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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 すると浦木はアブラムを見るとまるで油の切れたブリキ人形の様に足を進めた。
「冗談じゃないぞ、地球が滅ぶなんて聞いて無い! お前は協力すれば私を地球の支配者にしてくれると言ってくれたじゃないか!」
「リ、リーダーッ?」
「今なんて…… 地球の支配者ってどう言う事ですか?」
 葛西は浦木の横から肩をつかんだ。
 胡散臭い奴だと思ってたが案の定だ。地球征服なんてどこぞの特撮の悪役みたいなベタな事を企んでやがったとはな……
 そう思ってると浦木は顔を歪ませながら右手で葛西を振り払うとさらに罵声を浴びせた。
「うるさいっ! お前等に何が分かる、私は些細な事で全てを失った。それで地球に復讐して全人類を奴隷にするつもりだったんだ! 金はその為に集めてたんだ。新しく作る帝国の為にな!」
「そ、そんな…… 私達は地球の平和の為にって……」
 葛西は顔色が青ざめるのを通り越して真っ白になりながら後ずさりする。
 だが浦木は葛西の両肩をつかむと怒鳴るかのように言って来た。
「思いあがるなモルモット風情がぁ! お前等は薬打って言う事聞くだけの道具でしか無いんだ! くだらない家族やくだらねぇ復讐なんか知った事じゃねぇんだぁ! それを私の顔に泥を塗りやがって…… 地球が滅ぶのはお前等の責だ!」
 錯乱してるんだろう、本性を現した浦木は全ての責任をエイリアン・ハンターに押しつけていた。
 そのエイリアン・ハンター達も信じていた物がガラスの様に崩れ落ちた現実に膝を付き、ある者は瞳から涙が溢れていた。
 最早下衆の極み…… いや、最悪って言葉はこいつにこそあるべきだと思った。
 誰だって汚ない一面はある、正義なんて人に寄りにけりだと思う…… オレはセイヴァー・エージェントだが任務やルールには協力はしてるが従っちゃいない、何しろオレにとって優先すべきは舞だからだ。宇宙が敵になってもオレは舞の為に戦うと誓ってる。
 しかしこいつだけは違う、こいつには正義も責任能力も無い、ここまで来ると反吐を通り越して呆れて来る。
 まるでイタズラがバレて親に叱られそうになって他の子供に責任をなすりつける子供でしか無かった。
 すると浦木は葛西を突き離すとアブラムに近付くと泣いてすがりついた。
「なぁ、アンタのパトロンに私を紹介してくれないか? エヴォルを改良したのは私だ。私ならアンタ達の役に立てる、なっ? 頼むよ! 金ならいくらでもあるからさぁ!」
(こいつ……)
 死にたくないのはあたりまえだろうが、あろう事かこいつは地球を裏切ってオメガに自分を売り込んでいた。
 するとアブラムは目を閉じると上着のポケットに両手を突っ込むと首を上げると後ろを向いて2〜3歩進むと足を止めた。
「そうですねぇ、確かに貴方には借りがありますから…… どうしてもと言うならオメガに紹介してあげましょう」
「ほ、本当か?」
「ただ…… 彼等がどう言いますか」
「えっ?」
 浦木が顔を強張らせた。
 その刹那、オレは異様な気配を感じた。
 それは千鶴ちゃんやレンも同じだった。
「皆伏せて!」
 千鶴ちゃんが叫んだ。
 するとオレは蹲ってる舞の頭と肩に、レンは背を向けて恵ちゃんを庇った。
 その瞬間、オレ達の耳に銃声が鳴り響いた。
「きゃあああっ!」
 オレの腕の中で舞が両耳を塞いで悲鳴を上げた。
 銃声が止んで振り向くとそこに映っていたのは背中に無数の風穴が空いてそこから鮮血が吹き出ている浦木だった。
「がっ……」
 浦木は体を仰け反らせると口から血を吹いて倒れた。
 その様をアブラムは案の定と言わんばかりに吐き捨てた。
「やはり無理でしたか、無駄な望みでしたね」
「当然だ」
 聞き慣れない言葉がフロアに響くとオレはその声のした方を見る。