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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 備渡や葛西さん達がいなくなってからも私はその場に膝をつけながら俯いていた。
 葛西さんのお父さんが宇宙コロニーの設計者で、セイヴァー・エージェントが地球を自分達の物にしようとしていて、兄さんがセイヴァー・エージェントに殺された?
 色々ショックな事を聞かされて頭の中が混乱していた。
 信じられない…… いや、信じたくなかった。皆良い人達だからだ。
 不破さんも三葉さんも大神さんも…… 他にも里中先生や水樹先輩やルーシーちゃん達の顔が頭の中に浮かんだ。
 ただもし備渡達の言う通り、皆が嘘を着いたら、もしセイヴァー・エージェントが私達を騙していたら…… そう考えると信じて良いのか分からなくなっていた。
 異星人達を信じてはいけない…… その思いが心のどこかで生まれていた。
「……どうしたら良いの?」
 私はプレッシャーに押しつぶされそうだった。
 何だか全てがどうでも良くなって来た。いっそエイリアン・ハンター達に協力した方が楽になる、そう思った時だった。
「ギャアアッ!」
「グハァッ!」
 遠くの方から悲鳴が聞こえた。
「えっ?」
 私は顔を上げた。
 するとある人が私の前にやって来た。
 その人は私の前にやって来ると鉄格子越しに膝を曲げて私の顔を除いた。
「大丈夫? 妹さん」
「さ、里中先生っ?」
 私が目を見開くと里中先生は頷いた。
「さぁ、妹さん、ここから出ましょう」
「………」
「どうしたの?」
 私が身を強張らせると里中先生は首を傾げた。
 今までの私なら迷わずに表に出ただろう、でも今の私の体が拒絶していた。
 でもいつ間でも黙っている訳にもいかない、恐る恐る尋ねて見た。
「里中先生…… セイヴァー・エージェントが、兄さんを殺したって本当ですか?」
「えっ?」
「エイリアン・ハンター達が言ってたんです。兄さんが死んだ宇宙コロニー爆破はセイヴァー・エージェントが引き起こした事だって…… 本当なんですか? 答えてください!」
 私は膝の上の両手に力を入れて叫んだ。
 どんな真実でも私は知りたかった。
 ただ返答次第じゃ許さない、そう思った。
 一間置くと里中先生は言って来た。
「……本当よ」
 やっぱり……
 私は眉間に皺を寄せた。
 後悔はしない、ただ『悔しい』や『憎い』じゃない、信じていた物が全て崩れ落ち『空しい』と言う感情が私の心を支配した。
 するとそんな私に里中先生は言って来た。
「タクミ君、やっぱり言うつもりはなかったのね…… ずっと黙ってるなんて彼らしいわ」
「兄さんが? 黙ってた?」
「ええ、お兄さんには全てを話してたの、本当は貴女にも話そうと思ったんだけど、お兄さんに口止めされてたのよ」
 里中先生は説明した。
 ゼルベリオスで改造される時に三葉さんに言われたらしい、その上で兄貴はセイヴァー・エージェントとして蘇ったのだと言う。
 里中先生は嘘は言わない、それは私だって分かる、ただエイリアン・ハンター達の言う事が間違っているとは思えない、どちらを選んで良いのか分からなかった。
「妹さん、何を吹きこまれたのかは知らないけど、貴女は今まで何を見て来たの?」
「えっ?」
「こんな事になるならタクミ君に怒鳴られても話しておけば良かったわ、反省してる…… ただこれだけは言わせて、ファーラン達が貴女に何かした?」
 里中先生は尋ねた。
 確かに不破さん達は遊んだり話したりはするけど別に迷惑だと思った事は一度も無かった。
 まして私達は何度も助けられた。皆は真剣だった。
「今まで知らなかった真実を知ってショックを受けると周囲の事は何も信じられなくなってしまうもの…… でも今まで見て来た物は全て嘘偽りは無いわ」
「……私、何て事を」
 私は後少しで取り返しのつかない過ちを犯す所だった。
 皆が私を騙す訳が無かったんだ。それなのに私は勝手に人を疑ってしまった。私は自分で自分が許せなかった。
 いや、むしろ許せないのはエイリアン・ハンターだ。どんな理由でも人の心を利用して踏みにじったあいつらだけは許せなかった。
 それに……
「里中先生、私より兄さんと塩田さんを助けてください! 大変なんです!」
「それは大丈夫よ、心強い助っ人が向かったから」
「強力な? ……まさか」
「ええ、1番今回の任務に相応しい子よ」
 里中先生は微笑しながら頷いた。