SAⅤIOR・AGENTⅡ
「遅いなぁ……」
私は時計を見る。
兄貴がいなくなってから1時間は経とうとしていた。
やっぱり何かの事件なんだろうか? もしそうなら意地でも止めておけば良かった。心配は無いと思うけど2年前の事が頭をよぎったからだ。
『ねぇねぇ、お兄ちゃんまだ戻らないの?』
「えっ? ああ、兄さんはね……どこ行ってるのかしらね?」
私は苦笑する。
とりあえずルーシーちゃんは兄貴は『トイレに行った』とか『地球に連絡しに行った』とか誤魔化して置いたけど、そろそろ限界になって来た。
「お〜い」
するとバカ兄貴の間の抜けた声が聞こえて来た。
「ちょっと兄さんっ! 何やってたのよ?」
「悪い悪い、ちょっとそこでトラブっちゃってさ……それよりルーシーちゃん、これ」
兄貴はルーシーちゃんに熊のぬいぐるみを手渡した。
『わぁ……』
ルーシーちゃんは喜んだ。
私はため息を零しながら兄貴に訪ねた。
(ちょっと、何かあったの?)
(ん、ああ、ちょっとな……でももう良いじゃねぇか)
すると兄貴はルーシーちゃんに言った。
「ルーシーちゃん、そろそろお昼に行こう、お兄ちゃんおごるから」
『え、良いの? わ〜いっ!』
「ああ、何でも頼んで良いよ……舞も行こうぜ」
「あ、うん……」
私は頷いた。
でもこの時の私は正直呆れていた。
いつも勝手に突っ走って、無茶ばかりして、私を1人にして周りの事が見えなくなる、それがどれだけ人に迷惑をかけるか考えていない、仕事とは言え休日の大半が潰れた。
だけどそれと同時に安心しているのも事実だ。
兄貴は帰って来てくれる、いつも一緒にいるって訳じゃないし、前みたいに一緒に暮らす事は出来なくなったけど、1人じゃなくなったからだ。
「本当に……仕方ないなぁ」
過ぎ去った時間は元に戻らない、それを悔やむくらいならいっそ残りの時間を楽しむ事にした。
私は兄貴達の後を追いかけながらそう思った。
作品名:SAⅤIOR・AGENTⅡ 作家名:kazuyuki