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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 その頃。
 巨大化したゼンガーは鷲づかみにしたファーランに破壊エネルギーを注いでいた。
 怪力のファーランでもビクともしない、その巨大化した右手が太陽をコンパクトにしたように強い光の中でファーランは苦しんだ。
「うあぁああーーーーっ!!」
 さすがのドラン人と言えどひとたまりも無かった。
 皮膚が焼け焦げ、艶のある髪の毛が散り散りとなり、銀河系の粋を集めて作り上げた戦闘服も少しづつではあるが消滅して行った。
 それを見たゼンガーはあざ笑いながらもう片方の手を右手に被せて更に力を入れた。
「ああっ、ああぁ……」
 体を締め付けられる苦しみと激痛でファーランの意識は朦朧とし始めた。
 だがこのまま終わる訳には行かなかったからだ。
 かつて自分は1人だった。
 親を失い、ドラン星の保護施設で育ったファーランは素質を見込まれてセイヴァー・エージェントの養成所に入った。
 養成所で様々な戦闘術を叩き込まれ、メキメキと才能を開花させて行ったのだが、ファーラン自身が満たされる事は無かった。
 周囲もいずれ宇宙の平和を守る為に自分を鍛えている者達しかおらず、いたとしても教官連中が頭を抱える問題児だけだった。
 だがそんなある日、養成所にとある『新入り』が入った。
 彼は持ち前の明るさで堅物しかいなかった候補生達の頬を緩め、ただ肩の力を入れれば言いと言う訳ではない事を教えてくれた。
 そして彼の故郷の娯楽を見せてもらい、その魅力に惹かれてしまった。
 はたから見ればただの遊びだろう、しかし今まで武術しかなかった自分の中に『何か』が生まれた。
 それが何なのかは上手く説明は出来ない…… しかしいつしかギャルゲーと呼ばれる娯楽の中に出てくるキャラクターが気に入り、自分もそれに変身して生活するようになって以来自分の人生は変わった。毎日が楽しくなった。
 数百年の間笑った事が無い自分に笑顔を思い出させてくれた。地球に来てからも友達が沢山できた。
 アニメやゲームを買い漁り、時に叱られる事はあったが、それでも地球は自分を変えてくれた宝石が詰まった宝箱のような存在だった。
 その大切な惑星を戦争屋などに破壊させる訳には行かなかった。
 ファーランのそんな考えとは裏腹にゼンガーは勝利を確信して高笑いを上げながら言った。
『ハハハハッ! どうやらここまでみてぇだな、所詮こんなチンケな星に命かけること自体間違いだったんだよぉ、さっさと逃げときゃ長生きできたのになぁ!』
「くっ! うあぁああああーーーっ!」
 今の言葉にファーランの意識は覚醒し、目を見開いて吼えた。
「ロン、お願い!」
『分かったわ、お嬢!』
 いつもは姉と言うより口うるさい保護者のようなロンだったが、今回だけは考えが同じだった。
 ロンの龍の目部分に強い光が灯ると今まで封じていたドラン人としての全ての力を解放 した。
 ゼンガーの手の中で思い切り両手を広げると巨大な手が粉々に砕け散った。