SAⅤIOR・AGENTⅡ
翌日、オレ達は罠を張る事になった。
野郎はとんだ大食漢、活動するにはより多くのエネルギーを摂取する必要がある。
つまり裏を返せば食糧が大量に溜まっている場所に現れると言う事だ。奴は落ち付いて食ってる訳にはいかないからな。
この町では大型の食糧倉庫と言えば5つある、その内2つは奴に襲われちまったが、残りはあと3つある。
その3つの食品倉庫の責任者に千鶴ちゃんが手を回して労働者全員に休暇を取らせ、オレ達は冷蔵庫の中で待機、奴が現れ次第捕獲と言う作戦だった。
『ゴメンね、アタシが行けないくて〜』
無線からファーランの声が聞こえる。
本来ならサイモンより戦闘力の高いファーランが出なきゃならないんだが、ファーラン達ドラン人は冷気に弱い為に作戦に参加する事が出来なかった。
サイモンみたいに衛星に入り込む事は出来ないが、代わりに部分開放して空からの偵察となった。
冷蔵庫の中で1日待機なんざ地球人だって無理だが、こう言う時は改造人間だってのが便利だ。
サイモン曰く、−150度までなら活動可能だそうだ。
『気にするな、オレ様もたまには体を動かさなきゃな』
『油断するな、どこから来るかわからん』
「……運よく引っかかってくれれば良いんだけどな」
オレはそれだけが心配だった。
昨晩サイモンが奴の鼻を聞かなくする為に特殊消臭剤を作ってくれた。
これで体臭を消す事が出来る、問題は奴を拘束する事だが…… これは何とかなる。
ファーランは空が飛べる、バイスは超スピードがあり、サイモンは電話回線を伝って移動する事が出来る。
オレもテレポートを使えるから他の連中の場所に駆け付ける事が出来る、つまりオレ達が待ちうける倉庫のどれか1つにでも入れば奴は袋の鼠と言う事だった。
それから時は過ぎだ。
オレは携帯の時計を見るともうすぐ夕方の7時だった。いくらなんでも遅すぎる……
そう思っているとギルに連絡が入った。
『みんな…… もういい、撤収よ』
とても悔しそうな声が聞こえる。
今の言葉から察するに作戦が失敗だと言う事が分かった。
襲われたのは大型スーパーに輸送中のトラックだった。幸い運転手に怪我は無いが、荷台に積まれていた食料が根こそぎやられたらしい。
「くそっ!」
してやられたぜ。
オレは忌々しく舌打ちをした。
オレ達はマンションまで戻ってきた。
地下基地のサロンで休憩を取りながら反省会、および今後の事を相談した。
「考えてみれば、奴が食品倉庫しか襲わないと言う保証が無かった…… 迂闊だった」
「オレ様達を出し抜くとはな…… 面白れぇ事になって来たぜ」
「そんな事言ってる場合じゃないよ、このままじゃ奴のやりたい放題じゃん!」
「ファーランの言う通りよ、体臭の方はどうにかなるとして、問題は奴の行動よ」
「と言ってもなぁ……」
オレは頭を抱える。
奴の犯罪は食品強奪および無銭飲食…… つまり腹が減ったってだけだ。
そりゃ腹減りゃ誰だって何か食う、しかし奴の場合は食えれば何でも良い、好き嫌いだって無い、それは良い事なんだが…… それだけに手に負えない。
「はぁ、何かアタシ達もお腹すいたね〜」
「ああ、そう言えばしばらく何も食べて無いな」
「そう思って、一応買って来て置いたわよ」
そう言いながら千鶴ちゃんは左耳のエンゼルを外すとテーブルに向ける。
エンゼルから光が放たれるとその中からコンビニの弁当と飲み物が現れた。
サポーターには物体をデータ化する事で収納して置く能力を持っている、勿論いつでもどこでも出す事が可能だ。
「いただきま〜す」
ファーランは割りばしを割ると自分が貰った麻婆丼に手を付けた。
コンビニで温めて貰ったのをそのまま収納してあったんだろう、熱々で蓋を開けると鼻をつく良い匂いが広がった。
「ん、匂い?」
オレは顔を顰めた。
奴がどこを襲うか分からない、オレ達は匂いを消す事が出来る……
「なんてこった!」
オレはテーブルを叩いて立ち上がる。
「どうした? ピーマンでも入ってたか? それともニンジンか?」
「好き嫌いダメだよ、タクミ!」
「そうじゃねぇ! オレはナス以外は何でも食える!」
「じゃあ何?」
「何でこんな事に気が付かなかったんだ……」
オレは頭を抑えながら座ると思いついた事を話した。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki