SAⅤIOR・AGENTⅡ
それはほんの一瞬の出来事だった。
突然恵ちゃんの目の前に1人の男が突然現れて左手を伸ばすと彼女の右腕を握りしめてナイフの刃先を引き離した。
そしてもう片方の手もがら空きになった左手首をつかんで恵ちゃんを抑えつけた。
「なっ?」
オレは目を疑った。
いきなり現れたって事は瞬間移動か…… 顔は見えないがジャケットを羽織ってるからこいつもエイリアン・ハンターなんだろうが、フードとゴーグルで顔が分からなかった。
そうオレが迷っていると男は恵ちゃんに言った。
「もう止せ、目を覚ますんだ!」
「……うっ、うくっ」
恵ちゃんは男を振り払おうと身を震わせる。
だが男は離す気は無かった。
今の恵ちゃんは超能力で身体能力が上がってる、だがその恵ちゃんを抑えつけている、向こうも身体能力を上がってるのか?
その様子を見ていた備渡は男に叫んだ。
「な、何やってんだ。貴様、裏切るのかっ?」
「貴様ァ――っ!」
剛田は体の筋肉を膨張させて飛び込んだ。
巨大化した拳が男にぶつかる瞬間、男は振り向くとフード越しの瞳を輝かせた。
するとどうだろう、突然剛田の動きが止まった。
勿論奴だけじゃ無い、後ろにいたエイリアン・ハンター達も動かなくなった。
「がっ? 体が?」
「う、動かない……?」
動けなくなったのはエイリアン・ハンター達だけだった。
勿論オレと恵ちゃんは動ける、だが恵ちゃんは相変わらず男に抑えつけられて身動きが取れなかった。
すると男は恵ちゃんに言った。
「目を覚ませ恵、お前も『エヴォル』を打ちこまれたのか?」
すると男は右手を離すと人差し指以外の人差し指を曲げた。
「少し我慢してくれ!」
「あうぅ!」
恵ちゃんは目を見開くと体をビク突かせた。
「テメェ! 何を?」
オレは男に飛びかかろうとした。
だがその時男が指を離すと今まで押しあてられていた箇所からピンク色の液体が飛び出した。
それは決して血液じゃ無かった。
男が手を広げるとピンクの液体は丸まってピンポン玉くらいの大きさになった。
男はそれを見ると忌々しそうに口元を歪めると液体を握りつぶした。
一方恵ちゃんは目を閉じると膝が曲がり、糸が切れた人形の様にグラついた。
だがとっさに男が右手を肩に回して抑えた。
どうやら彼女を傷つけようとした訳じゃなさそうだ。オレは男に尋ねた。
「お前、一体何者だ? 少なくとも地球人じゃねぇな?」
敵とは思えないが100パーセント味方と言う訳じゃない、警戒するのは当たり前だった。
だが男は舌打ちをしながら言い返した。
「……全く、偉そうな事を言っていたクセに、結局これか」
「なっ? 何だと?」
「正直言ってお前もこいつらと同罪だ。自分の妹もそうだが、恵を巻き込んだ」
すると男は左手をでフードを取るとその後にゴーグルを外した。
その素顔を見た瞬間、オレは目を見開いた。
まさかこんな所でまた会うとは思ってもみなかった。
オレ達は絶対に忘れる事が出来ないだろう、何しろ以前オレ達をボコボコにして地球滅亡に手を貸したオメガの工作員だったからだ。
「久しぶりだな、シスコン」
レンはそう言うと左手を恵ちゃんの膝の後ろに回すと恵ちゃんを抱きかかえて立ち上がった。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki