ihatov88の小咄集
2サバンナの戦士 4/27
オリンピック強化委員であるデビッドは、将来のホープを探すべくサバンナの部族の村を訪ねた。
彼らは戦士だ。槍一本で獲物を仕留める。無駄なものが一つもない肉付き、艶やかな肌、そして獣をも畏怖させるような鋭い眼差し。命を賭けて戦う姿は美しい、まさに戦士だ。
「これだけ槍を使えたらトレーニング次第でじゅうぶんモノになるぞ」
と思ったデビッドは上機嫌だ。
彼らの素晴らしい身体能力をもってオリンピックに挑めば金メダルなどたやすいものだ。デビッドは彼らの姿勢にすっかり魅了され、彼らをスカウトすべく、村の長老にとりわけ身体能力の高い戦士を一人、オリンピック強化選手として育成させてくれないかと願い出ることにした。
すると長老は、ちょっと興味のあるような様子でデビッドに耳を傾ける。デビッドは
「彼らの身体能力は素晴らしい。戦士の一人を槍投げの選手として育成したいのだがどうだろうか」
と質問すると、長老はこう答えた――。
「槍は遠くに投げるんとちゃう。獲物にどんだけ近づくかやねん」
デビッドは次の村を訪ねることにした――。
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔