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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 だがオレが加わっても状況は変わらなかった。むしろ2人かかりでも一太刀どころか掠りもしない事が問題だった。
 余裕で避け続けるモリゾンは不敵に笑いながら言って来た。
『どうした? 諸君らの力とはその程度の物か? それで今まで良く地球を守り続けてきた物だな』 
「ざっけんなっ!」
 頭に血が上ったオレは更に踏み込んで切り込んだ。
 しかし途端奴の姿がオレ達の目の前から消えた。
「なにっ?」
 オレ達が目を見開くとその刹那、背後に冷たい殺気が走った。
 オレ達が振り向いて身構えるよりも早く、モリゾンの攻撃が炸裂した。
 モリゾンは両手を引いてオレ達のわき腹に掌底を繰り出した。
「ぐはああっ!」
「がはああっ!」
 モリゾンを壁まで追い詰めるつもりが逆にオレ達が壁に叩きつけられて床に転がった。
 オレもレンも痛みの走る箇所を押さえながら身を丸めた。
 そんなオレ達を見ながら鼻で笑いながら襟元を調えるモリゾンを見た。
「……一体、どうなってんだ?」
 痛みでロクに集中できない頭をフル回転させながら考えた。
 納得出来なかった。そりゃオレ達はバイスほどじゃないが結構早く動ける…… だがこいつはオレ達より先に動いて攻撃していた。
 実際オレの瞬間移動の時だってそうだ。まるでオレの出て来る位置が予め分かってたみたいだった。
 こいつもサイボーグで、体の中に仕込んだコンピューターで居場所を特定してるのかもしれない。
 もしくは単に身体能力が高いだけか? 訓練された格闘家や武術家は相手の動きがスローモーションに見えると言う…… 優れた動体視力でオレが現れた瞬間を狙ったって事になる。
 いや、それにしちゃオレ達の動きを正確につかみすいている…… この精密性は府に落ちなかった。
 オレの頭じゃここが限界だ。これ以上の事が考えられずに悩んでいるとレンが言って来た。
「間違いないな…… こいつは見えている」
「何がだ?」
「オレ達の未来だ!」
 レンは眉間に皺を寄せた。
 こいつが言うならまず間違いないだろう、未来を見る…… つまりこいつも超能力者、予知能力者って事になる。
 だとしたら納得だ。こいつはやたら戦いなれてやがる、恐らく元軍人か傭兵だろう、オメガは犯罪者を絶対忠誠を引き換えに保身を約束されている。
 ただその見返りとして裏切りを出さないように体に改造手術を行れ、体の中に爆弾を埋め込まれる。
「じゃあ、こいつもオメガの改造手術を受けたのか!」
『改造手術? 馬鹿な事を…… そんな物は弱者がやる事だ!』
「何?」
 オレは眉間に皺を寄せる。
 するとモリゾンは自分の左胸に親指を突き立てながら言って来た。
『確かに掟としてここに爆弾を埋めてある…… しかし小生は自らの意思でオメガに入ったのだ!』
 モリゾンは語った。
 かつてモリゾンは優秀な軍人で、とある惑星との間の星間戦争に参加していたらしい。
 多くの手柄を立て、多くの仲間達から羨望の眼差しを受けて『戦神』とまで崇められていたと言う。
 しかしモリゾンのカリスマ性に嫉妬した上層部は敵対していた惑星と休戦を結ぶ事になった。
 あと少しで勝利を収められる所で戦争が終わってしまった事に納得ができなかったモリゾンは上層部に講義するも受け入れず、それどころか母星の為に戦ってきた者達を冒涜し始めた。
 自分の事はともかく、部下や仲間達の誇りを傷つけた事に頭が真っ白になったモリゾンは上層部の者に手を上げてしまい、その結果モリゾンは処刑される事になった。
 地位も名誉も、そして軍人として生きる希望とも言える戦争を奪われたモリゾンは失意の中死刑を待っていたと言う。
 しかし軍に兵器を提供していたオメガはモリゾンの事を知り、幹部として迎え入れたらしい。
 一通り説明するとモリゾンは言って来た。
『小生はオメガに感謝している、今の地位と生きる希望を与えてくれたオメガにな!』
 完全に狂ってた。
 こいつはレンと違い心の底から忠誠を誓っている、この狂気に満ちた目を見れば分かる、喋り方や立ち振る舞いこそ軍人だが、最早戦争を…… こいつ本人が戦う事自体を楽しんでいるただの戦闘狂だ。