SAⅤIOR・AGENTⅡ
『終わったか』
ガドリアは右手の銃を下げて今度こそ臨戦態勢を解いた。
暗殺者として相手の死を確認するのは当然の事、しかし異星人の死は様々だった。
ガドリアはあまたの敵を葬って来た。勿論中にはサイモン(レイス星人)の様な実体を持たないエネルギー生命体も存在する。
実体を持つ者ならば死ねば臓器や脳などの機関が停止するだけだが、だが実体を持たない者ならばそのまま消滅する。
ガドリアに内蔵されているサーチ・メーターでサイモンがエネルギー体と言うのは分かっていた。
よって完全な消滅を確認しなければならなかった。
『ムッ?』
するとガドリアの耳に何かが砕ける音が聞こえた。
それは下からだった。
見ると足元の床に亀裂が入っていて、そこから勢いよく水が飛び出した。
『ぐおおおっ?』
地下の水道管が破裂したのだろう、突然の水飛沫にガドリアは怯んだ。
しかし床の下から飛び出したのは水だけでは無かった。
亀裂の隙間から赤い触手が伸びてガドリアにからみついた。
それは本当の姿に戻ったサイモンだった。
『な、何だ。これはっ?』
『ハッ、俺様に決まってるだろ!』
『き、貴様ッ! 死んだはずではっ?』
『そう簡単にオレ様が死んでたまるか!』
サイモンは言った。
エネルギー生命体であるサイモンは予め自分の分身を作って置いたのだった。
そして本体である自分自身は本の姿に戻ると地下にある電気ケーブルに潜り込み、分身を囮として使いながらガドリアの下にやって来て水道管を爆発させたのだった。
だがサイモン自身もタダでは済まなかった。
レイス星人は個体差にもよるが分身1体を作り出すにはかなりの体力を消耗すし、痛覚等の感覚も繋がっている…… しかも分身も本体の意思で動いているので集中力も必要になる、そして最悪の場合は分身がやられるとその反動で命を落としてしまう可能性もあった。
しかし隙を作って近づいただけでは何にもならなかった。密着しているだけで攻撃している訳ではない、セイヴァー・アームズも少し離れた場所に転がっている。
勿論サイモンは何も考えていない訳ではない、そんな事は計算の内に入っていた。
サイモンの触手の1つがガドリアのコメカミに張り付くと火花の様な物が弾け飛んだ。
それと同時にガドリアの頭部に微弱だが痺れが走った。
『ぐああっ?』
一瞬だが目眩が生じて意識が消えた。
何とか足を踏ん張って倒れるのは防ぐが、サイモンは突然自分から離れて距離をとった。
触手を伸ばして数メートル先にある分身が残したセイヴァー・アームズを絡め取ると自分の手元に戻した。
そして地球人『三葉彩紋』に戻るとセイヴァー・アームズの銃口を左の二の腕に突き立てた。
「γ・モードッ!」
引き金を引くと白いエネルギー弾が発射されてサイモンの体に吸い込まれた。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki