ihatov88の小咄集
7先祖の遺産 4/29
時代は食糧難。地球の人口は21世紀に爆発的に増える一方で土地は痩せ細り、その日の食糧にも苦労するようなご時世になってしまった。先代が残してくれた種も食糧に充ててしまい増やすべきものも底を尽きてしまった――。
「もう、後がない」男は力なく呟いた。
「どうしましょう」女も返す言葉がない。
このままでは自分達はおろか、子孫も食べて行けなくなり世界は数少ない食糧をめぐって戦争がおきるかもしれない――。
「これではご先祖さまにも、子孫にも申し訳が立たぬ」男は大地に膝まついた。
「あ、今ご先祖さまと言いましたね?」
「おお、それだ!その手があったじゃないか」
二人は先代が残してくれた宝の事を思い出した。
「大地が萎え、食べるのに困難な時が来れば迷わずこれを使いなさい」
代々そう伝えられ隠されていた宝、今こそその封を開ける時が来た。これで一族だけでなく地球も救われるかもしれない。
「ありがとう、ご先祖さま」
男は記憶を頼りに埋蔵していたところの土を掘り返し、小さな箱を拾い上げた。
土から出てきた希望の光、大きく息を呑みゆっくりと箱を開くとまばゆいばかりの光を放った。
「――これは?」女は男に問いかける。
「『ホクホク百貨店商品券プレミアム』っておい!」
こんなんもろても食糧がないねん……
地球は救われるのか?
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔