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SAⅤIOR・AGENTⅡ

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 あの宇宙コロニーは伊藤さ…… いや、葛西さんのお父さんが地球人の幸せと未来の発展を願って設計していた物だった。
 しかしセイヴァー・エージェント達は地球人の宇宙進出を快く思わずに破壊したと言うのだった。
 そのお父さんは爆死、お母さんはマスコミや世間からのバッシングで自殺してしまい、残された葛西さんも学校の友達や守るべき立場である教師からも迫害され、親戚に預けられても出来物の様な扱いを受けていたと言う。
「そんな! そんなまさか!」
「嘘じゃ無い! 宇宙人は私の家族を奪った害虫供よ! 私は宇宙人何て信じない、絶対に信じないっ!」
 葛西さんは叫んだ。
 葛西さんは顔を歪ませながら俯くと両肩を震わせて瞳から涙があふれ出した。その涙は頬を伝って顎先に集まると滴になって落ちると床を濡らした。
 明らかに嘘を言ってるとは思えない…… 私は言葉を失って鉄格子から手を離した。
 するとそんな私に備渡は言って来た。 
「自分達以外の者が力を持ち、いつしか追い抜かれる事を恐れたのだろう…… いかにも薄汚い宇宙人がやる事だ。これで分かっただろう? 君達は騙されてるんだ。今からでも遅く無い、我々の仲間になるんだ」
「………」
 私に迷いが生じた。
 頭じゃ分かってる、彼等の言ってる事は間違ってる、でも否定する事が出来なかった。
 私は叔母さん以外世話になってる人がいない、その叔母さんも一度家を開けると数ヶ月は戻って来ない、そして元々人間づき合いが少なかったから誰からも迫害された事がなかった。
 葛西さんはもう1人の私だった。もし私が葛西さんと同じ立場だったら間違い無く異星人達と敵対してただろう、そう思うと首を横に振る事が出来なかった。
 ただ縦に振る訳にはいかなかった。もし彼らに加担すれば取り返しのつかない事になるのは目に見えている、いくら正論を言って武力を振りかざしたって正しい結果が生まれるなんて限らないからだ。
 確信はない、言わなければならなかった。
「わ、私は……」
 上手く言葉が出て来なかった。
 震える唇で必死でここから先を言おうとしている時だった。
 そこへ別のエイリアン・ハンターの男がやって来た。
 羽織っているジャケットは同じ、だけど大神さんと同じくらいの身長の頭にバンダナを巻いた大学生くらいの男だった。
「リーダー、車がもうすぐ到着するそうです。計画より少々遅れてしますが……」
「構わん、我々の理想達成の為に多少の遅れはやむおえんさ…… それより『彼女』はどうなっている?」
「ええ、薬は投与してあります、目が覚めた時は我々の同士となってる事でしょう」
「彼女?」
 私は顔を顰めた。
 すると備渡は言って来た。
「正直君1人でお兄さんが説得できるとは限らない、保険としてもう1人手伝って貰う事にした。君と一緒にいた娘をね」
「私と? ……まさか!」
「そう、塩田・恵君だ。確か彼女も宇宙人どもの協力者だったな」
「塩田さんに何をしたのよ?」
 私は食ってかかった。
 私が巻き込まれるのは良い、でも彼女が…… 塩田さんが巻き込まれるのは我慢できなかった。
 あの人は特別だ。絶対にエイリアン・ハンターに協力させる訳にはいかない。
 しかも気になる言葉が出た…… 薬?
「彼女は同士達が使っている薬と同じ物を投与した。これがその薬だ」
 すると備渡は白衣から金粉を散りばめた水色の液体が入った小さなフラスコを取り出した。
 何でもこれを生物に投与すれば超能力を使えるようになると言う。
「ただ能力が使えるようになるかはその者次第だ。薬を投与された者は一時的にだが仮死状態になる…… 能力が開花すれば目が覚めるが、もし失敗すれば二度と目が覚める事が無いデメリットも存在する」
「……なんて事を、塩田さんに何て物を使ったのよ!」
「何を怒っている? 目が覚めたと言う事は能力が使えるようになったと言う事だ。何か悪い事だとでも言うのか?」
「ふざけんな!」
 私は叫んだ。
 頭に血が昇った私は備渡を睨みつけた。
「アンタ達は命を何だと思ってんのよ! 目が覚め無かったら人殺しも同然じゃ無い!」
「目が覚め無かったら彼女はそれまでの命だったと言う事だ。全ては地球の未来の為、多少の犠牲は止むおえんだろう?」
「多少の…… 犠牲っ?」
 私は信じられなかった。
 同じ地球人なのにどうして顔色1つ変えられずに酷い事ができるんだろう?
 どうして命をそんなに軽く見られるんだろう? 
 私は次第に頭の中が真っ白になって行った。
 そんな私を見ながら備渡は鼻でため息を零しながら言って来た。
「まぁ、君もいずれ分かるだろう、しばらくそこで頭を冷やすんだな…… お前達は先に行ってろ、私は少し準備をしてくる」
「「ハッ!」」
 私の耳には最早誰の言葉も届かなかった。
 ただ誰もいなくなったのだけは分かるとその場に膝を着いて項垂れた。
「……何やってるの、私」