想いの在り処
それでも、この思いが無い私なんてきっと私じゃない。こうしてあの子の事をここで待ち続ける私は、あの日からずっと繋がっている、あの日々を失敗しても、それでもずっとここまで歩いてきた大切な私と大切な想い。
大切なあの子。
「先輩っ!」
その懐かしい声に呼びかけられ、私は声のする方に視線を下ろしていく。
その子は、もう私の目の前まで来ていた。
「どうして……」
そんな、無為な言葉が口をついて出る。
「先輩が、マフラーを置いて行ってくれたから。あの日、大切な思い出と約束を残して行ってくれたから」
その子は、私があげたマフラーを、私があげた手袋で指し示しながらそう答える。
もう、彼女の懐かしい顔は涙で滲んでまともに見えない。
私は立ち上がり、彼女と目線を合わせる。
「先輩って、本当は泣き虫だったんですね」
そう言って、彼女はかつて私がそうしたように私の涙を拭ってくれる。
私はもう、堪らなくなって、ただただ泣いた。あの日、彼女の前で流すことが出来なかった分まで、流すかのように泣いた。
「メリークリスマス、先輩」
いつの日か、想い出の苦味を、甘酸っぱさを、叶わなかった思い、やり残した思いを、胸いっぱいに思い出す時が来る。
いつの日か、きっとたどり着ける、想いの在り処。
終
BGM
SCREEN OF LIFE -Single Mix-/TM NETWORK
Still Love Her (失われた風景)/TM NETWORK
TWINKLE NIGHT (あるひとりのロマンチストの生涯)/TM NETWORK
FOOL ON THE PLANET/TM NETWORK