ihatov88の小咄集
1聖徳太子 4/27
聖徳太子は、10人が一度に話すことを聞き分けることができるほどの聡明な頭と耳をお持ちの方であるのは有名な話。1400年経った今でも彼の伝説は知られています。さすが、お札の顔になったランキング堂々の第一位の人だけある。
いつも忙しい聖徳太子が通りを歩いていると、付近の民が願いを訴えるために彼の前に集まったのです。
「太子さま、お願いがあります」
こぞって願いを申し立てるので、一堂がまとまらない。そこで太子は杓から手を離して、
「まあまあ、私には時間がないので一度に言っていただけませんか」
と10人の民を諭すと、民は一斉に太子に向かって願いを訴えたのです。
「ほうほう、そうですか」
頷いてはにこやかな表情をする聖徳太子。10人の言うことをしっかり聞き分けている姿を見て民は一様に驚きました。
「それでは、皆の願いに答えを与えましょう……」
太子が口を開けると、民は一斉にこう答えたのです。
「太子さま、答えは一人づつお願いします――」
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔