SAⅤIOR・AGENTⅡ
エピソード11,2つの正義
「ううっ、頭が重い……」
体が重い、頭がボーッとする…… 一体何があったんだろう?
私はちょっと席を外して化粧室に行った。
何をする為かは答えられないけど、帰る最中に化粧室から出た所で意識が無くなった。
「って、ここどこ? 牢屋?」
私は周囲を見回した。
まるで映画やテレビの中でしか見た事が無い部屋だった。
ただ塩田さんと伊藤さんと遊んでただけなのに、一体何でこんな事になったんだろう?
しかもそれだけじゃ無かった。何と左手のブレスも無くなっていた。
自分で取る訳が無い、他人から見ればあれは見た限りじゃただのダサイ玩具だ。相手にすらしないだろう、でも外されるとしたら存在の意味を知っている人物と言う事になる。
大体想像が付く、今の私の異星人関係の周囲は混乱している、外すと言ったらセイヴァー・エージェント以外じゃ『あの人達』しかいなかった。
「じゃあここは……」
「気が付いたみたいだね」
「えっ?」
私の耳に聞き慣れない男の声が聞こえて振り向いた。
すると鉄格子の向う側に2人の人影が浮かんでいた。
1人は小皺の目立った前髪が七三分けでカーキー色のスーツと赤いネクタイの上から白衣を羽織った中年の男、だけどもう1人を見た瞬間、私は息を飲んだ。
信じられなかった。彼女はエイリアン・ハンターのジャケットを羽織っていたからだ。
目を丸くしながら私は尋ねた。
「伊藤さん、何で!?」
伊藤さんは私から目を反らした。
すると代わりに男の方が言って来た。
「ようこそ、我等エイリアン・ハンターの本部へ…… 私がリーダーの備渡幸也だ」
「エイリアン・ハンターって…… まさか」
私は恐る恐る伊藤さんを見る。
そして理解した。全て仕組まれた事だった。
あのひったくりを利用して私達を油断させ、隙を見せた所を拉致する…… 単純だけど合理的な手だ。
でも問題はどうして私が連れて来られたかだ。
すると備渡は私の心を察したかのように言って来た。
「君には我々の仲間になって貰うよ、君の兄さんと一緒にね」
「どう言う事? どうして私達が?」
「これは君達の為だ。いつまでも汚らわしい宇宙人供といるべきではない、むしろ地球の為に戦うのが1番ではないのかい?」
「何言ってるのよ、兄さんは地球の為に戦ってるんじゃない、それに異星人は汚らわしく無い、なのにどうしてエイリアン・ハンターにならなきゃいけないのよ!?」
「決まっている、彼は宇宙人に協力していた極悪人だ。だが同じ地球人であるのも事実、だから罪を償うのが当然の事だ」
「罪を償うって…… 勝手に決めないで!」
「勝手では無い、宇宙人供は平和を立て前に地球を自分達の物に使用としているだけに過ぎない、君も宇宙人供がどれだけ地球で悪事を働いて来たかを見て来たはずだ」
「それは一部の異星人だけよ、それを変な言いがかりを付けてる貴方達の方がよっぽど綺麗事だわ!」
「真実を言っているだけだ。我々は宇宙人どもから地球を取り戻しているだけだ。地球は地球人だけの物なのだからな!」
「ふざけないで、地球は誰の物でも無い、地球で生まれたからって偉いなんて思わないで!」
「綺麗事は、貴女の方よ!」
すると伊藤さんが割って入って来た。
見て見ると顔を顰めながら小さな肩が震わせていた。
伊藤さんは鋭くした瞳に涙を浮かべながら言って来た。
「私の家族はね…… そのセイヴァー・エージェントに殺されたのよ!」
「えっ?」
私は言葉を失った。
その刹那、この場所の時間が止まったかのように思えた。
一間置くと今度は備渡が口を開いた。
「彼女の話しは本当だ。君のお兄さんと同じ、セイヴァー・エージェントの被害者だ」
「兄さんが? どう言う事よ?」
「言った通りの意味だ。3年前の宇宙コロニー爆破事件、あれの被害者は君達だけじゃないと言う事だ」
備渡は伊藤さんを見ると続けた。
「彼女は母方の性を名乗っているが、本名は葛西・唯、父は宇宙コロニーの設計者だった者だ」
「えっ?」
私は顔を顰めた。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki