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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 今の話じゃこいつはオメガと繋がってた事になる、だが……
「ちょっと待てよ、確か浦木が超能力者を作り出したのは3年前だろ? だけどオメガが来たのは半年前だぜ?」
 オレは言った。
 半年前にオレが倒したシド・ガーランドはオメガの武器密売の元締めではあったが、そいつは地球を地殻変動兵器『ディザスター』の実験台にしようとしやがった。
 だがその時こいつらは地球にいたはずだ。もし失敗しよう物なら自分達だって巻き沿いを食うはずだ。
 するとレンが言って来た。
「オメガは幾つものチームに分かれている、自分のチームが他のチームを出し抜こうとしている所はある」
 要するに一枚岩じゃないって事か。
 企業同士が共同開発とか言っておきながら互いにらみを利かせ、成果が出たら切り捨てる連中もいる。
 宇宙でも競争は激しいって事になる、大方危なくなったら自分は逃げようって魂胆だったんだろうな。
 そんな事を考えているとアブラムが言って来た。
「私は長い間、探索派のセイヴァー・エージェントを勤めてきました。ですが宇宙を渡り歩く度に思う事があるんです、こんな奴等救う価値があるのか? ってね」
「何だと?」
 オレは顔を顰めた。
 するとアブラムは余裕ぶって言い返した。
「彼等を見れば分かるでしょう? 人間は自分達こそが絶対的な支配者だと思いこみ、異星人を化け物扱い、自分が他の惑星に行っても同じだと言うのに…… そんな連中がいるからこの宇宙はいつ間で経っても平和にならないんですよ」
「当然です、誰だって理解できない物には混乱する、その混乱を避ける為に私達は秘密裏に活動して……」
「だからですよ、その銀河連邦条約の為に我々の動きが制限され、罪も無い者達が苦しむ者達が増えるのです、ならばその元凶を叩き潰してやれば良い」
「まさか、宇宙密偵団体を潰すってのか?」
「それだけではありません、宇宙警備団と銀河連邦軍も根こそぎ排除すると言っているのですよ」
 アブラムの言葉にオレ達セイヴァー・エージェントはこいつの正気を疑った。
 銀河連邦条約は3つの派閥があり、その内の1つが未開の惑星に逃げ込んだ異星人を秘密裏に検挙、さらに惑星の住人が異星人とコンタクト可能かどうかを調べる宇宙密偵団体だった。
 宇宙警備団は銀河連邦条約に加盟した惑星の異星人犯罪者を取り仕切り、さらに銀河連邦軍は宇宙に害を及ぼすとみなされた惑星を滅ぼす役割を担っている。
 それらがいるから宇宙は秩序を保っている、それがなくなれば全宇宙はどこもかしこも無法地帯になっちまう。
「なんて事を…… そんな事をしたら他の、特に銀河連邦軍が黙って無いわよ」
「でしょうね、ですからこの地球には犠牲になってもらうのですよ」
「何だと?」
 オレと舞は顔を強張らせた。
 奴の企みはこうだった。
 地球は異星人を『宇宙人』と差別して正体が分かれば殺してしまう野蛮な種族、やがて宇宙に進出して秩序を乱す最悪の存在として評判を落とす。
 無論銀河連邦軍から目を付けられて地球を滅ぼしに来る、その手薄になった所をオメガが総力を挙げて銀河連邦軍を乗っ取り、さらに宇宙警備団と宇宙密偵団体本部を掌握して自分が宇宙を頂戴しようと言う物だった。
「1つに纏まれば争いも何も無くなります、その為に多少の犠牲は止む負えないでしょう」
「ふざけんな! 全部テメェ等の着せた濡れ衣じゃねぇか! 関係の無い地球を巻き込む訳にもいくか!」
「タクミ君の言う通りよ、大体そんな事が上手く行く訳無いわ」
「そうでもありませんよ、これを見せればね」
 アブラムは上着の胸ポケットに刺さっていた黒いペンを取り出した。
 武器じゃ無いようだがただのペンでも無い、それはキャップ部分に赤・青・黄のボタンが縦に並んだリモコンだった。
 その内の赤いボタンを押して前に突き出すと先端部分から小さな一筋の緑色の光が放たれて大きくなると長方形のモニターとなった。
 そしてそこにはエイリアン・ハンター達が異星人達を殺害している動画が映し出された。
「舞、見るな!」
 オレは舞の前に立って言った。
 だが……
『た、助けてくれ!』
『死にたく無い!』
『うわぁあぁぁあ!』
 音声までは防ぐ事は出来ない。
 オレの目の前で次々と画面に写される異星人達の断末魔が響く……
 するとオレの後ろで舞が唸った。
「ううっ…… うええぇぇっ!」
「舞っ!」
 オレは振り向く。
 舞は口を抑えながらその場に膝を着いて蹲ると胃の中の物を吐きだした。
 さすがにこれは舞には耐えられ無かった。恵みちゃんは気絶してるだけ運が良かった。
「テメェ! 止めろ!」
 オレは叫んだ。
 するとアブラムは気が済んだのか映像を消した。