ihatov88の小咄集
4走れ!ハシロー 4/27
マラソンランナーの橋郎は、物心ついた頃から走るのが大好きで、一人で立てた次の日にはもう走り出し、それでいて両親が手に負えないほど走り続けるスタミナがあったそうだ。
家はそれほど裕福な方ではなかったが、彼の父はそんな息子を見て彼に長距離走の特訓をさせたところこれが当たり、メキメキ頭角を現した。
「三度のメシより走るのが好き」
そんなハシローは起きてる時はいつも走っている、とにかく走る。学校の勉強は苦手だったが、それを補うには十分な身体能力で中学、高校と数々の記録を塗り替え、今ではフルマラソンを二時間ちょっとで走るようになり、勉強嫌い故の天然キャラもお茶の間に受け入れられて人気者になり、日本のみならず世界が注目する選手になった。
努力と記録が実を結び、とうとう手にしたオリンピックの出場権。最高の舞台に初めて立つことが決まり、本人、スタッフ家族共々大喜びした。
そしてオリンピック開会式参加に向けて日本を経つハシロー、初めて行く外国、初めて乗る飛行機に半分パニクっていた。
飛行機に向かう空港の廊下を走ろうとして係員に止められるハシロー、
「そこは歩いて下さいね」
と言われる始末。そんな彼に並走する記者が彼にインタヴューをした。
「ハシローさん、今大会の目標は?」
「そうッスね、まずは予選通過ですかね」
ハシローは手を振って爽やかに搭乗口の向こうに消えて行った――。
マラソンに予選あったら決勝グダグダやがな――。
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔