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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 翌日、私は水城先輩に頼み生徒会の仕事を数日だけ休ませてもらう事にした。
 その間私は……
「白金さん、そんなに肩に力を入れないで…… もっとリラックスして」
「は、はい!」
 私は声が裏返る。
 私は今、家庭科クラブに仮入部していた。
 家にあったエプロンをかけて頭に三角巾を被って昨日と同じようにビスケットを作っていた。
 右には塩田さん、そして左には顧問の先生が付きっきりで私に手ほどきをしてくれていた。
 私と同じくらいの身長で、長い髪を左右で三つ網にして両肩から垂らした頭に三角巾を被り、ピンクの両肩にフリルの付いた子供みたいなエプロンをかけたこの人は『滝川・克己』、家庭科の担任でこのクラブの顧問だった。
 私は小麦粉と薄力粉を篩いに掛けていた。
「そうそう、筋は良いですよ、いつでも良いお嫁さんに行けますね〜」
「お、お嫁さんっ?」
 私の手から篩いが零れ落ち、そのままボウルをひっくり返して白い煙が宙に舞った。
「ああっ、ごめんなさい!」
「だ、大丈夫ですよ……もう一度はじめからやりましょう」
 克己先生は笑顔で片付けを手伝ってくれた。
 再び小麦粉と薄力粉を用意すると作業を再開した。
 すると塩田さんが言って来た。
「でも昨日、白金さんが料理を教えてくれって言われた時はビックリしました」
「そ、そうですか?」 
 私は昨日の事を思い出した。
 あの後塩田さんに頼み込んで克己先生を紹介してもらい、仮入部させて貰ったのだった。
「でもどうしてお料理を? 好きな人にでも差し上げるんですか?」
「はぁっ? ななな、何言ってるんですかっ?」
「違うんですか?」
「い、いえ、違わなくは無いですけど……」
 私は目を背けた。
 確かに兄貴にあげるのは事実だけど、別に好きだからあげる訳じゃ無かった。むしろギャフンと言わせたいだけだ。
 そりゃゲームのレベル上げじゃあるまいし2〜3日でどうにかなる問題じゃないって事は分かってる。
 塩田さんに頼んだのだって半分は勢いだ。だけどそれでもどうにかしたかったからだ。
 すると私の後ろから1人の女子生徒が声をかけて来た。
 髪の毛を左右でお団子上にした私より背が低く、不破さんよりは高い彼女は私のクラスの竹里さんだった。
「ねぇねぇ、その相手って御剣君でしょ?」
「ええっ?」
「みんな知ってるよ、白金さんが御剣君と付き合ってるって……」
「ちょ、待って! 私はそんなんじゃ……」
 実の兄妹が付き合える訳が無い! とそう言えればどんなに良い事か……
 すると他の部員達も話に参加して来た。
「あれ、でも御剣君って2組の不破さんと一緒にいないっけ?」
「えっ、何々? つまり二股かけてるって事? いや〜んっ!」
「何想像してるのよ! 私も不破さんも付き合って無いわよ!」
 私は叫ぶ。
 その言葉に部員達は顔を見合わせた。
「そうなの?」
「さぁ?」
「でも考えてみれば不破さんとは付き合ってるって感じじゃないんだよね〜」
 部員達の熱は静まりつつあった。
 本当に女子って恋話すきだな、私には理解できないけど……
 すると今度は竹里さんが塩田さんを見て言って来た。
「でもメグちゃんは付き合ってる人いるんだよね」
「えっ?」
 私が見ると塩田さんも私と顔を合った。
 途端塩田さんは私から目を反らした。
 彼女が好きな人は誰なのかは分かる、だけど……
 私は塩田さんに顔を近づけて小声で尋ねた。
(塩田さんっ!)
(大丈夫です、オメガの事も異星人だって事も言ってません)
 塩田さんも小声で返して来る。
 確かに塩田さんが嘘を突いていないのは分かる、何故ならこうして会話が成り立っているのが何よりの証拠だ。
 塩田さんもセイヴァー・ギアを持っていて、異星人に関する事を言えばたちまちブレスから記憶を消去する電波が放っせられて異星人に関する全ての記憶が消える事になっている。
 しかし塩田さんが『メグちゃん』と呼ばれてクラブの人達と仲良くしてるなんて、変われば変わる物だった。
「でも誰かの為に作る事って素敵ですよ、そう思いませんか?」
 克己先生は私を見る。
 しかし心なしか克己先生の瞳に星がかかっていた。
「誰かの為?」
「そうですよ、食べてくれる人の事を思って料理する、それこそが最大の調味料なのです。料理は愛情です!」
 克己先生はクルリと回ると両手を握りしめて明後日の方向を見ながら言って来た。
 しかしこの人は先生と言う気がしないなぁ、どっちかと言うと年上の友達だった。