SAⅤIOR・AGENTⅡ
考えて見れば当然だった。
アブラムはその国や地域を統括している支部の場所を知っててもおかしく無い。
現在日本支部本部だけじゃなくて中国やフランス…… さらには地球支部本部のあるアメリカに巨大な兵器が放たれると各支部を攻撃し始めたと言う。
突然の迎撃とアブラムの捜索に人員を裂かれた事もあって戦況は劣勢、捜索に向かった為にセイヴァー・エージェントと地域担当のセイヴァー・エージェント達が応援に向かっているらしい。
するとエンゼルから一筋の光が空中に放たれて大きなモニターになるとその様子が映し出された。
所々画面が変わるけど襲われているセイヴァー・エージェント支部はどれもが国の中枢を担う本部で、どれも人里離れた樹海や山、無人島に作られている。
だけど問題なのは襲っている兵器だった。
4本の蜘蛛みたいな足の中央にコックピットがあり、その両端に備えたレーザー砲が森を焼き払い、大地を砕いていた。
しかもその数が以上だ。1台や2台じゃない、その兵器を見た瞬間、兄貴の顔が強張った。
「これは…… サイモンがぶっ壊した奴と同じだ」
「……へヴィ・ウォーカーッ!」
レンが呟いた。
「知ってんのか?」
「ああ、オメガの陸上破壊兵器だ。奴等こんな物まで……」
「多分アブラムは地球にオメガのエージェント達を何人も招き入れて兵器を作らせていたのね、さらにマンバを利用してバーンを別の場所で精製させた…… それを隠蔽していたのね」
「ふざけやがって……」
兄貴は歯を軋ませながら右手の拳を握り締めた。
だけど問題はなぜ今セイヴァー・エージェントの支部が襲われているかだ。
アブラムの策略は本星のゼルベリオスに伝わってるはずだし、ゼルベリオスだって銀河連邦軍に地球攻撃の取り止めを交渉してるはずだ。
となると考えられるのは1つしかない、罠だ。
「きっと各支部を攻撃してるのは囮よ、この混乱を利用して宇宙に逃げるつもりなのよ」
「つまり陽動か」
「となるとますます逃がす訳には行かないわね」
『でもミーゼル、日本支部は至急戻れって言ってるのよ、独断専行は命令違反になるわ』
「そっちには私が行くわ、タクミ君達はアブラムの方をお願い」
「しかし居場所が分からない、それじゃテレポートの仕様が無い」
レンは言う。
すると舞が眉間に皺を寄せながら口を開いた。
「あの場所」
「え? あの場所?」
「ああ、もしかしたら『あそこ』にいるんじゃないかって」
舞は言った。
「なるほどね、確かに可能性は高いわ」
「いえ、ただの感ですから」
「いやいや、さすがオレの妹だ」
「貴様とはえらい違いだな」
「ああっ? 何か言ったか、テメェ?」
「止めて兄さん、今はそれどころじゃないでしょう」
舞に言われてオレは舌打ちする。
すると千鶴ちゃんが言って来た。
「奴はセイヴァー・エージェント各支部の襲撃で多少なりとも隙が出来てるはず…… 検挙するなら千載一遇のチャンスね」
「陽動には奇襲って事か?」
「ええ、だけどオメガのガードもついてると思うから、それは覚悟して」
「まぁ、それは仕方ねぇか」
兄貴は顔を顰めながら両肩を落とした。
オメガにはレンやバクマ星人みたいな連中がゴロゴロいるだろう、でもそんな奴等がガードに来てない事を私も願った。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki