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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 一方レンは里中先生に塩田さんを渡した。
「恵をお願いします」
「必ず帰って来なさい、彼女の為にもね」
「はい!」
 レンは力強く頷いた。
 すると今度は私を見て言って来た。
「俺は約束を守る、今度こそ恵に胸を張って会いに行く」
「約束…… あっ!」
 私はかつて塩田さんの夢の中で聞い言葉を思い出した。
『オレは胸を張って会いに来る』
 そして今がその時だ。
 この1年色々あったけど、今のレンの目には嘘偽りの無い力強さが込められていた。
 レンの本気の決意に私も頷くとそれに食い付くバカが横から割って入った。
 兄貴は目を細めて眉間に皺を寄せると私の横からニュッと顔を近付けた。
「おい、お前こいつと何かあったのか? 誓いって何だ? ってかテメェ、舞に何吹き込みやがった?」
「デリカシー無い奴は黙ってて!」
 私は叫んだ。
 途端兄貴は私の怒声にたじろいだ。
 このバカに色恋沙汰は永遠に分からない、彼氏に欲しいって人がいたら相当な物好きだ。
 一応部活の助っ人で活躍してるから人気はあるし、告白されてもおかしくは無いけど付き合っても直ぐに終わるだろう、絶対苦労する。
 すると里中先生は全てを理解していたようで鼻で笑いながらフォローを入れて来た。
「はいはい、兄妹喧嘩は後でやりなさい…… データは転送しておくわよ、エンゼル!」
『了解』
 エンゼルが緑色に輝くと兄貴のギルもほのかに輝いた。
 待つ事数秒、光が消えるとギルが言って来た。
『タクミ、データのダウンロードが完了した。いつでも行けるぞ』
「分かった。オイ、つかまれ」
するとレンはオレの肩に手を乗せた。
「じゃあ行って来るぜ」
「ええ、しっかりね」
「待って!」
 私は兄貴に言った。
 だけどいざ言おうとすると言葉が上手く出て来なかった。
「あっ、その……」
「妹さん、後にできないかしら? 今は一刻を争う時なの」
「ええ、勿論…… ただ一言」
 決して怒ってる訳じゃ無いだろうけど、里中先生は顔を顰めながら私に言った。
 時間が無いのは私だって分かってる、意を決した私は深呼吸して私は言った。
「行ってらっしゃい」
 一言、ただそれだけだった。
 レンは私の事をあまり知らないから『今何故そんな事を?』と言わんばかりに顔を顰めたが、兄貴と里中先生だけは信じられないと言わんばかりに驚いた。
 そこまで私が素直に言うのが珍しいのか?やがて兄貴は口の端を上げながら頷いた。
「ああ、行って来るぜ!」
 力強く頷いた兄貴は目の前から消えた。
 これで二度目になるけど、心の中で願った。
(またお願いね、兄さん)