新形態『z・モードだった。
その姿を見た瞬間、アブラムは目を見開いて顔を強張らせた。
『な、何ッ?』
勿論それだけじゃなかった。
レンの方も自分のセイヴァー・アームズの柄同士を合わせると光の刃が2倍ほど伸びて双刃の薙刀となった
準備が整ったところで最終決戦だった。
すると余裕がなくなったのか、アブラムは声を低くしながら言って来た。
『フン、次から次へと、本当に思い通りにならない連中ですね……、それだけの力を持っておきながら目の前の平和を手放すなど勿体無い、何故その力を有効に使おうとしないのですか?』
「はぁ? 何言ってんだ? オレ等はオレ等だけの力だけじゃねぇよ!」
オレは言った。
正直ここまで来れたのはこいつを作ってくれたサイモンのおかげだ。さらにバクマ星人達を足止めしてくれてるファーランやバイスの野郎にも感謝してる、ましてオレ達を信じて送り出してくれた千鶴ちゃんもだ。
最終的にオレ達がここまで来れたのは皆の強力があったからこそだ。オレ達はただ皆の思いを継いだだけだ。
1人でやるには限界がある、きっと平和だってそうだ。本当の平和ってのは誰かが頂点に立って管理する事でも、まして気に入らないからって迫害するモンでも無いってな。
「今回の事で学んだぜ、平和ってのは誰かが頂点に立って管理するモンじゃねぇ、こうやって色んな人間同士の繋りで築き上げてくモンだってな!」
「それが分からない貴様に、平和を語る権利は無い! その野望……、オレ達が打ち砕く!」
レンもオレに賛成して言ってくれた。
アブラムは忌々しそうに吐き捨てた。
『チィ、青臭いセリフを!』
「これで最後だ。行くぜ!」
オレ達は同時に走り出した。
セイヴァー・ギアのおかげでオレの方が速く動ける為、先に仕掛けたのはオレだった。
刀身が大きくなった事で太刀筋はバレバレになったが、それでもリーチと威力の方はオレの方が上だった。
腕よりも頭の方で動くようになった為、相手の性能が分からない以上攻撃に出る訳にはいかなかったのだろう、両手持ちで振りかざしたセイヴァー・アームズを横に飛んで交わした。
『クッ!』
アブラムは舌打をする。
だがオレはこれを呼んでいた。
手首を捻ってアブラムに渾身の力でアブラムを薙ぎ払った。
避ける事が出来なかったアブラムはセイヴァー・アームズを構えてオレの攻撃を受け止めた。
『グアアアッ!』
ギルに跳ね飛ばされた時のダメージが癒えてないアブラムは吹き飛ばされた。
そこへ床に落ちていた瓦礫がフワリと浮かび上がるとアブラムの体に纏わり付いた。
『な、何ィ?』
「掛かったな!」
少し離れた場所でレンが言った。
レンはその場に片膝をついて左掌を床に突きつけていると、その箇所から電流のような物が放たれ、それが瓦礫に吸収されて意のままに操っていた。サイコキネシスだった。
勿論それだけじゃない、レンによって操られた瓦礫がドロドロに溶けて足元まで固まった。
これで奴は逃げる事も戦う事も出来なくなった。必死でもがいて逃げようとしているアブラムに向かってオレ達は身を低くして得物を構えた。
「「α・モードッ!」」
エネルギーを全開にし、セイヴァー・アームズの刃が金色に変わった。
ダメージ+サイコキネシスで動く事が出来なくなったアブラムが言って来た。
『私を検挙するのですか? 確かに貴方の人生を狂わせてしまった事は不運に思います、ですがこれは新たな宇宙の平和を潰す事になるのですよ?』
「ゴチャゴチャうるせぇな! オレの人生とか新しい平和とかどうでも良いんだよ!」
「オレ達はオレ達の大事な人が願っている、今の平和を選ぶだけだ!」
レンも賛同する。
何しろオレもこいつも最終的に行きつく場所は同じだからだ。
ツンデレで寂しがり屋なオレの妹と、その友人である突っ走って目の前が見えなくなる彼女……、オレ達にとってかけがえの無い存在だ。
それを守る為ならオレ達は何でもする、邪魔するなら宇宙その物が敵だ。
オレ達は向かってまずはレンは刃で横薙ぎに払い、オレの大きく振り上げた刃を唐竹から振り下ろした。
「これで!」
「終わりだァァーーーッ!」
2つの刃が×の字に敵を切り裂いた。
『ぐああああぁぁーーーーっ!』
アブラムは斬られた箇所から体が光の粒子となって行った。
『くっ、私を倒したところで無駄だ。お前達の努力は叶わない……、新の平和を選ばなかった事を後悔しろ……、アハハハハ!』
開き直りを通り越して狂気に笑いながら消えて行った。
そして床にはエヴォルが転がった。
それはレンが手を伸ばすとサイコキネシスを使ってエヴォルを回収した。
途端壁や天井などが爆発して船が崩壊し始めていた。
オレはセイヴァー・ギアからギルを分離させた。ギルは元のセイヴァー・マシンに戻るとオレ達に言って来た。
『2人とも急げ、船が爆発する!』
ギルが言うとオレ達はギルに乗ってアクセルを噴かした。
そして数メートル前進するとオレ達の姿が光に包まれて消滅、オメガの円盤から脱出した。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki